「名前ー!」
「はあいー」
「名前ちゃーん!頑張ってー!」
「自信なーい!」
「宮ー!!勝って焼肉いくぞ〜〜〜!」
「めっちゃ頑張る〜!」

球技大会女子バレーボール決勝。
ほぼラッキーで勝ち上がった決勝戦でもある。

宮姉だからきっとバレーは得意だろう、と言われて全否定したのに結局出場することになった。卓球とかバドミントンでいいと言ったのに許されなかった。酷いよみんな。
もちろん双子には家で特訓させられた。疲れてるのに悪いことしたな、と思ったけど治も侑も楽しそうだったからよしとしよう。

そんなバレーボールは相手のミスやラッキーが立て続けに起きて、決勝進出。これに勝てれば、先生から焼肉の驕りが待っている。つい先生のお財布を心配してしまう。残業代使うとこないからいいんだ、と遠い目をされた。わかる。

バレーボールの決勝ということでまさかのセンターコートだし、結構ギャラリーも入ってるから練習試合みたいな空気だ。良く見ると北くんとアランくんが応援に来てくれていた。は??推しが私を見に来ているとかそんなことありえな

「宮さん、頑張ってな」

ふわ。と北くんが笑った。
うわああああ推しが、推しが応援してくれたよおおおお!!

「き、北くん、アランくん!」
「名前お疲れさん、すごいなぁ!決勝やんか」
「ありがとアランくん、私の力じゃないけどね」
「ええねん、皆でまとまったから決勝まで来れたんやろ。宮さんもそのうちの1人やからな。もっと誇ってええで」

あああ〜〜〜北さんの主将らしいお言葉!!ありがとうございます!!

というか私は北くんのバスケも見たかったんですけど…!!双子のサッカーと野球は充分堪能したけど、私は北くんのバスケも見たかった…!

絶対にロングスリーとか決めるでしょ!?だって北さんだもんね!!バレー以外をやる推し……はあ……見たかった……何故私はここでバレーをしているの。需要ないよマジで。

「男バレの体育館使うなんて贅沢やからな。存分に楽しんで来たらええよ」
「ふふ、ありがと、北くん!」

少しだけ表情を和らげた北くんをじっと見上げてしまった。ぱっ、と顔を覆う北くん。なに、え、照れてるの??まって??可愛すぎない???罪深くない??可愛すぎて有罪判決。罪状、一生私に推される罪。

アッまって??今、北くん男バレのコートって言った??ねえ男バレのコートって言った!!
あああそうでしたそうでした!ここは!!男バレ専用の体育館!!……侑と治はいつもここで練習してるのかぁ…。思わずあたりを見回す。

ねえ??まって??やばい、究極の聖地巡礼だよねこれ。やばくない??原作でもまだ描かれていない稲荷崎!!
なんだったらクラスメートの応援もあって凄い春高感。ここは東京体育館だった?おかしいな、思い出なんかいらんの横断幕が見える……!

味方には静寂と集中でしょ…私も侑みたいにぐっ、ってやったらぴたっ、て皆応援止めてくれるのかな…!?いや私やる側なんだけど!
木兎さんならソワソワしだす頃ですね!?そうだよね赤葦…!全国で会った赤葦くんと木兎さんかっこよきでした……っ!!

そろそろ始めます、なんて声が聞こえてコートに入る。サーブは私かららしい。緊張するけど、あの振りが吹き飛んだライブよりは余裕である。
ぱっと顔をあげると、ギャラリーの中でもよく目立つ2人がブンブン手を振っていた。

「ねえちゃーん!いてまえ〜〜〜!」
「名前ー!1本集中やー!」

わわわわわ私まさか推しから声援貰ってる〜〜〜!?!?!?
ああああやばい死にそうこれで寿命3年のびた〜〜〜!!!

突然の最推しの声援にキョドった私は、何を血迷ったかボールを高く投げてしまった。
アイエエエエ待って待ってちが、エッ、マチガエタァァァァァ!!あっこれ天童くんのやつ!

「そーーれ!」

歓声が痛い!!頼む今だけ山口くんか及川くんか瀬見くん(多い)憑依して!!!
なんとか手に当たったボールはへろへろ飛びながらなんとかネットを越えた。はああああああせったああああ!!はからずも変な軌跡のボールは予想外の所に落ちて、ほっと一息ついた。よかったああああ……。

やっぱ宮姉バレーできるやん!!なんて言葉は黙殺することにした。うおおお、と盛り上がる5組のメンバー。盛り上がり過ぎ、と思ったけどそれ以上の黄色い声に思わず肩が跳ねた。

「かっこいい〜!」
「名前ちゃーん!ウインクして〜〜!」
「指差して〜〜〜!」

ぶんぶん振られる団扇とペンライト。え?どゆこと??
すごいライブみたい。団扇にめっちゃ宮って書いてある!侑か治の流用かな?それにしても力作で思わずじっと見てしまった。

私のその視線に気付いたのか、ぶんぶん振られた団扇がくるりと反転された。指差して!と書かれたそれに、思わずビシリと指を指した。ちょっと及川さんと岩ちゃんのあれをイメージしてやってみたんだけど……。

いや〜〜〜〜〜あれほんと鳥肌たったよね〜〜〜〜!!!

烏野と青城の春高宮城予選は本当に、もう……涙なしには語れない……。だめだ泣きそう……!最高のトスを打てなかった岩ちゃんのやり場のない感情とか、あの及川さんの無言の励ましとか……っ!青城最高……っ!センスは磨くものですよね!

そんな及川さんをイメージしながらやった指さし。完璧じゃない??かっこよく再現できてない!?

どう!?と見たらその団扇も団扇を持った子もどこか行っちゃったみたいだった。あ、あれ……おかしいな……見間違い……?あとで感想聞きたかったのに。残念。

なんか……ちょっと恥ずかしくなった。バレーだからってちょっと浮かれすぎだよね、反省しよ……。推しの真似なんて烏滸がましいよね……。もう生まれてごめんなさい(面倒なオタク)

「おいまた双子が倒れたぞ」
「ほっとけ。いつものことや」
「角名呼ぶか?」
「あいつも名前先輩の餌食になるからアカン」

そんな私は頬に上がった熱を覚ますのに夢中で、いつの間にか双子の姿を見失って、声も聞こえなくなっていたことに気付かなかった。


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -