労基だけは味方だと信じています。

さ、さすがプラスウルトラ……なんていう緑谷の声は聞こえない。特別扱いされると爆豪が睨み付けてくるから本当に嫌だ。複数教師相手の試験はもはや地雷案件である。爆豪だけに。笑えない。
しかもだ、一部試験の内容を変更する?時間が掛かれば教師を追加するだと……!

鬼かこの人。場所が場所ならパワハラで訴えられてるぞ……!労基だ……労基に駆け込んでやる……!それか誰か弁護士を呼んでくれ……!

内心でそう糾弾しても現状に変化はない。最後に回された試験までに対策を立てようと考え込むも、誰が試験官か不明。情報が圧倒的に足りない。詰んでいる。ぶつぶつ呟いてアスファルトを分解して地面に作戦を描く私を、耳郎が気の毒そうに見ていた。代わってくれ。

普通に考えたらバランスを考えて遠・中距離の支援、包囲型と近接戦闘で構成してくるはずだ。特に純粋な肉体強化系と相性の悪い私はおそらくこの対応力を見られると考えられる。おそらく1人目はミッドナイト、イレイザーヘッド、13号、エクトプラズム……。

ダメだ、予測幅が多すぎる。オールマイトはもう予測から外した。あれが出てきた時点でもはや負けは確定である。しかし諦めるわけにもいかない。全ては引退後の安泰な生活のため……!ちょっと校長、覗かないでください。これは企業秘密です。

「名前大丈夫!?目ぇ死んでるよ!」
「大丈夫か、苗字、なんかやべーことになってんじゃねえか!」
「抗議した方がいいんじゃねーか!?」

三奈や瀬呂、峰田があまりの仕打ちを哀れに思ったのか声を掛けてきてくれた。ありがとう…。同期の助けは心の支えになる……。しかしながら抗議したとして変わる可能性の方が少ない。上層部の決定には歯を食いしばってでも従わなければならない。それがサラリーマンの宿命である……!

「抗議したところで校長がいるなら変わんないから、受けるよ……大人しく……みんな、骨は拾ってくれ」
「死ぬな苗字ー!」
「名前さん、諦めるのは早いですわ!」
「俺らが勝ってくるからな!しっかりセメントス先生の対策立てておけよ!」

頼もしい砂藤の言葉に頷く。できるだけ引き延ばしてくれよ、と心から祈った。マジで。
正直連携もなにもないうえ、誰がくるかわからない。幅の広い作戦を立てるよりも今のうちに詳細な個性を把握する方が先決だ。こんな時役に立つ歩くヒーロー図鑑の緑谷が居てくれてよかった。

モニタールームへ歩を入ると、緑谷とお茶子が2人。他は作戦確認中らしい。まあ、君らの相方はね。アレだから。

「名前ちゃん、なんや大変なことになっとるね……」
「まあ、ロボじゃない可能性が高いことは分かってたけどまさか1人とは……色々教えてくれない?緑谷、そこまで先生たちの個性詳しくなくて」
「予想してたの……!?あ、うん、僕でよければなんでも聞いて!」

あまり接点のない先生達の個性を聞いていくとすらすら答える緑谷。もう怖いわいっそ。モニターでは1回戦目のセメントス先生と切島・砂藤ペアの試験が開始された。

組み合わせを聞いた時にも思ったけど、相性の悪い相手を選んで組み合わせてるな。たぶん相澤先生か校長の発案だろう。歪んでそうだもんな。おのれ校長……!

さて第1回戦。わかりやすい脳筋ペアである。作戦立案の隙を与えないよう1回戦に据えてる辺りなお性質が悪い。はっきり言おう、相性悪すぎて瞬殺である。君らの雄姿はしかと見届けた。ご愁傷様。





上鳴・芦戸戦まで鑑賞してモニタールームを離れ、外に出た。先生達のなんとなくの傾向は分かった。とにかく勝ち筋は残されているようなので、数的不利にならない間の短期決戦。あとはどこで、どの力を使って逃げ切るか、だ。
指折り作戦候補を地面に書き出していると、まさかの爆豪と出くわした。何をしてるかと思えば……緑谷とはいいんかい。

びき、と額に浮かんだ血管と吊り上がった目。ここ最近一番ヤバい表情の爆豪である。中途半端に手を出したら噛みつかれるな、と思ってスムーズにスルーしたつもりだったんだがダメらしい。

「シカトか苗字テメェ……!良いご身分だなァ!1人だけ特別扱いか!さぞ鼻が高けえだろうな!」
「ちょっと黙ってて作戦会議中」

分かりやすく忙しい、と言えば、がりがりと地面に書く作戦を爆豪が覗き込んできた。勝ち筋と逃げの一手に制限された私は、その教師が当たっても少しでも有利に運べる地の利が必要だ。全然決まらないですけど!

「あー、やっぱ遮蔽物少ないとしんどいな……」

そう呟くと向かいに爆豪がしゃがんだ。爆豪が地面を指さす。え、爆破されるやつ?流石に人でなしすぎる。

「馬鹿か。上からも警戒する必要があんだろうが。開放地で戦った方が初手は有利だろ、タイマン張れや」
「オールマイトなら瞬殺。開放地だとスナイプ先生の弾幕に耐えらんなくない?森に紛れて気配消した方がベター?」
「テメエの個性の場合初動に時間かかっからなァ……。時間稼ぎもできる森の淵を移動する方がいいだろ。開放地突っ切ったらイレイザーヘッドやエクトプラズムに捕まった時逃げらんねえ」
「なるほど、スナイプ、セメントス、プレゼントマイク、ミッドナイト封じは可能……うん、今までの中で一番いいかも、ありがとう爆豪」

普通にめっちゃ作戦会議した。
嘘、さっきまでガチギレだったじゃん。爆豪も気づいたのか、はっと我に返ってまた目尻を直角に釣り上げた。

「お、俺がここまでお膳立てしてやっとんだ!補習なんざになったら苗字てめえマジでぶち殺すぞァ!」

そう言って怒鳴って足早に去って行った爆豪を見送る。

「…………え、なに?激励?」

相変わらず素直じゃない損な男である。

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