「…………は?」
意味がわからない。何を言っているのだろうか。この目の前にいる厚着野郎は。
◇14◇
「深い事情はしらねーけど桂木にうちの会社が目をつけた。」
「……どういう内容で……?」
「表向きは広告塔。でもそれは明らかにフェイクだ。」
「……何をする気?」
「それは俺も知らねぇ。でもヤバイ方向なのは明らかだな。」
ユキがいうヤバイ方向とは本当にヤバイのは知っている。
「…その広告塔の件……彼女は受けたの?」
「ああ。正確にいうと、助手が受けた。多分桂木ってやつは無能だ。今までのあいつらの活躍は全部助手のおかげだろうよ。」
「……………」
そうだとしても…弥子ちゃん……どうしてそんな裏の世界に入ろうとしているの……?
「言っとくけど…チクるなよ?あいつらに。」
「……無理…。お願い!見逃してあげて!」
「俺自身も会社のためにこの取引は止めといたほうがいいと思ってるんだけどね…」
「だったら尚更!!」
「でも、決断を下すのは俺じゃない。」
静かに、そうユキは言う。怖いぐらい……寒々しい目で…
「俺ができるのは警告だけ。つっても桂木にはしねーけど。」
「そんな………」
「後千夏、お前も気をつけろよ?」
「?」
「うちの会社が今お前の情報を探している。誰か客が頼んだんだ。」
「ああ…だから最近尾行されてたのね…でもそれは大丈夫よ。」
「は?」
「いくら全国規模の会社でも私の情報はわからないわ。」
世界を飛び出なきゃ、国内規模だけなら本当の私の情報は絶対にわからない。まあ最近のプライベートはばれてるだろーけど…
「……そう……ま、注意しとけよ。誰かお前のことを調べろって依頼がきたんだからな。狙われてるってことだ。」
「そうね……わざわざありがと……」
「どーいたしまして。危なくなったら俺を呼べよ?その…早乙女っていうお前の恋人死んだんだろ?」
「流石調査会社…本当どこで仕入れてくるのよ…でもあの人は恋人ではないわ…」
「でも調査書にはそう書いてたぜ?」
「國春は……恋人じゃないわ…けど…私が…愛してた人…ね…」
「…愛してた…ね……ま、どっちにしろはやく忘れろよ?それかもし無理なら俺が早乙女の代わりになってやろうか?」
「ふふっ。私はそこまで弱くないわ。もう大丈夫。忘れはしないけど國春との思い出を引きずったりはしない。」
「ふーん…ならいいけど。あ、そうそう。今度夜更かしするなら俺を呼べよ。何回でも相手してやるからさ。」
そうニヤリと笑って言うユキ。
夜更かし……?何回……
!?!!!?
「ちょっ…嘘っ!!そんなことも調査書に書いてるの!?」
「当たり前。依頼者はできる限り詳しくって言ったからな。」
「そんな情報いらないでしょ!?ていうかなんでユキがそれ見てるのよ!!」
「兄貴が副社長だからな。あ、ちなみに調査書は兄貴と俺しかみてないから安心しろよ。」
「どこが安心!?」
「くくっ…まあいーじゃん。つかくれぐれも言うけど、探偵にはチクるなよ?」
「………ええ。」
ごめんね、ユキ。私は弥子ちゃんを見捨てるなんてできない。
翌日、私は弥子ちゃんに警視庁に来てもらうよう連絡をした。
待ち合わせは夕方5時に警視庁の入口で。
5時ちょうどに弥子ちゃんは来た。
「あ!千夏さーん!!」
「弥子ちゃん。久しぶり。いきなり呼び出してごめんね。」
「いえ!それより何ですか?」
「ん…ここじゃ話しにくいから喫茶店いこうか。」
「?…はい…」
「弥子ちゃん、貴女どうしてあんな怪しい会社と手を組んだの?」
喫茶店に入ってメニューを頼んだ後、単刀直入にきく。
「え……と……それは………」
「探偵をするのはいいわ。多少危なくても自分でセーブをかけることができる。でも今回あなたが関わった所は絶対ダメ!!セーブをかけたくてもかけられない所なの!あの会社は。」
「……いやまぁ普段からセーブかけられないんですけどね……」
「え?何か言った?」
「いえ!何も!!それより……そんなにやばい所なんですか…?」
「ええ…あそこは訴えられてもおかしくない所よ。まあコネだけがバカみたいにあるから訴えられないんだけどね。」
「………でも……もうCMしちゃったし……」
「……は?CM!?!」
「え……CM見たから知ったんじゃないんですか?」
「あ…ううん…別ルートでちょっとね……」
つか……CMって………
「あ〜い〜つ〜ら〜……信じられない……」
「だから…もう逃げられない……って千夏さん!?!」
余程黒いオーラがでていたのだろう。
弥子ちゃんがかなり驚いている。
「あ!ごめんごめん!……とりあえず…弥子ちゃん、これ私の携帯番号だから何かあったらかけなさい。絶対何か仕掛けてくると思うから…それと、できるだけ早くにこの件は断るのよ。いいわね?」
「あ…はい…」
絶対に守りぬいてやるんだから……覚悟しろよあのテカリ……