ねえ、いつになったら僕のモノになるの?


「僕はいつだって、キミのモノだよ」


決まってキミはいつもそういう。
もう、うんざりだ。聞き飽きた。
フェイの声も身体も能力も僕のものだけど、ひとつだけ僕が手に入れてないものがある。

それが一番僕の欲しいものなのに、
どうして、それをくれないの?


「ちょうだい、ぜんぶぜんぶ」

「いいよ、サリューになら何でもあげる」

「うそ。くれないじゃん」


ドスッ、
ベットへとフェイを押し倒す僕。
キミは顔色ひとつ変えないで、僕をただ見つめる。
まるで感情なんてないかのように。
僕の事何とも思ってないって、言ってるようなその態度に僕にはイライラを隠せないで居た。


「何がほしいの?」

「そんなの、フェイの全部に決まってる」

「もう、僕の全部はサリューのだよ」


僕に微笑みながらそう言った。
それなら、どうしてずっと僕を見ててくれないの?
キミは…、
天馬くん達の所へ行ってからというもの、あっちの事ばかり気にするようになって。僕と居るときはまるで枯れかけた華のように萎んでる。
心ここにあらずって、今のキミにはぴったりじゃない?


「…心を天馬くん達の所へでも置いてきたんじゃないの」

「そんな事出来ないよ?ふふっサリューでも冗談いうんだ」

「違うんだよ。こんなのじゃなかった、雷門に行く前のフェイは。…フェイ、どうして僕を見ててくれないの、ねえ」

「…?ちゃんと見てるよ、ほら」


僕の言葉をそのまま飲み込む。
言葉の意味を深く考えず、そのままの意味だと思ってるフェイに僕はひとつため息をついた。

それは計算なの?
…いや、素なんだろうね、キミの。
そんなフェイに僕は呆れながらも、やっぱり愛しいと思ってしまうんだ。
これで、互いが思いあっていればどれ程良かったか。


「見てないよ。僕と居ても、フェイは雷門の奴等の事を考えてる」

「…………」

「図星、なんだ?…フェイの心がここには無いような、…そんな気がするんだ」


ちゃんと僕を見て、僕を。余所見なんてしないで。
独占欲が強いだなんてそんなの分かってる。
愛してる人の全てが欲しいだなんて、可笑しい事も分かってる。
でも、全部、フェイの全部を管理して、僕の掌の上に置いておけばフェイを失う事なんて無いだろう?

身も心も能力も。全部僕に捧げてしまえばそこに在るのは僕だけのフェイ。


「…僕にフェイの全部をちょうだい、ねえ」


再び尋ねる僕と黙るキミ。

その沈黙が僕には物凄く重苦しく感じて…。
あれだけ聞き飽きた、僕はサルのモノって言葉がフェイの口から言葉になることを今、強く望んでいた。
聞き飽きたはずの言葉なのに…。


「…置いてきちゃったのかもしれないね…心、」


キミの口から出た言葉は大きく違っていた。僕の言葉の意味をちゃんと理解出来たからかな。
いつもながらのあのお馴染みた言葉が今では、愛しい程聞きたい。
だけど、口から出たその言葉は…、
僕を拒否する言葉。

そっか。それが本当のフェイの気持ち。


「でも、…サリューが好きなのは代わりないよ。僕にとってとても大事な人だもん」


そしてまたキミは僕をまた甘やかす。
全力で拒否はしないなんて、キミはある意味残酷だ…――――。



(フェイが僕を全力で拒否したら僕はどうするのかな…)


20130227