朝起きたら貧血だった。 今日の朝練は休む。霧野にそれだけ言って学校にいつもよりも遅い時間に行き、そこからはいつも通り…そう思ったら大間違いだった。 ガシャン。 なぜ、こんなことになっているんだろう。 時は放課後、サッカー棟。背にはロッカー、目の前には…松風天馬。 朝練を休んだ分練習しようかと思って来てみたら、後輩にロッカーの前に立たされた、というよりロッカーに叩きつけられた。 「天馬?」 様子をうかがうべく恐る恐る口を開けば、うつむいていた後輩はキッと自分をにらみつけてから、また下を向いてそのまま力なくずるずると座り込んだ。 「おい、天馬どうした。」 さすがにこれは様子がおかしいと後を追うように座り込めば、今度は突然抱きしめられた、それも骨が折れるんじゃないかと思うくらい乱暴に。痛い。 「て、天「うわああああああん」え!!」 ああもうほんとにどうしたんだろう、泣き出してしまった後輩になすすべもなく固まる。しかしみんなが来てしまえば余計に事態はこじれるだろう。その前になんとかしなければ。 ― 「―というわけなんです。すみませんでした。」 嗚咽もだいぶ収まってきた。理由を聞けば、朝来なくて心配したとか、雷門キャプテンは神童先輩だけだとか、キャプテンがどこかに行っちゃうと思ったとか、ひたすら馬鹿馬鹿言って罵ったりだとか、正夢になったと思ったとか、すごい慌てて今日の朝練は散々だったとか、でも姿が見られてほんとによかったとか…あることとないことと心情とをごちゃごちゃ言われて一時はどうなるかと思った。 まとめるとこうだ。松風は夢を見た。俺が入院して、松風に雷門の未来を託す夢を。当然そんな俺は最悪の結末を迎えたようだ。精神的に不安定な中俺が部活を休んで、パニックになってしまったんだろう。 「大丈夫だ。本当にただの貧血だから。」 うんうんと頷く後輩はそれでもなお腕を解かない。そんな彼の肩に頭を乗せ、表情を見られないことを確認してからほんの少し笑った。なんとかなるさ、それが口癖の後輩がこんなに思いつめてくれるなんて思ってもみなかった。もし現実になってしまってもいいかな、なんて考えてしまうくらいに嬉しかった、内緒だけど。 「キャプテン、キャプテン。もしキャプテンがどこかに行ったら俺絶対許さないですよ。」 すん、と鼻をすすりながらそう言われて、自分の中で出来上がったバッドエンドをかき消した。そうだ、やっぱり駄目だ。天馬の言葉を思い出す。 ひとりの夜は怖くない、けれど君のいない朝が怖い。 (お願い俺の当たり前を崩さないで) 2011/10/18 企画サイト様くちづけから堕落へ提出 神崎様、ありがとうございました。またどこかでお世話になるときはよろしくお願いします。 衝撃映像が鳥肌ものだったので天馬君にも慌ててもらいました。大丈夫、公式の軽いジョークだって信じてる。 天馬君の夢の内容知りたい方はゲームPVの02:11〜辺りから10秒くらいをどうぞ。 |