Call to Conductor.
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- かつて、「ニューヨーク」と呼ばれた街は異界と人界とが交差して一晩で変わり果て、これにより異界ならではの超常日常・超常犯罪が飛び交う「地球上で最も剣呑な緊張地帯」となり、「ヘルサレムズ・ロット」と呼ばれるようになった。
人智の及ばぬ全体像、霧烟る深淵の底を見通す事は叶わず。
奇跡と奇跡が重なって生じ、様々な思惑を持つ者達が跳梁跋扈する街。
そんな世界の均衡を保つ為に暗躍する組織「秘密結社ライブラ」があった。
そして、日夜努力し活動しているその組織を尻目に、今日も今日とて街を疾走して生きるとある組織と呼ぶにも烏滸がましい、小さな小さな極小規模集団もまたそこにあった。
そう、喩えるならばそれは大学のサークルの様な様相であった。
ギリギリの所でその日その日を凌ぎ、数分前に隣を歩いた通行人が簡単に呆気なく死んでしまう街中を走り抜ける。
時には通行する上に当たって渦中を突っ切抜けては、少しのちょっかいを。
"外"からヘルサレムズ・ロットへの宅配物の配送成功率は五割を切り、又特A級危険地域に指定されているが故に配送員自身にも配送物そのものにも保険が適用されず。
更には通常のものよりもゼロが一つも二つも多い程の高額だったりする。
それでも、五割を切る。
それがヘルサレムズ・ロットにおける常識な中で、百分率の確率で百を示す程の成功率を収める運び屋の集団があった。
その名は、独立支援組織「運び屋クラシカル」。
街の均衡を保つ訳でも無く。
世界を救う訳でも無く。
無辜の民を守る訳でも無く。
ただただ、己達の音を霧の渾沌へと響かせる為に走り続ける。
これは、手始めに世界が救われている隅っこで好き勝手に、自己中心的に生きているそんな者達の一夏の一行日記みたいな物語だ。