「雨…、降らないね」
ポツリと曇り空を見つめて呟く彼。
天気予報では午後から雨らしいけど、どうしてそこまで雨が降ってほしいのだろうと、疑問に思う。
てるてる坊主という雨がやむおまじないのものを逆さに吊るし、つんつんと指先でつついているフェイを見つめ僕は机に頬杖ついた。
ハァ、と可愛らしいフェイの重いため息が部屋に響く。
「僕と二人きりなのに、気にするのは雨の事なの?」
「…だってぇ…。僕、やってみたい事があるんだもん。それなのに最近ずっと晴天で、機会がないし」
「やってみたい事?…雨具まで用意してるみたいだけど、雨が降ったら何するつもり?」
「んー…、僕もサルも一度もやった事ない事…かな、」
んー、なんて可愛らしく首を傾げ、指を唇に当てながら考えてものを言うその姿と来たら、誘っているんじゃないかと疑うほどだ。
しかも返答は予想外のもので、僕にはイヤらしくもんもんと浮かぶ物があった。
ガタンッと椅子を大袈裟に倒して立ち上がってみれば、フェイは吃驚したように目を真ん丸くして僕を見つめていた。
フェイとの距離を縮め、肩をガシリと掴んで床へと押し倒す。
驚くと同時に、フェイの頬はピンク色に染まっていて、あたふたと僕の下で弱い抵抗していた。
「ちょ…っ、えっ!?」
「まだ一線は越えてないもんね、僕たち」
「へ…えっ…?………っ!ちち、違うよ!何言ってるんだよ、変態ッ!」
一線を越えてない、という言葉の理解が追い付いていなかったのか、多少時間を掛け理解した後再び驚いていた。
紅潮するフェイは変わらずで。頬に触れようと手を伸ばした時、僕の隙を見て僕の下から逃げ出したフェイ。
うっすらと瞳に涙を浮かべ、さっきよりも遠く離れるフェイを見つめ、僕は床に腰を下ろす体勢に変える。
部屋の隅に逃げたフェイを再び追い込めば、なんて脳内で計算していればフェイが僕に向かって声を張り上げた。
「馬鹿!サルの変態!だ、大体そんな事するのに天候なんて関係ないじゃないか…っ!」
「天気が悪い方が部屋が薄暗くなるから恥ずかしがり屋なフェイには都合が良いんじゃないかって思ったんだけどな」
「………何処までも都合の良い考え方してるんだから…もう」
フェイは、呆れるように本日ふたつめのため息をこぼした。
そんな彼は再び窓に目を向けて、そして、みっつめのため息。
僕は座ったその場から窓の外へと目を向け、曇ったその空を見上げた。
もうそろそろ午後。時計の針は正午を少し過ぎたところ。
そろそろ雨が降ってもおかしくないなって、僕までもが雨の事を気に掛けていたその頃、フェイが立ち上がり部屋を後にしようとしていた。
どこ行くの、と声を掛けようと口を開いた直後フェイからの言葉が先に放たれた。
「もう一個てるてる坊主作ってみる」
半分程むくれているフェイは、もうやけだと言いたげにそう口にした。
今のフェイなら雨が降るまでてるてる坊主を何個も作ってしまいそうだ。
むくれるフェイも相変わらず可愛いなぁ、なんて今フェイに言ったら機嫌が更に悪くなりそうだから口を閉ざす。
再び口を開いたのは、時計の針は正午を完全に過ぎ、後20分足らずで長針が1時を指す頃だった。
「どうしてそこまで雨が降ってほしいのか教えてよ」
「………やってみたいんだ、その…」
「ん?」
「天馬達の居る時代でやってる人見て、サルとやってみたいな…って。…相合い傘、」
ポツリ、と最後小さく呟いたその声を僕は聞き逃さなかった。
相合い傘というと、この時代では滅多に見かけないものだけど…。
確か、1つの狭い傘の空間に二人が入ってくっついて街を歩く…あれ、だよ、ね?
わざわざ僕と相合い傘をしたくて、雨が降ってほしいって言ってたんだ。
俯くフェイの顔を覗けば、また赤く頬を染めていて見ないで、と僕に言いながらふいっと顔を背けるフェイ。
そんな姿をまた愛しいと胸の奥をぎゅっと捕まれた気がした。
「もう、可愛いこと言うな、フェイは」
「か…可愛くない…っ」
「まあ…そういう事なら僕もてるてる坊主作ろ、」
そう言い掛けたとき、ポツポツと雨が屋根を叩く音が聞こえた。
僕とフェイは同時にあ、なんて間の抜けた声を出して微笑みあった。
「…じゃあ、ちょっと遅くなったけど昼飯でも食べに行こうか、フェイ」
「うん!」
そう返事するフェイは、今日一番の笑顔を浮かべていた。
君と僕とで
(ていうか、兎柄の傘って…フェイ可愛すぎ)
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無礼ながらこの小説を麻様へ差し上げます!
駄文で本当に申し訳ございません…!!
とりあえずサルフェイのイチャイチャ感を出そうと頑張ったつもりです((
このような文の後で申し上げるのもなんですが、これから仲良くさせて頂ければ嬉しいです。
20130228