「おっ、尾白アラン、い、いいます!あの、」
「アランくんって言うんだ、私は宮名前だよ。よろしくね」

アラン君だ〜〜〜〜〜!!!!

手を出されたので、つい癖で握手してしまった。事務所の教育とは恐ろしいな、としみじみ思った。

目の前にいる双子の憧れ、尾白アランくんはなんでかガチガチに緊張している。見たことある、こういう人。前世で何度も。握手会で。

急に推しに会って、なんかこう、あっ、推しって生きてるんだ……?みたいな、同じ空気吸ってる……私が??みたいな。宇宙の真理に殴られたみたいになるよね。わかるわかる。

でも私もうアイドルは終わったからそんな反応されても困るよ、むしろそうなってるのは私。つい癖で握ってしまった手が離せない。待って、ねえ。推しに手握られてるんだけどどういうこと??いや、握ったの私だけど。手汗やばかったらほんとごめん。

「アランくん、いつも侑と治とバレーしてくれてありがとう」
「や、その。あの…俺の方こそありがとう…です!」

お礼を言いたいのは私の方です。こちらこそこの世に生まれてきてくれてありがとう。

小学6年生のアランくんはすでに大きいけど、なんだかんだやっぱり小学生だ。この初々しい感じが可愛らしい。現在進行形で小学生の私がいうのもなんだけど。

「あー!! アランくんがねーちゃんの手ぇ握っとる!」
「侑、もう練習はいいの?」
「おん! もうたっくさん練習したからええねん!それより腹減った!」
「そっか、頑張ったね〜」

どや、と胸を張る最推しの可愛さよ。ねえ全人類刮目して??この子私の弟なんだよ??やばくない??
ひとつ下で、女子の成長期の方が早いというのに、私と同じくらいの身長の侑がぎゅうぎゅう抱き付いてくる。

待って待ってやばい。やばいよやばいよ、あああ生きてる最推しが生きてるよ〜〜!

にやけそうになる表情をなんとか抑える。……多分抑えきれてないけど。
そんな私と侑を見て、アランくんが困ったように眉を下げた。うっ…困り顔の推しも可愛い…!

「えっと、」
「名前でいいよ、宮いっぱいいるから分かんなくなっちゃうよね!」
「名前、」

確かめるように名前を呼ばれてうん、と返そうとすると侑が急に口に手を当ててきた。むぶ、と変な声が出た。えっ!?

「アカーーーーーーン!!!」
「ぅお!急になんやねん!」
「もがももうがむむ」

アランくんの突っ込みも無視して侑は私の口を塞ぐ。ちょ、まっ……!

「ねーちゃんの名前呼んでええの俺と治だけや!いくらアランくんでもアカン!」
「フグゥ……!」

無理。待って。無理。
お姉ちゃん取られちゃうって思ってる最推し兼弟が可愛すぎてたぶん一瞬心臓が止まった。弟が可愛い、弟ってこんなに可愛いかったんだ……!

俺と治だけって……!俺だけ、じゃないところが双子の特別感だよね!?無意識に治は許してる、っていう双子の特別感だよね!うわああああご馳走さまですううう。

抱きついていた侑が今度は、ふんす、と鼻息荒く私とアランくんの間に立ちふさがっている。身長はアランくんと私の方が大きいのに、立ち向かっていく侑。ふわああああ!!私の最推しかっっっっっこよ!!!

こっ、困ります困りますお客様!私宮侑に殺される……。死因、宮侑。いや、この私宮名前…、烏野戦を見るまではかじりついてでも生きます!

「アランくん。ごめんね、侑が。名前で大丈夫だから」
「気にせんでええよ、ほな、名前って呼ぶわ」
「なんや、ねーちゃん!俺は敵からねーちゃんを守るんやぞ!」
「うんうん、ありがと侑」

ぷんすこ怒り始めた侑の頭を撫でておく。ちっちゃい頃から侑はこれで大人しくなる。今回も例に漏れず大人しくなった。体は大きくてもやっぱり私の弟だ。ギャンかわ。

それにしても、将来のチームメイトは敵か〜〜〜、いっぱい支えたんねん、って言わしめる貴方のチームメイトなんですよ。この方。5本の指に入るスパイカーなんですよ、この方〜〜!

「侑、もう帰んのか」
「おん!ねーちゃんとな!」
「さよか……上げてくれる奴おらんくなってしもたな……」

ぴく、と侑の体が揺れた。これはアランくんに上げたくてしょうがないやつでは……?横を見ると目をきらきらさせた侑がウズウズしていた。あ〜〜〜〜〜!!

ウズウズする推しがいじらしくてかわいい〜〜〜!推しが、私の最推しが可愛くて辛い!

もうこの頃からアランくんに対する信頼をお持ちなんですね??そうなんですね!?双子とアラン君の3人だけに分かることとかこの先いっぱいあるんでしょ!?今はその信頼関係構築中なんですよね!?あ〜〜〜、困りますお客様、こんな、その……困ります〜〜〜!(語彙力)

結局もう少し残っていくという2人を見送って、私はようやくその場に崩れ落ちることができた。とんでもなくにやけている自信がある。今顔は上げられない。はああああ、しんどい〜〜〜!!!でもありがとう神様〜〜〜!!


結局治も合流して4人で帰った。本当にご馳走様です。


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