者共であえ、であえーっ!


04の風呂場で襲われることになった経緯


「っぁ〜〜沁みる〜〜〜心にしみる……」
「やっぱ日本人風呂だよなあ〜〜〜」

もわもわと湯気が立ち上る湯船に肩まで浸かる。ほどよい温度。ああ〜、極楽。ほんと風呂って最高。日本人に生まれてよかったって心から思う。隣で同じように肩まで浸かる悠仁も俺と同じように溶けた顔をしていた。

「「はあ……、きもち〜〜……」」

呪霊討伐で疲れ切った体の奥まで、じんわりと熱が広がっていくのが分かる。ズシンと重い目の奥に湯気が沁みる気がした。はあ〜〜マジで広い風呂最高〜〜。
ざぶん、といつも通り悠仁と一緒に肩まで浸かった。もともと広めに作ってある男湯だけど、今日は悠仁と2人しかいないからかさらに広く感じる。さいこ〜〜。だめだな、語彙死んでるせいで同じことしか言えない。

「あーー、やべ寝そう」
「寝落ちんなよ〜〜、今の俺じゃ悠仁みたいなゴリラ運べねーぞ……」
「んあ〜〜〜?あー、そっか、名前今……」

そこまで言った悠仁がピタリと止まった。風呂の縁に頭を乗せて目をつぶっていた悠仁がカッ、と目を開いて俺を見た。うお、なんだよ、すげえこえーんだけど!瞳孔開くなよ!

「…………は!?いやいや待てよ!そうじゃん!つーかなんで名前がいんの!?」
「あ〜〜?もうよくね〜〜?いいから風呂入らせてくれよ……」
「よくねえって!!女湯の方行ったらいいじゃん!?」
「風呂抜いてあったんだよ!なんでか知らねーけど!しょうがねーだろ!俺だって風呂に浸かりたい!」

ザバア!と水の中とは思えない動きで悠仁が俺から距離を取った。は??大袈裟か。つーか今まで気付いてなかったくせになにカマトトぶってんなよ。

それにな、疲れた体に効くのは風呂なんだよ。分かるか?日本人はお湯に浸かってこそ心身ともに癒されんだよ。
しかもおれはこんな筋肉バキバキぞ?お湯に浸かって筋肉ほぐさねーと明日が怖いんだよ。俺は筋肉に関しては夏油先生を信じている。だってあの漫画もビックリな腹筋は嘘つかねーもんよ。

「け、けどよ……なんつーかその、目のやり場に困るっつーか」

そう言って悠仁が頬を掻いた。どうやら赤いと思っていた頬はお湯だけのせいじゃないらしい。その証拠にさっきから悠仁の視線はチラチラと俺の忌まわしきおっぱいグレートキャニオンに向いている。いやお前今喉鳴らしたろ。ゴクリじゃねーんだわ。

しかしその反応。俺の中の悪戯心を育てるには十分だった。思わずにや、と笑みが溢れる。

「悠仁〜〜ぃ、オメーさては童貞だな??」
「どっ、はあ!?ば、バカにしてんじゃねえ!」
「よいよい……皆まで言うな」
「あっ!?バカにすんなよ!つーか今のそれすくなっぽくてスゲームカつく!」
「お前女子の体触ったことあんの?ないだろ?触る?今ならタダやぞ、ほれほれ」

そう言ってたゆん、と胸を揺らす。ぱしゃん、と小さく跳ねた水音に悠仁が大袈裟に体を揺らした。

おわかりだろうか。既に3日が経ってんだよ、こちとら。最初こそいろいろ珍しかったけど、今ではもはや慣れつつある存在感。ふざけたことに、あの2人に女の体というものを隅々まで理解させられたせいだ。ちくしょう!俺だってもう少し夢たかった!

そんなわけで俺の中の女体の神秘云々という幻想は儚く散った。しかしながら、俺にとっての幻想が消えただけで、その他もろもろ男にとっての幻想が消えたわけじゃない。ましてや、悠仁のような童貞にとっては未だ神秘の花園。現に悠仁の反応は最高に面白い。

フィジカルで負け、人徳で負け、呪力量でも負けている俺にとって、このマウントはまさに千載一遇のチャンス。俺は今日こそ悠仁に勝つ!

「わははは!わりーなチェリーには刺激が強」
「じゃあ触る」
「はえ?」

なんて??
ゆらり、とそれまで風呂の端で顔を赤くしていた悠仁が、ざぶざぶとお湯を掻き分けてこっちに来た。

でええええ!!!ばっか、おま!マジで!?はあ!?ありえねーんだけど!ねえ!!じょ、冗談だよな??だって俺と悠仁って親友だもんね??だからそんなことしないよね??
まてまてなんでお前目からハイライト消してんの!!こえーよばか!!

「まて!ほんと待って!!俺が悪かったから!!ごめんて!」
「いいよ、許さねえから」
「ほんとごめん!誠心誠意謝る!やめて!こっちこないで!」

謝るから!なんでもするから許して!!