名前は意外と食い意地がはっとる。

サムに影響されたのか、サムが名前に影響されとんのか。わからんけど、名前は特に甘ったるい菓子が好きや。よお買ってきてほくほく顔でお菓子を食うことが多い。ほんで食べた後に「食べちゃった……運動しよ……」と後悔しとることも多い。可愛すぎか。一生愛でたいわ。

ただいま〜、と玄関を開けると名前が飛び出してきた。最推しが元気で俺は今日も頑張れる。疲れた体に沁みるわ〜〜。

「あっ、おかえり侑!ちょっとここ!ここ座って!」
「おん、ただいまぁ、名前……?」

いきなり玄関でお出迎えしてくれた名前がぐいぐい俺の手を引っ張る。ちんまい手がかわええ〜〜〜。つか待てや。え??なにこのファンサ??俺はいつの間に課金してしもたんか??課金は合法やから別にええんやけど。

そんな固まった俺を名前がぐいぐい引っ張ってソファに座らす。サムは先帰っとるはずやけど居らんのはあれか、部屋か。

なら!!名前をぎゅーし放題やんか!!
がば、と抱きついたら名前がひゃあ!と可愛く声をあげた。ちっこい体とちょっとだけ低い体温。

あ〜〜〜〜〜めっちゃ癒される〜〜〜〜。なんやエエにおいするわ〜〜〜〜。ほんま同じ人間やろか〜〜〜〜。

「ヒェ……って、ちが、ちょっと離して侑!」
「な、なんでなん……名前が……反抗期……!? いやそれはそれでかわいい……」

あっち行って!とか、お姉ちゃんって呼びなさいとか言われるんやろうか!?え、それはアリよりのアリやろ。
むしろそれは反抗期なんか??お姉ちゃんって呼べばええんか??お姉ちゃんって呼んでもええんか!!呼ばせてください!おねえちゃん!!あ〜〜〜!!すき!!!

「ねえ、私のお菓子しらない!?名前書いておいた、バームクーヘン!」
「バームクー………………あ」
「あ!? あ、って言った!!」

しもた。完全にやらかしたわ。あれ名前のやったんか。サムのやろと思って食ってもーたわ。書いてあった名前は多分見てへんな。
しかし名前を怒らすのは俺の好感度的によろしくない。先に帰って来たサムに聞いとるやろうから、ここはあれや、おとんに散ってもらうしかないわ。

「いやいやいや知ら……」
「なんで食べちゃうの!私おこだよ!!」

おっ、おっ!?
おこだよ!?!?!?
は!?

それで怒っとるつもりなんか!?!?!?
なんやねんそれ可愛すぎんか!?!?

名前はそう言って、もう!とぷりぷり怒っとる。いやいやちょい待てや。なんや今の。俺は幻を見とんのか??
子犬みたいに名前が文句を言うとるけど、可愛いすぎてもう……無理〜〜〜。好きや〜〜〜!

「き、聞いてる侑!?私怒ってるんだからね!?しばらく口効かないんだからね!?」
「うんうん、せやなあ。よしよし」
「ナッ、なでなでしても駄目なんだからね!許さないんだからね!」

下から見上げて怒っとる姿もめちゃくちゃかわええ〜〜!!
なんや自分のことおこだよとかもう!もう……!!はあ〜〜〜最推しが感情露にしとる〜〜〜最高〜〜〜!





「名前ー……なぁ、無視せんといてやぁ……」
「…………」

それから3日。
名前と俺は一切の会話を断たれておる。徹底して名前からのシカト。アカン。死にそうや。推しが……推しが足りひん……。なんでこないなことになってしもたんや……。

「ぜ、全然許してくれん……名前不足で死にそうや……この世が終わる……」
「終わるかアホ。当たり前やろ。大事に食おうと思ってたもん食われたら怒るわ」
「あ〜〜〜どないしたらええんや」
「謝ったらええだけやろ」

名前がお風呂の入っとる間にサム相手にぼやく。サムはジャンデーから顔もあげんとそう言いよる。うっさいわそんな簡単に謝れたら警察いらんわ。

「謝りたない……」
「クズか」
「うっさいわ!!あれやで!!これ知ったらお前やって謝りたなくなるで!!」

ビシ、と指を指せばサムがアホか、と俺を見た。偉大なる侑様につかってなんやその目は。シバいたろか。

「あれは!名前に下心ある吹部のOBからの差し入れやで!」

俺の言葉にピシャーン、と衝撃が走った。吹部の奴から聞いた話やと、OB(しかも男)が名前だけに綺麗な個包装された差し入れをこっそり渡してきよったらしい。
他のやつらは激安のアイスやったらしいから、もうこんなん下心アリアリやろ。ないっていう奴は出てこいや、俺が分からせたる。

そんなわけで下心アリアリの奴からの土産モンなんて食わせたない。俺が食って正解や。つーかサムも感謝しろや俺の性能の落ちないただひとつの名前レーダーを!

そう思っとったらサムが急に立ち上がった。なんやねん急に!びびるやろが!

「立てツム、アイス買いに行くで」
「は??今からか??」
「名前が食いたい言うてた新商品のアイスあんねん。それを渡せば許してくれるはずや」

俺なら許す、と断言するサムにホンマかいな、と突っ込む。お前と名前一緒にすんなや、と言いたいけど、名前とよお甘いモン談義しとるサムが言うんやから少なくとも俺よりは間違いないやろ。

「なんでおまえ着いてくんねん。はじめてのおつかいちゃうねんぞ」
「うっさいわ。俺も腹減ったのと名前とおんなじもん食いたいだけや」
「は!?ふざけんな!!俺も買うわ!!」

ばたばたと家を出てコンビニまで行ってそっこーで帰った。風呂から出た名前にアイスを渡す。うわただでさえきらきらの目が余計にきらきらしよる!
最推しが!輝いている!!!

「あ、アイス……これ新商品の……!」

ほんとにいいの?と、ちらちら俺とアイスを見比べとる。
は???なんなん??同じモン食っとるのになんでこんな可愛くなるん??しんどいわ。

「名前、溶けてまうから……食わん?」
「しょ、しょうがないから……たべたげる……」

この後めちゃくちゃ幸せそうにアイス食う名前を堪能して仲直りした。


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