1時間ほどの昼休憩を挟めば、いよいよ決勝である。
仲良い面子でなんとなく固まってランチラッシュのごはんを堪能する。やはりというか轟くんの姿は見えない。まあ、あんな話した後にみんな仲良くランチなんかできないだろう。
年齢にしては随分落ち着いた印象だと思っていたら背景がとんでもなくシビアである。よく性格ひん曲がらなかったな、と感心するしかない。元からある素直さと真面目さがいい意味で影響したんだろう。よかった。
とはいえ、彼の家庭の問題に口出しするわけにもいかない。これでも元は分別のある大人である。ドラマの中なら露しらず、保護される立場で未成年の私たちに出来ることは少ない。法律的にも責任能力的にも。
まあ、ヒーロー志望ばかりのこのクラスメイトのことだ。特に緑谷くんは天性のお節介気質。どうにかしてくれるだろう。緑谷くんに話したのが運のつきだな、轟少年。私は優しい言葉なんか掛けてやらないからな!面倒事はごめんだ。
「あ」
「どうしましたの?名前さん」
「控え室に忘れものしてきたみたい……ちょっと取ってくるね」
「分かりましたわ、場所を移るようでしたらご連絡しますわ」
「ありがとー」
私と入れ替わるタイミングで、上鳴くんと峰田がモモに話し掛けていたのだが、なんだろうか。変な話じゃなければいいんだが。嫌な予感を感じつつ、私は控え室のロッカーへ向かった。
概ね全員スタジアムにいるか、昼食中なのか、控え室へ続く廊下で誰かに会うことはなかった。誰もいない廊下は、上の熱気が嘘のように消えていて少し不安になるほどだった。
前半で十分にアピールできたので、午後からは手抜いていくかな、と振り返る。爆豪くんのように完膚なきまで一位を狙っている訳でもないので、それなりにいいとこから指名頂ければいいのである。
人生楽が一番。ここまででそれなりの結果が出せているのであれば、問題はないだろう。
控え室には案の定誰もおらず、スマホだけがベンチの上で点滅していた。
「あった、スマホ―――ぐッ!!!」
ぞわり、と何かが背中を駆け抜けたと同時に壁に叩きつけられた。一体何が起きたのか分からない。何だ、誰だ。でもあの悪寒は。
打ち付けた額から濡れた感触が伝わってくる。出血したか、内心で舌打ちをして目を開けた。
目の前のものを見たとき、乾いた声すら出て来なかった。
何故こいつらがここにいる?
これだけヒーローを集めた会場でどうやって?
私が狙いか?それとも他の誰かか?
まさか、また、オールマイトか?
「――んで、ここ、に……!」
出現と同時に叩きつけられたらしい。突然出てきたのも、気配がなかったのも当然だ。ワープ能力は障害物など関係ない。
「死柄木弔、早めに撤退しましょう。すぐヒーローが駆けつけてくる」
「待てよ、黒霧。少し楽しもうぜ、なあ、苗字名前」
片手で容易く首を拘束されている。体は壁に縫い付けられたように動くことが出来ない。
ぼろぼろになった相澤先生の腕がやけに鮮明に思い出せた。