さいしょの せんとうBGM は もえる▼



場所はハナダシティにあるポケモンセンターの裏庭にあるバトルフィールド。
時刻は日が西へと傾いていて空は突き抜けるほどの青から悲しみの色とも例えられるオレンジ色の夕日へと変わっていた。

本来ならば、ヤドンを捕まえた後ハナダを通り抜けそのまま9番道路方面へと向かい岩山トンネル前のポケモンセンターに着いているであろう頃で、そこで寝泊まりする予定だったというのにこの予定の変わり様。
原因は現在進行形で数メートル先の目の前で立っているツンツンと跳ねた鳶色の髪と綺麗な緑の瞳を持つ少年トレーナー。
ポケモン界の権威とも呼ばれている、最初にポケモンを151匹見つけポケモン図鑑というハイテクな機械を発明した大有名人、オーキド博士の実の孫。
七光り少年ではない。むしろ彼は努力を惜しまない人間だと私は勝手ながら思っている。周りからはオーキド博士の孫だからと言われ鬱陶しく思っているだろうが、彼の実力は彼が血を滲む努力をして得た彼の実力である。その実力にオーキド博士は一切関係無い。
マサラタウンのトレーナー、名はグリーン。カントー地方の図鑑所有者で将来初代組とも呼ばれ、『育てる者』の代名詞をオーキド博士から貰う程、ポケモン育成に長けた人物。

あぁ、ここまでの知識は消えず残っていたみたいだね。まぁ、残念ながらあってもポケスペという物語に関与されないから覚えていてもトレーナーの情報からは微動だにしないのだけれど。

兎も角、そんなトレーナーであるグリーン。
そこらへんのトレーナー同様、弱くない筈がないよね。分かってるよ。私が今持っている全てを駆使して本気を出さなければ辛勝どころかボロ負けだということぐらいは。
強いんだ。戦わずとも分かる。

でも。

ここまで来たんだ。来てしまったんだ。私自身が気乗りしないとか、もう今となっては関係無い。
グリーンが強いからなんだ、強い程燃えるという言葉が熱血漫画ではよくあるではないか。熱血漫画じゃないけどね、ポケスペは。


「準備はいいか」
「いつでも構わないよ」
「最後の確認だ。ルールは三対三の二戦勝ち抜き、入れ替え有りだ」
「分かってる。既に日は暮れているんだ、さっさと始めて終わらせよう」

一瞬シングルバトルとは言わないのかと思ったけれど、そういえばダブルバトルというルールが出来たのはルビーサファイアの代からだったなと思い出す。
ダブルが存在していない現在で、シングルと態々言う必要は無い。

お互いに腰に付けてあるボールを取り出して収縮機能を切ってボールのサイズを大きくする。この時にカントー地方バージョンのライバル戦の戦闘BGMが頭の中で流れ出すのは、ご愛嬌もいうことで。
ポケモンのBGMはどれもカッコよく、中には危機迫るようなものまでバラエティーに富んでいて好きなのだが、やはり一番好きなのは金銀で流れたレッド戦かな。あのBGMは本当に好きすぎてウォークマンに入れたもん。それ程大好きでした。

とまぁ、ギリギリまでの現実逃避は止めていい加減始めようか。
お互いに最初に出すポケモンはなんなのか、読もうとしているのは第三者から見ても分かるだろう。
私はスピアー、ピカチュウ、ヤドンの三匹。グリーンはリザード、ストライク、コダック、ピジョン、そして意外だったワンリキーの五匹。予想以上にポケモンを捕まえていた。
向こうは何を出してくるかは分かるだろうけれど、私は予想しなければならない。
が、どうでもいいか。前世からの私の戦闘プレイスタイル、レベル差によるゴリ押し戦法という戦法とは呼べないもので挑むのみ。


「いけ、リザード!」

「やってこい、スピアー!」



お互いほぼ同時にモンスターボールを宙に投げ、中から出てきたのはリザードとスピアー。タイプによる相性で言うならば最悪としか言いようがないのだが、これはゲームではなくポケスペの世界なのだ。
頑張れば被ダメノーダメで頑張れる…筈。ビードル時代のどくばりをひたすら連発して毒らせれば後はこうそくいどうで避けるのに徹しよう。時折ミサイルばりでもしようか。
毒らせた後にヤドンに入れ替えてねんりきでぶっ飛ばすか、弱点の水タイプで攻めてやるか。

とりあえず、負けない戦法で行くしかないね。
せこいとか狡いとか言わないでよ。


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