IF/宮城選抜編01


※なんかよくわかんないけど来月から東京編入でご都合主義で代表呼ばれてます。いろいろ崩壊気味。



「はあ!?日向が!?」

体育館に響いた繋兄の言葉に皆が思わず動きを止めた。忠の予想に裏切られることなく、白鳥沢にいるらしい日向に体育館がざわつく。なにその行動力。西谷と田中は笑ってる場合じゃないって。鷲匠監督の怖さを知らないから…!

「あちゃー……ほんとその度胸どこに……」
「それな、苗字ちゃん……本当に行くなんてな……ひっ大地……!」
「日向……」

明日お説教されるだろうな、なんてことは簡単に想像ついた。きっと今頃蛍ちゃんあたりがバカじゃないの!?ってテンパっていることだろう。ちょっと見たい。

そもそも鷲匠監督に追い返される可能性だって十分にある。監督怒ると滅茶苦茶怖いし。白布とか名前呼ばれるだけでびくついてたからなあ。
そうは言っても、もうどうしようもない。行っちゃったもんはしょうがないし、私たちも私たちでやっていかないと。

そう、思っていたのに。

『あー……名前、おまえ、白鳥沢行く気あるか?』
「は?ないけど。……まさか……」
『その、まさかだ』

練習中、急に武ちゃんに腕を引かれて体育館から出された。繋兄から電話、と言われて替わると繋兄の切羽詰まった声。聞かされる白鳥沢でのやりとり。いや、聞きたくない、聞きたく、な…!


(はい、鷲匠先生としては…日向君はいても居なくても…ただ、その…代わりといいますか……苗字さんを寄越してほしいと)
(は……名前を!?あ、あいつもうそろそろ東京に行きますけど!?)
(だからだそうです。鷲匠監督は苗字さんのことご存知だそうで…烏野にマネージャーが複数居て支障が出ないはず、ということもご存知の上で、代わりにと……)
(〜〜っ!ちょ、っと相談させて頂いても……!?流石に私の一存では……!)


『つーわけだ』

回想シーンを含んで伝えられたそれに愕然とする。いや代わりにって!!代わりにって!!

「は!?なにそれどういう条件!?つーか知ってる繋兄!?そういうの人身御供っていうんですけど!!」
『いいから!頼む!日向が迷惑かけてる以上こっちがわがまま言う訳にいかねえんだよ!土日だけでいいから!』
「やだ!ぜったいやだああああ!!」






「ご無沙汰しています、鷲匠監督」

結局こうなるんだ。ホントに日向……!
なんで私なんだ。西谷とか田中で良くない……?来たがってましたよあの2人、と思うも目の前のこの人にそんなことを言えるわけもなく、お久しぶりです、と頭を下げた。

「ああ、よく来た苗字。早速だが、練習に混じって来い。恐らく物足りねえとは思うが」
「いえ、そんなことは……」
「時々牛島とやってるだろう、青城とも。入畑監督からもお前の実力は聞いてる。だから呼んだ。急ですまんな」

トントン拍子に進んでいく話に私が一番びっくりした。いや、だって。思ったよりも歓迎されている。鷲匠監督の強さこそ正義、という考えならパワーで劣る女子を混ぜないはずだ。

「わ、たしで大丈夫でしょうか、その、女子ですけど」
「強いに男女は関係ねえよ。それにお前は復帰が決まってんだろ」

それでか、と内心で納得した。監督のどうしても、という声で再び代表選考に招集された私は文字通りその座を掴んで来たわけだが。それにしても私のことを買いすぎではないだろうか。

「……まだ、呼ばれただけです。恩情で。私の実力じゃ」
「そう思ってるなら、お前もここで何かを見つけろ。……チャンスを無駄に出来るほど余裕はあるのか?」

はっとした。油断じゃないけど、どこかで安心していたかもしれない。そうだ、私は安心してる場合じゃない。こんなにも下から上がってくる才能がいる。大した才能のない私が生き残るためには、人より多くの努力を重ねるしかないのだ。足を止めたら、終わる。

「……ありません。色々勉強させて貰います。よろしくお願いします!」

頭を下げると、おう、という声。着いてこい、と言われてそのまま体育館に行くと、既に全員が整列していた。何人かの見知った顔。成る程、確かに県内でも指折りのメンツだ。

「―――というわけで、烏野高校より苗字さんが加わることになりました。U-18の代表選手の技術や即席チームでのコミュニケーション方法など、盗めるものは盗んでください」
「烏野高校2年、苗字名前です。来月から、東京の高校へ編入予定です。ポジションはウィングスパイカーです。……女でも腑抜けた練習も試合もするつもりないので、そこのところよろしくお願いします」

頭を下げると、何人かが訝しげに私を見た。知ってる人と知らない人達との反応の差がはっきりと別れた。対人パス始め、と指示があると、わらわら顔見知りが集まってきた。

「なっ!名前さん!」
「名前先輩……!」
「金田一くん、五色くん、久し振り。国見くんも」
「ドウモ。名前先輩なんでこんなところに」
「私が一番聞きたい……」
「名前さんとやんの久々っすね!俺すげー楽しみっす!」
「名前先輩!俺と対人パスやって下さい!」

顔見知りの面子と固まらないようにバラけろとの指示なのでごめんね、と言いながら百沢君と対人パスを組む。残念そうな面々。なんていうか、かわいいなあと思う。たぶん及川さんや牛若は1年の頃もこんな可愛くなかっただろうに。

そしてうちの1年の曲者具合にしみじみと大変だな、大地さん、と思う。だから蛍ちゃん。睨まない。そういうとこだってば。

そしてそれをコートの外からじっと見ている日向。ちょうどいいか。気持ちだけ先走っている日向は、もう少し自分と向き合ういい機会だ。見てなよ、とびし、と指を指すと日向が震えた。そう、それでいい。

無いなりにここまできた人間の力を見せてあげよう。



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -