あおく わかい ふじこちゃん▼



『クチバはオレンジ夕焼けの色』

確かゲームでは設置されていた看板にはそう書かれていたような記憶がある。カントー地方唯一の港町で、第二世代と呼ばれている金銀クリスタルではジョウト地方の港町のアサギシティと航路が繋がっていた。確かアクア号という名前だったかな。
あれって、クチバとアサギとでは出航する曜日が違ったんだよね。基本ポケモンのそらをとぶでカントーとジョウトを行き来していたけれど。
初代でのクチバシティではサント・アンヌ号という超豪華客船が止まっていたね。船長室にいって秘伝技のいあいぎりが入った秘伝技マシンを貰った後は出航して二度と目にすることはなかったと思う。

まぁ、ぶっちゃけかなり遅くにクチバシティにやってきたもんだから、ね。残念ながらサント・アンヌ号は既に出航した後でクチバ港には船の一隻も見えないのだけれど。外装だけでも見てみたかったな。
スピアー達も海を見るということ事態も初めてだったから、どうせなら船も一度くらいは見せてやりたいとは思っていたんだけれでどね。ちょっと、残念だったかな。



あ、言い忘れていたけれど昨日できればジム戦してみたいなあ、と言ったけれど、アレ撤回させてもらいますわ。
いや、理由とか聞かれるとは思うから先に言っておくとね、いなかったの。ジムリーダーが。それもタマムシシティのジムリーダーのように何処か用事で外出しているとかいう理由ではなくて、トキワジムのジムリーダーのように何か月か前から行方不明なんだと。
いや、行方不明になったのはつい最近のことだったらしい。街を束ね発展させるリーダーでもあるジムリーダーが船を使ってトレーナー持ちのポケモンを盗み何処かの島へと連れていく誘拐事件の首謀者だったのだとか。
警察は今でも捜索しているとのことだけれど、多分警察なんかでは見つけることは叶わないだろうな。

おそらくはマチスもロケット団の幹部的な存在位置にいるのだろう。ロケット団のしたっぱとかならば確かに雑魚と呼ばれても仕方がない程の弱さではある。でも、あくまでもそれは私を始めとしたプレイヤーだから見たレベルであって、ポケモンを滅多にバトルをさせない人もいれば親から貰ったばかりのトレーナー歴が浅い子だっているだろう。
そういう人たちにとってはただのしったぱ雑魚でも強くて敵わない絶対悪だろう。
それなのにマチスと言えばロケット団の幹部的存在だろうし、何よりジムリーダーを任される程の実力者でもある。強い、に決まっている。
是非とも戦いたくないね。私は。





…ついでに目の前にいるポケスペ界の不二子ちゃんにも戦う以前に出会いたくなかったわ。


「ほら、何ボケっとしてんの!」
「私がボケーっとしててもいいじゃないか。関係ないんだから、巻き込むな!」
「残念でした!もう既に巻き込んでやっているわよ!!」

自分よりもワンランク上の高いキーの声を大声で叫びながら言うのは、茶髪のロングの綺麗な髪に黒のワンピース、白のグローブいや、手袋かな。そして特徴的な海を連想させる青い瞳を持つ女の子。
ここまで言えば分かってくれるよね。そうです、初代図鑑所有者と呼ばれるマサラ出身の三人組の中で唯一の紅一点。ブルーです。はい。

個人的に知り合えば楽しいとは思うけれど、一番会いたくなかった子でもありましてね。理由は現在進行形のこれ。
面倒事を持ってきて洗濯機の如く巻き込んでくるからだよ!
可笑しいね!ブルーとはポケスペ世界にやってきてから一度としてエンカウントしていなかったはずなのにさ!まあ、対応しようにもレッドやグリーン以上にあっちゃこっちゃしているから分からなかったというのもあるけどさ。
くそぅ!クチバシティで一泊せずに野宿覚悟でそのままディグダの穴へと向かえば良かった!

「つか、何であんたはロケット団に追われてんだよ!よからぬことでもしたんか!」
「ちょっと前に伝説ポケモンの捕獲方法が入っているデータを盗んだだけよ!」
「明らかにそれじゃねぇか!本当に何やってんだアンタは!!」


伝説ポケモンって何だよ、ミュウか!ミュウなのか!?
一時一つのゲームカセットに三匹捕まえていたことのあった珍しみがあまりなかったミュウか!あの、全ての祖先とも呼ばれていて、全ての技を覚えさせることが可能だったあの!
本当に面倒なことをやらかしてるよなこの青い不二子ちゃんはよ!

ちなみに、何で一緒になってロケット団に追われているんだと聞かれたら、そこまで大したことはなかった。ただ、単に一泊したクチバのポケモンセンターから出て観光とかはせずにそのままディグダの穴へと向かおうと思って歩いていたら、後ろから既にロケット団に追われていたブルーが面識皆無だったはずなのに助けてとかぬかしてさ。
んで、ロケット団が私もブルーの仲間だと勘違いをして一緒に追いかけてきたというわけさ。で、私もついそのまま逃げてしまったわけなんだけれど、そのまま放置して知らぬ存じぬを突き通せばこんな面倒事にまで発展しなかったのではないかと今更ながら思うんだけれどね。本当に今更だけれど。

まぁ、残念ながらそれは叶わなさそうなんだけれど。
どうも、今私達を追いかけている複数のロケット団の中の何人かがあのロケットゲームコーナーの地下にいた奴等が混ざっているっぽくてね。結局は私も追われる運命にあったということだけれど、やっぱり最初に追いかけていたのはブルーだから、ブルーと出会わなければこうして朝から走る羽目にはならなかっただろうな。

ちなみに何度もくどいと言われるだろうけれどブルーとはこれが初の逢瀬だからね。
お互いに走りながらこんな事を言っているけれども、友人とかそんな烏滸がましい関係ではないから、決してね。


それにしても…

「くっそ、面倒臭い上にしつこいなあ!!殺ってこい、イワーク!!!」

「グガァァァアアアッ!!!」

ブルーと共に走って逃げている中、段々足が限界を訴え始めて膝もガクガクと大爆笑してきたためもう走って逃げ続けることが叶わないと悟った私は、すぐに走って逃げるから不意打ちを食らわせて逃げてやろうという体制に切り替えた。
私みたいな女の子(見た目は普通)がイワークなんて大きなポケモンを繰り出すとは思っていなかったんだろうね。ロケット団だけではなく、ブルーまでもが目を見開いて驚いた顔をしていた。何故か滑稽に思えるね。
出して相手が怯みポケモンを呼び出せずにいる間にイワークのヘヴィ級のロケットずつきを食らわせて何人かを先頭不能に。更にいわおとしで追いかけられないようにして、どれ程時間がたったのかは分からないけれど漸く逃げ切ることができたのだった。



ちなみに事の発端であり元凶であるブルーはいつの間にかいなくなっていました。
巻き込むだけ巻き込んでおいて先に勝手にトンズラと本当に自分勝手だよなあコノヤロウが!!!


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