憧憬の光を灯せ


綺麗に上げられたトスはびっくりするほど打ちやすくて、本当に苗字先輩はなんでも出来てほんとすげえ。しかもサーブもスパイクもめっちゃ上手くて、なんつーかマジで憧れる。いいなあ〜俺も上早く手くなりてえ〜。んで研磨たちと試合してえ〜。

「ほんと苗字はなんでも出来るな。天性のオールラウンダーってやつか?まあ、スパイカーが一番合ってると思うけど」
「かもなー、影山が天才セッターで西谷が天性のリベロで、苗字ちゃんは生粋のスパイカー。苗字ちゃんが男ならウチ結構強くね?」
「俺のポジションは…きっと苗字さんが努めてくれるよ…」
「うるせー!ネガティブ!!」

キャプテンたちが苗字先輩のプレーを見ながらそう言っていた。苗字先輩が男だったら…うっ、お、おれのポジションも危ういかも…苗字先輩が女の人でよかった…。
横で話を聞いていた山口が、汗を拭きながらわかる、俺もポジション危うい…。と呟いた。安心できるのノヤさんか月島か影山くらいじゃねえの?2人でそう言っていると、山口が苗字先輩を見ながら、でも、と言った。

「名前ちゃんは元々セッターですよ。いつの間にかアタッカーに転向してましたけど」
「えっ!?そうなの!?」
「マジか!」
「少なくとも僕とツッキーとでバレーしてたときは。僕もツッキーも、名前ちゃんのトスでスパイク決めてましたし」
「道理で…トスも上手いわけだ…」
「おら、いつまでもくっちゃべってねーでさっさと入れ!」

えっ!?元々苗字先輩ってスパイカーじゃなかったの!?つーか、ポジション転向ってそんなに普通なの!?まあ、俺はミドルブロッカー以外に考えてねえけど!




「え?なんで転向したかって?」

休憩になると、3年はじめ色んな人たちが私に詰め寄ってきた。なんでも、私がセッターからウィングスパイカーにコンバートしたことを忠から聞いたらしい。
別に隠すような話でもないし、よくあることだと思ってたけど。きちんとした指導者が居なかった烏野ではコンバートはなかったらしい。なるほど、じゃあ確かに珍しいかも。

「なんでセッターじゃだめなんすか!セッターかっこいいじゃないっすか!」
「は!?何言ってんだよ!アタッカーだろ!そこは!!」
「うるせえお前はミドルブロッカーならもう少しブロック上手くなれヘタクソ!!」

ドドド、と勢いよく影山と日向が詰め寄ってきた。特に影山は大騒ぎだ。まあ、影山は生粋のセッターだしセッターのポジション好きだろうから、特になんだろうけど。それにしてもすごい剣幕だ。恐怖を感じるよ…。

「最初はセッターとして東京に行ったんだけど、同じタイミングで入学した子の方が凄い伸びていってさ。あんまりスタメンにも入れなくなったの。だから、ポジションの転向を薦められたんだけど…」

そう、私の相方であるなっちゃんの伸びが凄まじかった。従兄弟もバレーをやっていてものすごく上手いセッターで、時々ケンカしながらも教わっていることもあってメキメキ伸びていった。

そうなると同じポジションの私も出場機会が減ってくる。このままだと、と思っていた矢先に、監督からポジション変更を薦められた。俺にも決めかねるから好きなの選べ、って言われて流石に驚いたよね。てっきり決まってると思ってたし。

「どこがいい、って聞かれたんだよ…。パワーも乗ってるし、読みが良いからリベロとか、あとはオポも薦められたけど…」
「じゃあなんでリベロやんなかったんだよ!?一番かっけえだろリベロ!」
「そこはアタッカーだろノヤっさん!流石名前はわかってんな!!」
「リベロを馬鹿にする奴は許さん!!うおおあああ!!」
「馬鹿にしてねえだろうがあああ」
「お前らうるさい!!」

また田中と西谷が騒ぎ出した。いつものお決まりのパターンだ。まあ、リベロって出した瞬間に食いついてくるとは思ったけど。少なくとも私はスパイカーを選んで間違いなかったと思ったし…まあ、それで嫌な思い出もあるけど…。

「なんでスパイカーにしたんだ?」
「…うーん、内緒」
「なんでっすか!!セッターに戻らないんすか!?」

それでも噛みついてくる影山。ほんとセッター好きね、君。と笑ってしまった。必死かよ。
確かに今ならセッターに戻らない理由もない。でも、多分ここから先、私はアタッカーのままだと思う。昔、監督に聞かれたとき、頭に浮かんだ2人。近づきたいと、ずっと思っていたそれ。

「ああいう風になりたいって思ったからかもね」
「???」

ふふ、と笑った。首を傾げる影山と日向。凸凹コンビって言われているけど、いつか高校最強コンビとか言われたらいいのに。私の知っている最高のコンビを抜かすには、もう少し掛かるかもしれないけど。




「っくしょい!」
「岩ちゃん風邪〜?馬鹿は風邪引かないって嘘だったんだねえ〜ギャッ」
「風邪なんか引くわけねえだろボケ!お前みたいな貧相なやつと一緒にすんな!!」


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