ケモノ・イン・トーキョー


「なんていうかさ、似合うね傑」
「自分で言うのもなんだけど私もそう思うよ」

だよねえ、なんて2人で笑う。某激安の殿堂で衝動買いした日本を代表する夏の作業着。羽織って、紐で結ぶだけのそれは浴衣よりも大分簡易的なのに、ハーフパンツだからか涼しく感じる。
連日最高気温33℃を超える東京は殺人的な暑さで、高専の黒い制服を身に纏う私たちを殺しにかかっていた。

暑さで頭がやられていた、とも言える。どうにかして暑さから逃げたくて、幸いなことにちょっと難しい任務を終えて小金持ちになっていた私は、道沿いにぶら下げられたそれに目を惹かれて思わず取ってしまった。それがすべての始まりだった。

むくむくと入道雲みたいに立ち上る好奇心に当然勝てるはずもなく、結局私は気付けば袋を抱えていた。それも2つ。もちろん、私と傑用に。
ペアルックと言われればなんだか気恥ずかしいけど、ただ単にSとXLが揃っていたのがこれしかなかっただけだ。ついでに言えば結構柄が気に入っている。なんて言う色かは知らないけれど、傑に似合う渋めの色だ。

部屋に帰って傑に渡せば案外ノリ気で着てくれた。傑の部屋でペアルック。なんか面白い。ふふ、と込みあがって来る笑いを抑えきれなかった。自分でもなにがそんなに楽しいのかわからないけど、どうしてかこみ上げてくる。
機嫌良く笑い始めた私を傑が見逃すはずもななく、傑は目をふわりと緩めた。

「随分楽しそうだね」
「べつに?そうでもないよ」
「嘘つき。ねえ、私は、名前ともっと楽しいことしたいんだけど」

そう言って傑は私に見せつけるように横で結ばれた甚平の紐を指先でくるくる弄んだ。私よりも随分太い人差し指と親指が少しずつだらんと垂れた紐を引っ張っていく。抵抗すれば容易に止まる速度だった。

さっきの楽しさはどこかへ、逃げ水のように消えていってしまった。なんだか無性に腹が立つ。試されている。この男は私に決定権を委ねて、全部私に責任を負わせようとしているのだ。流石五条と並んで人間性がドクズを極めているだけある。

しかし残念ながら、私も意外なことに乗り気なのである。

それまでベッドに腰掛けていた傑に後ろから抱えられているばかりだったけれど、その向きをくるりと変える。傑と向き合う形になった。そのまま首の後ろ、お団子に結われたゴムに手を伸ばす。ゆっくりと傑が紐解く速度と同じ速度でゴムを引っ張る。

ごくり、と目の前の太い喉が鳴って、涼やかな瞳に熱が灯った。さあ、我慢比べといこうか。


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