「じゃあ俺はここで。ここからまっすぐいけば湯葉配送屋につくからさ。」

「ありがとう…」

「あとこれ」

「?」

投げ渡された白い封筒。中身は…

「って何この大金!!」

ざっと100万は入っているはずだ。

「帰るまでの費用」

「どう考えてもお釣くるわよ!!」

「ああ…釣りは身体払いでいーから」

「……………」

「…………ってのは冗談で………アンナの養育費だよ」

「アンナはジョンとサラとの間の子よ!!」

「いい加減現実みろよ。千夏。」

「っ……!!」

「あとこの口座…毎月100万ずつ振り込まれていくから。」

「アンナは…私の所に一時的にいるだけよ…?」

「ずっと日本に、お前の側にいさせろ。」

「どうして…?貴方達が日本にいるのにずっといさせるわけないじゃない!!」

「アンナは狙わない。いや…狙えないと言うべきかな…?とりあえずアンナは千夏が守れよ?いいな。」

「い…言われなくてもそのつもりよ!!」

「その言葉忘れんなよ?じゃーな。」


そう言うとクラウンはバイクに乗って去った。


「……まずは結也に会いに行かなきゃね…」


◇58◇


ピンポーン…

「はい」

「わたくし斎藤千夏と申します。こちらで匪口を預かっていると連絡があって伺ったのですが…」

「ああ…ちょっと待つダニ」

ダニ…?

配送屋の男は部屋に入り、誰かをよんでいる。

「……千夏……」

「結也…!!ってあははははははははは!」

ずっとずっと結也に何て声をかけるべきか迷っていたがそれが一気に吹き飛んだ。

「千夏……?」

「ふふっ…そのTシャツ……」

「Tシャツ…?あ!!」



湯葉命



たった3文字のおかげで救われた。

配送屋の人にお礼を言って千夏と結也はタクシーを探すついでに少し歩く。

「あのさ…千夏…」

「んー?」

「俺……HALに操られてた時の記憶あるんだ…」

「………………」

「だから…その…千夏に……したこととか………」

「結也。」

少し先を歩いていた千夏は立ち止まり、結也と向き合った。

「私は貴方の両親を殺してしまい、貴方の人生もズタズタに引き裂いてしまった。」

「違うっ!それは俺の責任…!!」

「私は自分の責任だと思っているの。だからあなたにはとても負い目があった。」

「………そんなことないのに………」

「だから私は貴方を守ると誓った。貴方をずっと大切な大切な弟としてみていたの。」

「お………弟………」

「でも…勝手な考えだけど……今回あなたに襲われたことでその負い目はチャラにするわ。」

「………!!!じゃあ…!!」

千夏は妖艶に笑いながら言った。

「私を惚れさせてみなさい?私が愛した男は一人だけ。貴方はその男を越えられるかしら?」

「…………俺がいなきゃ生きられないようにしてやるよ。」

「ふふっ…楽しみにしておくわ。湯葉命さん?」

「ちょっ…それは言うなよ〜!」

「ふふふっ…だってあれ…最高…」

「今は違う服着てるし!!」

「でも湯葉命Tシャツもらってきたから…ハイ」

「いらねーって……」

「今度二人で遊ぶ時はそれ着てね!」

「う……」

二人で遊びたいが湯葉命……

「あ、あともう一つ頼みがあるの。」

「?」

「今回のHALの件の責任問題、全て私に負わせて頂戴?」

「は?!?な…何言って…!」

「正確には負わざるをえないように電人に仕向けられたのだけど…」

「そ…それでも…な…なんで千夏一人が!!」

「だって貴方実績はあるけど情報犯罪課以外行くところないでしょ?」

「う…」

「私は他の部署でもやっていけるしね。」

「それはそうだけどさ…」

「これは不可抗力よ。だから頼みというより命令と訂正した方がいいかしら?」

「…………わかった。」

「そんなに思い詰めた顔しないでよ!」

「だってさ…もし刑事部より下の部署行くなら…どこになるんだよ。」

「うーん…多分…捜査一課?」

「!!?!?!」

「こ…今度は真っ青になってるわよ結也…?」

「千夏…俺毎日捜査一課訪ねるから!毎日一緒にお昼食べよう!」

「嬉しいけど…捜査一課は忙しいらしいから毎日は無理かも。」

「じゃあできる限り一緒に食べような!!!」

「いいわ。約束、ね?」

「ああ。」

「……あっ!タクシー発見!!」

そう言って千夏は結也から離れ、休憩中のためか、停車しているタクシーに近付いてゆく。

「一人…愛した男がいるんだ……」

考えたくないけどそれは事実。

「まさか笹塚さん……?」

でも千夏は愛したと言った。
過去形なのだ。


「やっと俺もスタート地点にきた訳だ。」


ここからが勝負のはじまり。
絶対負けねぇ…
そう決意して結也は千夏の後を追った。




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