苗字名前改め、宮名前はまだ幼稚園に通うような年齢なので、今日も双子と小さなおててを繋いで幼稚園バスに乗る。私を挟む双子は終始ご機嫌そうだった。さっきまではギャン泣きだったのに。え? 私?

私は終始、もみじみたいなちっちゃい手かわいい〜〜〜!!!と悶えていた。ご馳走さまです。

幼稚園に行きたくなくてぐずる双子を私とお母さんでなんとかなだめて、バスに乗る。双子にいやいやされた時のお母さんの表情を見たら思わず宥めていた。だってママン死にそうな顔してるよ??

まあ、やだやだって喚く最推しも可愛いんですけどね??ごめんねお母さん。姉は心の栄養の方が大切です。

そしてこの貴重な時期を逃すまいと勝手にお母さんのスマホで写真を撮った。ロック?いやいや双子の誕生日だなんて、ママン分かりやすすぎですよ。心配です。

それにしても、早く自分のスマホが欲しくてしょうがない。弟たちの写真たくさん納めてアルバムを作りたい…。お母さん、名前が大きくなるまでデータは死守してください。絶対にデータ補償ありの有料クラウドサービスで大切に保管してね!サブスク費用は私がいつか必ず返すから!

「あつむもおさむもにこにこだね!」
「名前といっしょやからな!」
「おん!名前といっしょやったら、どこでもえーで!」
「ングゥ」

あーーーー、もう今日も推しが可愛すぎるーーーー誰か語れる人ほしいーーー!!

にこにこしている推しがかわいすぎて変な声でた。やばい、まって……天使に挟まれてる私って来世分の徳を使っているのでは??できるなら前々前世分の徳も使わせて貰っていいですか??





「名前はおれらのやで!」
「ぜったいおまえになんかやらん!」
「いやや!名前ちゃんとあそぶのうちやのに!ずっとやくそくしてたもん!」

保育園に着いて絵本を読んでいたらそんな声が外から聞こえてきた。侑も治も声が大きいからすぐに分かる。
まあね??大きくなくても最推しの声は聞き取れますけどね??

「しらんわ!おれらの名前とるな!」
「せや!あっちいけ!」
「うわああああん!ふたごがいじめるうううう」
「うっ!な、なくなや!!ひきょーやぞ!」

なんだかそんな声が聞こえてきた。あーあ、と思いながらぱらりと絵本をめくる。読んだことのない絵本が多くて私は双子や同じ年代の頃の子達よりも絵本を読むことが多いんだけど。

「名前ちゃん……!?治くんと侑くんが喧嘩してるよ……!?」
「? いつものことだからだいじょーぶだよ?」

そう言って首を傾げると先生が胸に手を当てた。
なんで心臓落ち着けてるの?? 先生も侑と治が推しなの?? よろしい、仲良くしましょう。

「うっ……ほんと美幼女……大丈夫じゃないよ……!?侑くんと治くん……ああ、泣いちゃった……」

びえ〜〜、と聞こえてきたのは3人分の声。結局3人泣くのか。感情高ぶって泣いちゃう推しとか可愛すぎない??と思いながら外に向かう。正直なところ、この3人が揉めて3人で泣くのは毎日発生するイベントになりつつある。まあそれだけ仲良しってことだよね!

「おさむ!あつむ!おんなのこなかしちゃだめだよ!」
「〜〜〜っ、だって!だってぇ……!」
「おれらの、おれらの名前とるんやもん〜〜〜!」

ウッ!!!!最推しの泣き顔とか可愛すぎる!!!!分かってた、分かってたけど!!
殺しに掛かってますね!?!?

「きーちゃんだいじょーぶ?」
「うん、名前ちゃんとあそびたいの……でも、おさむくんたちがだめっていうの。あそんでくれる?」
「うん!でもね、ちょっとまってね」

仲良しのきーちゃんの頭を撫でてぴいぴい泣く双子の元に行く。めそめそしてる最推しもかわいい〜〜〜!

「おさむ、あつむ、ごめんね。ふたりのことどなっちゃったりして。びっくりしたよね」
「うぅう〜」
「名前〜」
「おねえちゃんね、おさむもあつむも大好きだよ」

ぱあああ、と表情が輝いた。ま、眩しい…!まるでアイドルのような輝き……!流石未来のバレー界を引っ張っていくアイドルですね…… !!伊達にテレビで特集組まれてない!あのう、そのVいくらで買えますか??

「でもね、きーちゃんとはまえからやくそくしてたの。名前もたのしみだったから、かなしくなっちゃうなあ」

そう言うとしゅん、とあからさまに落ち込んだ。心を!!鬼にするのだ!!宮名前!!一ファンの前に!私は!姉!!

「だからね、きーちゃんとあそんだら、つぎはおさむとあつむのばんだよ!」
「いやや!いま!ねーちゃんとあそびた」
「じゅんばんだよ」
「でも」
「じゅんばんなの」
「だって」
「じゅんばん、ってわかる?」
「「……」」

だめです。将来ちやほやされて思い上がらないためにも教育は大事なのです。お母さんは双子と私のお世話もあるし、お家のことも考えなきゃいけないしで、大変だから、ここではお姉ちゃんの出番です。

かっこいい治と侑のためにも大事なので、姉は心を鬼にします。

「おへんじは?」
「「はい……」」

アイドルの世界、意外と体育会系だからね??
それに部活やるなら返事は大事だから。生意気って言われないように今のうちからやっていこうね。
でも叱ってばっかりも良くないのでちゃんと飴はあげましょう。

しょぼん、と俯いてしまった侑と治の小さな頭を撫でると、ぱっと頭を上げた。もう目はうるうるしていない。
そういう切り替え早いとこも可愛いすぎませんか??

「えらいえらい。おへんじできたからかえっておうちであそぼうね」
「! ほんま?」
「ほんならあとでぎゅーってしてや!」
「ングゥ……!」

心臓が……っ!!
にぱ、と笑った治と侑が可愛くて心臓が破裂するかと思った……っ!推しがもう、ほんとに……っ!可愛すぎる……っ!
もちろん家に帰ったらお姉ちゃんなんでもしてあげちゃうよおおおおお!!今すぐ!家に!帰りたい!

「双子が黙りよった……流石お姉ちゃんやな……!てゆーかお姉ちゃん、便利……!」

なにやら先生の方から邪な気配を感じたことは黙殺しよう。


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -