『3枚ブロックーー!!ここで試合終了ー!一林高校、見事、春の栄冠を手にしました!!』

わあああ、と会場が盛り上がる中で、私のいる場所は静かだった。春の高校バレー、通常春高バレー。男子決勝。
あと1つ勝てば、全国制覇という栄冠は無情にも3枚の壁に阻まれた。

茜が悔しそうに唇を噛む私の手をぎゅっと握る。その言葉にならない優しさが心地よくて、少しだけ痛い。
遠くから見る木兎さんは、相手のコートをじっと見つめていて。まるで1人だけまだ試合を続けているみたいな気迫が伝わってきた。

そんな木兎さんを泣きながら見つめる赤葦さんに、ぎゅっと心臓が締め付けられた。悔しいのも、やり切ったからこその少し晴れ晴れとした気持ちも、全部その涙で押し流されているような気がした。

泣かないでほしい。そう思っても私には掛ける言葉すらなくて、

私が梟谷のバレー部を知ってから、負けて終わりの試合で負けたのは初めてだった。
東京都代表決定戦では、もう春高に出場することが決まっていたから、負けてもまだ本戦があると思っていた。事実、梟谷の人は誰一人として泣いていなかった。

けれど、今は違う。高校で、このチームで、木兎さんが、赤葦さんがいる試合はこれが最後なんだ。もう、二度とこのチームは見れないんだ。

そう思ったらなんだか鼻の奥がツンとした。もう見れないんだ。その事実に、どうしようもない感情が襲ってくる。
悲しくて、悔しくて。でも、全力だったのが分かるから。残念だったなんて言えない。ただ、私もあそこに居たいと思った。

悔しいのも、嬉しいのも、出来ればあのキラキラした輝きを、一番近いところで見たい。

ずずっ、と鼻をすする。はあ、と深く息を吐く。

「茜」
「うん、悔しいね、なまえ」
「負けるって、こんなに悔しいんだね……。―――茜、私、もっと受験頑張る」

突然の決意表明に、茜が思わずぱちくりと私を見たのが分かった。私にとって梟谷の偏差値はキツくて。模試の度に刻まれるCの判定に何度も諦めたくなった。やっぱり無理なのかな、って諦めそうになってたけど。

私、やっぱりあそこに居たいや。

「あの人たちみたいに、最後まで諦めたくない」
「っ、うん!頑張ろ!」

そうお互いの手を握って。ただコートを見つめる。
オレンジのコートに立つ白いユニフォーム。目に焼き付けておかなくちゃ。1年後、私絶対にここに立ってやる。あの滲んだ世界でもなお前を向く、あの背中を一番近くで見たていたいから。

きっと、今日は、私の中で忘れられない日になる。そんな気がした。

きらきら星の一番近く




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