春の予兆なのか、強い風が吹いている。「ハーマイオニーは、」運命の人というものを知っているかい?と風に舞う髪の毛を抑えながら彼女は言った。答えとしては、私は今まで一切そういう類のものを信じてこなかった。運命、というのは要するに、誰かが何かしら上手くいかなかったことに対しての、言い訳だと思う。私は時間を、努力を積み重ねて得たものの方が確実なものだと思っている。むしろ、運命とか、そういったもので誤魔化されるのはひどく煩わしい。そういう私の考えを理解している癖に彼女はその煩わしい言の葉を使う。私が何も答えないのを見てくすりと笑う。「…ばからしいものだということは知ってるわ」笑いに対する仕返しに、少し語気を強めて言う。「ばからしい、か」確かに、ちょっと信用する気にならないよねぇ。と彼女はおかしそうに笑った。ちょっとどころじゃないわよ、私は内に毒を吐いた。語尾を伸ばすへらへらとした喋り方をする時は、あまり深く考えていないか、何かを誤魔化そうとする時。果たして今回はどちらだろう。「ハーマイオニーはわたしと出会えてよかったと思う?」彼女の瞳が真摯にこちらを見つめる。さっきまでとは打って変わって。「も…もちろん、よ」いきなりストレートに言われたら、恥ずかしいに決まってる。うん、ならよかった。と真摯な瞳はどこへやら。ふにゃりと崩れた笑みを見せる。私は彼女のこの表情が大好きで、見る度に胸が引き締められてしまう。「わたし、ハーマイオニーは絶対わたしの運命の人だと思うんだ」だから、私はそういうの信じてないって。そんなこと、言えるわけがなかった。だって、嬉しいんだもの。ね、言えるわけないでしょう?私はなんだかんだ彼女に甘いのだ。






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