フラグとは だいたい かいひふかである▼



何処かでインターホンが鳴る音がして意識が少しだけ浮上してきた。


カーテンの隙間から日の光が直撃して嫌でも、更に意識がむくりと浮き上がってきた。徐々に聴覚も効いてきて、耳からはポッポやオニスズメの囀りが聞こえてくる。
しかし、昨晩寝る前にセットした筈の目覚まし時計のアラーム音が聞こえてこない。カントー一周の旅、レッドの治療法ツアーで疲れに疲れた体を直ぐにでも癒したいがために、風呂もシャワーで済ませてすぐさま自室のベットにダイブした。したけれども、目覚まし時計は流石に寝ぼけ眼でセットしたのだけは、ちゃんとそこまでは覚えてるから。

まぁ、そもそも朝が大敵で弱い私は早起きが出来なくて。
目覚まし時計のスヌーズ機能なんて凄いから。五分おきのスヌーズ機能付きで更に、五個分までのアラームセットが出来るデジタル式の目覚まし時計だから。前世では、長年お世話になっていたガラケーパイセンを目覚まし時計代わりに使っていたけどね。

昨晩寝ぼけながらもセットした時間は、九時半だった。
だけど、今目覚まし時計が示している時間は十二時四十五分。
…これ、アレだぜ?別に夜中とか、そんなありきたりなオチじゃないかんね?そもそも、昨日私が寝た時間帯は既に二時過ぎてたから。丑三つ時だったから。
だからと言って、次の日の夜中まで爆睡していたとか言うオチでも無くて。面白味も何も一切存在しない次の日のお昼の十二時過ぎ。
私を起こしたのは、アラームをセットしていた目覚まし時計ではなく、今現在進行形で家中に鳴り続けている我が家のインターホンである。
つか、ピンポンピンポンと…、誰が16連打ピンポンしろっつたよ。
ウチのインターホンが壊れたら絶対に弁償させてやる…。

もそもそと布団の山を作って聞き逃してやろうかとも思ったけれど、思ってた以上にインターホンが耳に入ってくるからひやりと冷たい床に足をつけて起きることにしましたまる。


階段を一段一段下りる度に、ミシリと音を立てるくらいにはこの家も年月が経ったということなのだろうか。まぁ、掃除とかはヒナタさんが欠かさずしていたから新築に負けないくらい綺麗だけどさ。
ま、そのヒナタさんも今は遠いイッシュ地方に行ってしまってるから。実質現在この家の掃除とかはご近所さんのマヌーサさんに任せてしまってるんだけど。
またいつか、マヌーサさんを紹介するよ。何か幻惑状態にさせられそうな名前の人だけどいい人なのは確かだから。
私に関わると大体の人が、メタ的な意味でギャグ方向に行ってしまうのは何でなんだろうね!訳が分かんないよ!

それよりも先に未だインターホンを押してる客人をどうにかしないというか…、これだけ経っても出ないんだから留守と考えたり諦めたりしないんかね?
寝ぼけながらもこうやって下りてきたから、今帰られたら流石にイラつくけど。



「…はいはい、どちらさんですかぃ」

「やっと、出てきたわね。おはよう」

「……何回、インターホンプッシュしたと思ってんの?おはよう」


時間的にはこんにちは、もしくはおそような気がするけどね。
つい先程までマシンガンレベルでインターホン鳴らしていた人物が、まさかのブルーで私も寝ぼけ眼を大きく開いたわコンチクショウ。
つか、何でブルーが家訪ねて来たんだろうね?

取りあえずあの後、コーヒーと菓子を出した後着替えに部屋に戻った。流石にそこそこ長い付き合いがあるとはいえ、いつまでも寝間着姿でいるのは問題があるだろ。しかし、それでも最近着始めた紫のセーターを着ずに黒のタンクトップのみ状態だけどさ。
部屋にある殆ど利用しない姿鏡を見て、寝癖が無いかどうかパッと見て少しうねっている程度だったから今は手櫛でその場を凌ぐ。
オシャレ好きで美人でポケスペ界隈の不二子ちゃんと呼ばれているブルーに対面して、つい先程まで惰眠を貪っていて友人を家に招いてから寝間着から着替えた頭のセットが出来ていない私。
…同じ性別とは思えないね!
因みに顔は流石に洗ってる。
前世では一度も化粧の経験もしたことの無い女ととれるか分からないズボラオタクだったけれども、顔くらいは洗うからね。

信用無いって?うん、知ってる。どうせ私の信用技能は初期値も無いですよーだ。
ブルーはどうせAPP(外見)をプラスしてのロールなんでしょそうなんでしょ。ブルーの美貌はAPP18レベルだからね。
…そもそも、図鑑所有者達は男女関係なしで顔面偏差値が平均的に高いけど。何気なしに隣を歩いている私はきっとブルーベリーみたいな色をした全裸の巨人に追われてマナモードになる彼なんだろうよ。
みんな、騙されないでね。私は元々モブトレーナーを目指していて失敗した顔面格差社会底辺を生きている人間だから。
そんなに嫌いじゃなかったけどね、タケシ。シリーズによってはクズだし、アレになるシリーズもあってリアルガクブル状態だったけど。親近感が湧いてただんだわ。


ようやく、まぁゆっくり会話できるくらいの格好になってブルーを待たせているリビングに行けば優雅にコーヒーとお菓子を食べてるから、なんつーか、ね?
察してよ。
顔面格差社会は私と原作主要人物達の間に確かに存在するんやで。


「お待たせ」何の用だと言いながら、ブルーの向かいの椅子を引いて座った。未だ食べていない朝ごはんも兼ねてでお昼代わりに茶菓子を貪る。口の中にパサパサと甘さを持つクッキーが広がるけれど、飯代わりにお菓子とか向いてないね。全然満腹感が満たされない。
ブルーが帰った後に、インスタントの何かを食べようかと考えたあたりで、ブルーがコーヒーカップを置いて口を開きここにやって来た目的ではなく、質問を言い出した。


「最近、グリーンと一緒に何かをしてるみたいね?」

「してるね」

「あら、案外隠す気なし?」

「まぁ特に隠し事でもないし」


レッドじゃないし、ブルーに隠す必要性はないだろう?と、そう言えばグリーンと違って疑わないのねと美人スマイル頂きました。ありがとうございます。
ブルーのその言葉に、グリーンからは素直に聞けなかったというのが簡単に分かったから笑えてくる。個人的にブルーの情報網は常人のそれとは比にならないくらい広く深いから、共犯者になってもらえるならなってほしいなってのが私の本音なんだけどね。
そのトラウマレベルの壮大な過去を持つが故に身に着けたそのスキルを借りることが出来れば、ぶっちゃけ今以上に有益な情報が得られる可能性は大いにある。
ま、狡賢い子ではあるけどさ。敵にしなかったら、強い味方でしょ。
ブルーはそういうポジションだと、私は勝手ながら思ってる。

レッド本人は、今はジムリーダー試験のために現ジムリーダーであり知り合いでもある彼らから過去のビデオとか試験の様子とか予習したり、手持ちのポケモンやトレーナとしてのレベルアップに勤しんでるからなぁ。
その邪魔をしないためにも私は隠しておいた方がいいんじゃないかと思ってる。
少なくとも、レッドの怪我を完治させる方法を見つけるまではさ。
そう言えばブルーはくすくすと口元に手を持ってきて笑い始める。


「何か可笑しなことでも言ったか?私は」

「ふふっ、いいえ?ただ思っただけよ」

「何をさ」


「ジルもグリーンも丸くなったと、ただそう思っただけよ」


「……あっそ」



未だくすくすと笑うブルーに少し居心地が悪いような、妙にむず痒いような感覚に襲われた私は、砂糖が大量に入ったゲロ甘コーヒーを一息に飲み込んだ。


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