双子が喧嘩をすると呼び出されるようになった。
わかる。正直うるさいし、迫力あるし、2人とも背高くて体しっかりしてるから、男の子でも中途半端に手を出せないよね。

そんなわけで、最近は角名くんや銀くんがこっそり助けを求めてくるようになった。部長である北くんにバレるとそれはもう怒られちゃうらしい。まあ、北くん鋭いし同じクラスだから結局バレちゃうんだけど。

そんなわけで今日も銀くんにヘルプされた私は、2年の廊下を銀くんに連れられて歩く。ちょこちょこ掛かる名前さーん!という声に手を振りながら。またやっちゃった。もうアイドルじゃないというのに。

廊下の人だかりの先に相変わらずの大きな声。今日も元気にやってるなあ。先生たちもクラス離せば……無理か。1組2組はスポ薦クラスだもんね。

「侑、治」

人だかりの中心にいる侑と治の名前を呼ぶと、2人の動きがぴたりと止まった。回りからおお、という声が聞こえてくる。嫌そうにしながらも2人仲良く私の前に並ぶ。どっちがきっかけなの?と聞くとお互いを指差した。くっ……双子のシンクロごちそうさまです……!

ひとまず先生たちに見つかるとまずいので、治に教室に戻っておくよう伝える。見るからにしょんぼりした。耳が……見える……。渋々角名くんに背中を押されて戻った治を見送って、踞ってしまった侑の前に同じようにしゃがむ。

「侑。みんなに迷惑かけちゃだめだよ」
「〜〜〜っ、………俺やない」
「うんうん。お姉ちゃんが話を聞いてあげる。今日は一緒に帰ろうね」

不服そうにしながらも反省はしてるんだろうなあ。そんな声だ。

「いつもの」

ぽつ、と侑が呟いた。金色の髪がもぞもぞ動いた。ちら、と膝の間から目が覗く。眉が下がっていて大型犬を思い出した。可愛すぎないですか私の最推し…。

「いつものやってや。やってくれたら切り替えるわ」

手を出してきた侑に、しょうがないなあ、と笑ってその手を握る。沢山支えるって言った侑の手。私の大好きな手だ。

「侑、頑張って。応援してるよ」
「〜〜〜っ、もう死んでもええ……」
「それは私が困るからだめ。ほら、北さん来ちゃうよ」

侑をクラスに戻すと固唾を飲んで見守っていた侑と治のクラスメートが拍手をした。ぺこぺこ頭を下げる。むしろ弟がごめんなさい。
同じように治の元にいくと、同じことを求められる。やっぱり双子だなあ、と内心で笑った。





「宮さんが甘やかすから調子のんねんで」
「ふふ、ごめんね」

治と侑を甘やかすのは私の仕事なので許してほしい。あれでちゃんと境界線は踏み越えない器用さと、引くべきときの引き際は分かってるのだから。
教室に戻ると少し呆れたような北くんがそう言ってきた。やっぱりばれちゃった。

「飴と鞭でちょうどいいでしょ」
「俺は鞭か」
「なーんも言ってないよ」

隣の席の北くんははあ、とため息をついた。珍しい。ほんと保護者だなあ、って思う。それと同時にやっぱり双子のことをちゃんと止められる人が主将で良かったと思った。

「まあまあ、我が子にはのびのび育って貰いましょ」
「いややであんな息子」
「ふふ、素直じゃないなあお父さん」
「母さんは呑気やなあ」

なにこれ……!北さんってこんなノリいいの!?やっぱり関西人だから!?
あんな正論パンチかましてくる北さんがこんなノリがいいなんて誰が思う?  私まだ途中なんです、あなた方のかっこいいところ…!

「まあ、宮さんとの子育ては楽しそうやな」
「流石に子育てしたことはないんだけど……」
「?  宮さんの子供みたいなもんやろ。あいつら」

あの懐き具合。そう言われて何も言い返せない、子供かはさておき、何故か昔からお姉ちゃんっ子でべったりだったから、必然的に面倒を見るのは私だった。
共働きの両親に代わっておやつ作ったり、おかず残さないよう注意したり。

うーん、強ち間違いじゃないかも。なにせ人生2回目だし。子育ての経験ないけど。アイドルに妊娠は禁句です。

「ああ、でも。子供にはできんけど、弟には出来るなあ」
「エッ」
「できるやろ、合法的に」

北くんの真っ直ぐな目が私を見てくるから、思わず視線が逸らせなくてあわあわする。え、待って、ねえ今のどういうこと!?私の耳おかしくなった!?

「じょ、冗談だよね……?」
「名前は表情もころころ変わっておもろいなあ」

ひえっ。
肯定も否定もなしですか北さん。あなた自分の顔の良さ分かってます?それに!私の中で烏野戦は終わってないんです!!まだあなたのかっちょいいとこちょっとしか見てないんです!公式より情報が多過ぎて付いていけないからやめて!

だから!
ふふふ、って!!  そんな可愛く笑わないで!!

「〜〜〜〜っ!」

やばい格好良すぎる。アッこれが格好良し男かよクソガァってやつですか。黒尾さぁんそんなあなたもかっこよしお……溶ける。
机に突っ伏した私を見て北さんがまた笑った。にやける頬が抑えられない。これは死んでもいい。いや死ねない。生の烏野戦見るまでは。

「からかいすぎたわ。耳まで真っ赤になっとんで。……宮さんもかわええとこあるんやな」

そーいうとこだぞ。北信介。


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