澪様リクエスト小説
キルクラ祭りへのご参加ありがとうございました!





※探偵パロ
※キルアとクラピーがお互いの情報を知らない設定です



「ねぇキルア、さっきから何見てるの?」

双眼鏡から目を離さないキルアのことが不思議で
ゴンは首をかしげていた。

「ん?何って、人探しだろ?」

「うーん…」


確かにそうだけど。
標的を探すために、キルアと自分は高いビルの屋上から双眼鏡を駆使しているのだけれど。


「でもキルア、さっきから全然動かしてないよね?目線」


キルアの双眼鏡の先を辿ってみても、標的らしき人物は写っていないのに…
人を探さない人探しは果たして人探しと言えるのだろうか?


……どう頑張っても言えないだろう。


ゴンは大きなため息をついて
よそ見を続けるパートナーの頭をぺちんと叩いた。


「痛、何すんだよ!」

「何すんだよ、じゃないよ!!!」


バシバシと
キルアの脳天にチョップが炸裂する。


「さっきからよそ見ばっかしてさ、ちゃんと仕事する気あんの?今日中に目標を見つけられなかったら俺たちどうなると思ってんのさ」

清々しい笑顔(瞳は一切笑っていない)で青筋を浮かべたボスの姿が蘇る。
噂によれば怒ったボスの制裁は、地上200mからのバンジージャンプに対する恐ろしさに値するらしい。

まともに仕事をしない同僚のせいでとばっちりをうけるだなんて…
今すぐこいつを巷で有名な変態ショタコン奇術師に売り飛ばしてやりたい。



「全く、いい加減にしてよね。キルアは腕はいいくせにすぐサボるんだから。相棒の身にもなってもらわなきゃ……って」


聞いてんの??


そんな言葉を言う気にもなれなかった。

キルアは頬を膨らませるゴンには目もくれず
双眼鏡を例の方向に向けたまま、相変わらず二つのレンズを食い入るように見つめている。


「なんだよもう、そんなにカッカすんなよな」

いらついた声で話すゴンとは裏腹に
キルアの口調は何の悪びれもなく飄々としていて


「可愛い人がいるんだよ、何歳くらいかな?あのおねーさん」

「……」

「うーん、そこまで年は離れてなさそう。成人してはいないよな。せいぜい17、18っていったところかも」

「……」

「ああでも向かいに座ってるグラサン彼氏かな?ちぇっ、おっさんじゃん。あーあ、年上趣味だったら傷つくっつーの」

「……」

「なぁゴン、どうにかして近づけない?お前こういうの得意だろ?なんとかあのねーちゃんに探り入れてさ、…あれ、ゴン?」

「……」


さっきから何も言わないゴンは
プルプルと肩を震わせ湯気を出しそうな勢いで顔を真っ赤にしていて

「あの…ゴン…さん?」


なんかやばい。
言葉で説明できないけどなんかやばい。いや、マジでやばい。


よく分からないけどゴンがブチギレている。



「ギーールーーーーアーーーーーー!!!!!」



自慢の体術を使って逃げるまもなく、キルアはゴンに素早く拘束され
怒りで我を忘れたゴンは容赦なくキルアに猛攻撃をしかけていた。






ただやみくもにほっぺたを引っ張るというなんとも可愛らしい方法で。






しかしながら


「いいいいい痛い痛い痛いいいい!!」

ついこの前敏腕ぞろいの腕相撲大会で驚異の150人抜きを果たしたその腕力である。
動作は可愛らしくても痛い。とてつもなく痛い。


「わわわわはっははらやめろほ(分かったからやめろよ)、おれはわるはっははら(俺が悪かったから)」

「何言ってんだよ、この前だってそう言ったくせに結局聞かないじゃん!」


キルアの必死の訴えを無視して
ゴンはキルアの頬を更に伸ばしていた。

激痛のピークを超え、だんだんと痛みの感覚がなくなってきて
そろそろ本当にやばいんじゃないかとキルアが涙目になった頃


「あ」


ゴンの指がふいに離れてキルアの体が解放された。

「いでっ」

バランスを崩したキルアが床にバタリと倒れたのだが
ゴンは全く気にしていないようだ。


慌てて双眼鏡をのぞき込み
手元の資料をわしゃしゃとめくっていた。


「キルア!あの人だよ!!た、ターゲットだよ!!!」


痛む頬をさすりながらようやく起き上がったキルアは双眼鏡を構え
ゴンの指差す方向を覗き見る。


「あ、マジだ」


依頼主から預かった写真の人物と全く同じ顔の金髪の男が
眼下のカフェのテラスに一人で座り、優雅にカップを傾けていた。


「間違いないよキルア!あれが賄賂常習犯の悪徳企業の社長、パリスヒルト…間違えた。パリストンだよ!!」

興奮気味に喚くゴンを尻目に
キルアは別の方向を見ていた。


逃げ足速いパリスとやらが座っていた席の反対側の席
先ほどからずっと食い入るように見つめていた席


淡い水色のワンピースを着た、金髪ロングヘアーの可愛いお姉さんが座っている席。


「……」


目線の先の人物
実は初対面ではないのだ。


一言言葉を交わしただけだから、相手は覚えていないだろうけど。


(もしかして…)


キルアの脳裏に、とある推測が浮かぶ。


「あっ!ターゲットが動いた!!は、早く追うよ!」


ドタバタと忙しなく荷物を持って、ゴンが階段に向けて走り出す。
動き出したターゲットとタイミングを同じくして、グラサンと金髪が席を立つ。


「なるほど」


推測が確信に変わって、同時に嬉しさがこみ上げた。


「キルアーーー!早く行かないと逃げちゃうよーー!!」


軽い足取りで
キルアもゴンの後に続く。




(やっぱりね)

ゴンに続いて階段を駆け下りながら
キルアは違うことを考えていた。



カップルを「装って」自然に空気に溶け込みながらも
時折標的をちらちらと監視していた視線、立ち上がりの絶妙なタイミング。



あの二人は同業者だったのだ。



「ゴン、俺らの他にターゲットを追ってる奴がいるぜ。現在進行形で」


「え!!」


こうしちゃいられない。
手柄を横取りされる前に、自分たちが捕らえなければ。


「よーし、その人たちと競争だね!なんだかわくわくしてきたよ」

「ああ」


あれほど完璧な服装でカップルを装っていたということは
あれは女装だったのだろうか?


前にあの人と会った時は別の格好をしていて髪も短かった。
この仕事上、変装はよくあることだけど女装はあまりないなぁ…

でも。
あの人が男であろうと女であろうとどっちだっていい。


大事なのはそんなことじゃなくて



「うわっキルア?」

キルアがゴンを追い越して先に駆け下りる。

「ま、待ってよキルア」

ゴンも負けじと走るスピードを速くした。



(早く…)


同業者ならば
同じターゲットを追いかけているのならば


(早く)


嫌が応でも接触できる。



(早く会いたいんだよ!!!!)




大事なのはこの気持ち。
自分はあの人のことが好きだって。




夢にまで見たことが現実になる数分前

キルアは高鳴る鼓動を抑えきれないままに
階段を下り終えると両手で勢いよく扉を開け

建物の外へと飛び出した。


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