マカロゥ様へ。 | ナノ





・最初バン独白。



なぁ、アミ。相談があるんだ。

この前も話しただろ?ジンのことだよ。

そうそれ!!俺がジンを、その…好きで。

ほんと、いつもいつも相談乗ってくれてありがとな!!

それでな、最近ジンがやたら俺のこと避けるし、行動が挙動不審なんだ。

なぁ、俺ジンに嫌われちゃったのかな?

もっと詳しく?

そうだなぁ…じゃあこの前ほら。ブルーキャッツにシーカーメンバーで集まった時があっただろ?

そうそう。みんなが来たとき俺が酷いことになってた時。

あの後ホントに大変で…

あ、じゃなくて!!その時、みんななぜか1時間も遅刻してきて、檜山さんもニヤニヤしながら買い出し行っちゃてさ。

ジンは"はめられた"って言ってたけど…何だったんだろ。

だからさ。1時間俺とジンで2人っきりだったんだ。

その時ね…。


―――


「なぁジン…暇だしバトルやろーよ。」

「え…遠慮しとくよ。」

バンは暇だった。

今日ここ、ブルーキャッツにシーカーメンバーで集まるという連絡を受けてここに来たが、みんな示し合わせたように遅刻をし、おまけに檜山は買い出しに行ってしまった。

勘のいいジンは別だが、バンはみんなが本当に示し合わせて遅刻し、檜山が自分たちを2人きりにするため外出したことに気づいていない。

みんながここに来るまで、やることのないバンは、もう1人、ここにいるジンにバトルを持ちかけている。

しかし彼はそんなバンの誘いには応じず、それどころか、カウンター席に座るバンから距離がある薄暗いボックス席のソファに腰かけていた。

"こっち来れば"と言っても、頑なに動こうとしない。


そんな彼は、バトルさながらにCCMをいじり、その度に"どういうつもりだ!!"と声を上げている。

誰かと会話をしているようだが、誰だかはわからない。

彼のことが好きなバンからすれば、自分そっちのけで誰かと連絡を取るジンが少々恨めしかったりするのだが、嫉妬という単語が頭に入っていないバンにとっては、この疼くようなモヤモヤが何なのかさえ分からなかった。


"ふぅ…"と息をつき、次の連絡先を検索しているジンに、バンは近寄った。



「ジーン!!」

「うわぁ!!」

するとよほどCCMに集中していたのか、ジンは彼らしくない反応をして、あたふたと取り乱した。

その時バンはジンのある異変に気付く。

「ジン、顔赤いよ。熱あるの?」

そう言って、彼の額に自分の額をくっつけようとしたバンだが"いい、いい。いいから!!大丈夫。僕に構わないでくれ!!"とものすごい剣幕で制され、しぶしぶ引き下がる。

それでも心配なものは心配で、バンは檜山に連絡をした。

「あ、もしもし檜山さん?」

そういった瞬間にジンが眉をひそめたのだが、彼に背を向けて話すバンはそれを知る由もなかった。

『おお、バンか。どうした?』

「実はね…ジンが熱っぽくて変なんだ。」

『ほう…。大人しそうなお坊ちゃんだと思ってたのに、意外と手が早いんだな。』

"何された。キスか?もっと先か?"とくつくつ笑う檜山に、バンは顔を赤くして語調を強めた。

「そうじゃなくて!!熱だよ熱!!風邪の!!

だからね、檜山さん。お店の飲み物何か出してもいい?」

すると檜山はん…と考えた。

『そうだな。栄養があるから…牛乳でも出したらどうだ?』

「わかったよ。…でもなるべく早く帰ってきてね…?」

そう言った瞬間CCMが宙に浮く。

「話はそれだけか?」

見るとジンがCCMを取り上げていた。

心なしか怒っているようにも見える。

「ジン…何で怒ってるの?」

恐る恐るバンはジンに理由を聞いてみた。

「べっ別に怒ってはない!!」

ジンはCCMを投げるように返し、元いたところへと逃げるように戻った。

やっぱり顔は赤かったうえに、悪化しているようだ。

バンはグラスについだ牛乳をジンへ持っていく。

「ジン。熱っぽいんだろ?
檜山さんが、牛乳がいいって。」

ジンはどこか微妙そうな顔で"熱…?ありがとう"と言って手を伸ばした。

グラスはバンからジンの手へ渡る



…はずだったのだが。

「っ///」

ジンがバンの指に触れた瞬間、ジンは手をグラスから離した。

重力に従い、グラスは落ちる、砕ける。

「うわぁ…」

場所が悪かったのか、バンは牛乳の飛沫をまともに食らった。

顔や手…いたるところに撥ねている。

するとジンは一瞬目を見開いたかと思うと、おもむろにバンをソファに乱暴に押し倒した。

「ジン…」

自分の上に覆いかぶさるジンは、目をぎらつかせ、どこか息は荒い。

やば…熱が上がってきてるのかも…と思ったとき、ふらふらとジンの顔が近づいてくる。

このままでは、唇が触れてしまうだろう。そう思ったバンは精一杯の抵抗をする。

「やっジン!!」

やはり熱の勢いでキスをするのは嫌だった。いや、それ以上に気恥ずかしかったのかもしれない。

バンの抵抗にジンははっと息をのみ、弾かれたようにバンから離れた。

「…す、すまない。」

そんなとき、店のベルが鳴り、檜山とシーカーのメンバーたちが1時間遅れてやってきたのだった。


―――


「なぁアミ、やっぱジンは俺のこと…」

"嫌いなんかじゃないわよ"とアミは言葉を遮る。

「わっ!!ちょっと話聞いてたのかよ!!ジンは俺が…」

「だから嫌いなわけないでしょ!!ジンはねぇ、あんたとぎゅっとかちゅっとかしたいのよ!!」

そうアミは悪態づいてバンの背中をピシャっと叩いた。

するとバンの動きはぴたっと止まる。

「アミ…ぎゅっ、ちゅっ…?」

"何それ、英単語?"と首を傾げるバンに、アミは半ば叫ぶように言い放つ。

「ああもう!!だから、抱きしめたりキスしたいの!!女の子にこんなこと言わせないで!!」

だいたい、一緒にいるだけでいいとか、そんな小学生並みの恋愛感情のバンがいけないのだ。

普通はジン位好きな人を意識してもおかしくないんじゃない!?…とアミは目の前の幼馴染を睨みつけた。

「ほら、さっさと好きって言って来なさい!!ジンなら開発室フロアにいるから!!」

ああ、アミがこうなったからには、言うまで機嫌は直らないな…とバンは意を決して地下のシーカー本部から出た。


―――


「お前かお坊ちゃん。この前は傑作だったぜ。」

ところ変わって開発室フロア。仙道はジンと対峙していた。

くすくす笑う仙道にジンは眉間に皺を寄せる。

「貴様何が言いたい。」

そんなジンの怒気を華麗にスルーして仙道は笑みを崩さず言い放った。

「檜山さんも意地が悪いよなぁ。喫茶店のお前らをシーカー全員でモニタリングしようなんて。」

"牛乳を何と見間違えたんだい?変態"と笑う仙道をジンは胸ぐらを掴み壁に叩きつけた。

「どうした?顔が怖いよお坊ちゃん。」

「ふざけるのも大概にしろ。」

そうジンが言うと、仙道は初めて口角を下げ、目をすっと細めた。



「大概にするのはお坊ちゃんだ。」

さすが不良といったところか。瞬間2人の体勢は入れ替わり、今度はジンが壁に叩きつけられる。

仙道は妖しい笑みを浮かべ、ジンの唇をそっとなぞった。

「お坊ちゃんはさぁ、あの時の続き…したいんだろ?」

"なぁ、あの柔らかそうな唇はどんなに甘いんだろう?"

"噛みついたらあいつはどんな顔をするんだろうねぇ?泣くかな?それもいいねぇ"

"服はぶかぶかだけど、中は意外と細身なんじゃない?"

"長袖長ズボンだから肌はきっと真っ白だ。でも気恥ずかしくて薄桃になるかもねぇ…"

それは悪魔の呪文のようで、ジンは必死に仙道と距離を置こうとする。

しかしそんなジンをあざ笑うように、仙道は続ける。

「なぁお坊ちゃん、世の中力が全てだ。ものにしたもん勝ちなんだよ。」

"いくつもの勝ちをその手でもぎ取ってきたお坊ちゃんならわかるよな?"と仙道が囁いたときに、エレベーターの方から"ジンー"と声が聞こえた。

今一番会いたくない人の声が。

仙道はふっと笑うと体を離し、"抱きしめて唇でも体でも奪ってやれ"と言って、去って行った。

魂が抜けたように、壁にもたれるジンに、バンは近づく。



「ジン…?」

ああやめてくれ…来ないでくれ…とジンは心の中で叫ぶ。

さっきの仙道のせいで、頭はやけに冷静な反面、心と体はすっかりその気になってしまっている。

今バンが来てしまったら、自分はバンを壊してしまうかもしれない。

しかしそんなことをジンがぐるぐる考えているとは知らず、バンはジンの目の前まで行く。




ぐらっ




バンは自分が眩暈を覚えたのだと思った。



ジンに腕を引かれ、抱きしめられているとわかるまでにかなりの時間を要したバンは、"え?えっ?"と言いながら、頭一つ分大きいジンを見上げる。

頭上のジンははぁ…と熱っぽい吐息をこぼしたかと思うと、ぎゅう…と自分を抱く力を強めた。



「バン君…」

蕩けるような声で名前を呼ばれ、バンはどきりと心臓が跳ねた。

いつもは凛としたクリムゾンの瞳も、今はシロップに浸かったように甘く揺れている。

ゆっくりと距離が縮まっていく中、アミの言葉を思い出す。



―ジンはねぇ、あんたとぎゅっとかちゅっとかしたいのよ!!―



そして、今の状況と比べてみる。

ぎゅっはされている。現在進行形で。

ちゅっもされそうだ。…現在進行形で。

好きな人に、抱きしめられて、キスされそうで…。現実を認識したら、意識せずにはいられない。

反射的に、バンはジンを押しのけた。

「ごごごごごめん!!!俺カズと郷田と仙道とアミと拓也さんと檜山さんと里奈さんとリュウとミカと郷田三人衆に用事があるから!!」

とりあえず、思いついた名前を全部言って、ジンの抱擁から抜け出す。

まともに目も合わせられないうえにやたらと顔が熱い。さっき以上に心臓もうるさい。バンが好きな人を初めて意識した瞬間だった。

返事も待たずに走り出す。ジンはその背中を呆然と見送るしかなかった。








このあとバンはジンを意識して避け始める。まるでジンのように。

一方ジンは、嫌われた…と仙道に泣きつく。まるでバンのように。

2人が想いを伝えあうのはそれから1ヶ月後だったとかそうでなかったとか。





赤面ラプソディー
(まだ中学生ですから。)


2011/08/10


解析たどってサイト様にお邪魔させていただいたら、ゲームクリア済みという事でしたので思いっきり仲間なジンバン(&仙道)で書かせていただきました。

きっとこの2人が一番中学生らしい恋してる!!と思ったら楽しくって…ぐだぐだ長くなってしまいました。一歩間違えれば長編になってる勢いです。すみません…。

仙道さんはゲームだとフルネ呼びだけど、"お坊ちゃん"って言ってほしいなという私の妄想です。檜山さんも然り。

マカロゥ様、修正・書き直し等いたしますのでおっしゃってください。
お持ち帰りはご本人様のみとさせていただきます。

最後にマカロゥ様、素敵なリクエストありがとうございました。


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