ーゲーム売り場にてー


ク「イルミ、それは何だ?」


イ「相性占いだって。君の誕生日っていつ?血液型は?」


ク「4月4日でAB型だぞ」


イ「ピッ」


機械にクラピカと自分の生年月日と血液型を入力していく。


『二人の相性は 92% です』


イ「92%だって。案外高いんだね」


ク(なんか…照れるではないか//)かぁぁっ


イ「キル、ここに置いてあるやつほとんど持ってるよ」


ク「そうか…」しょぼん


イ「あ、店頭にあった格闘技のやつ。あれって昨日発売されたやつじゃない?試供品があるけど」


ク「おお!早速やってみるぞ!」



ー30分後ー


クラピカとイルミは30分もの間
新発売の格闘技ゲームの試供品で対戦していた。

もちろん店側としてはとんだ迷惑な行為である。


ク「うりゃっ」ピコピコ


イ「(終始無表情)」ピコピコ


ク「また負けた….お前は何でそんなに強いのだ」


イ「君が弱すぎるんだよ。10回やって一回も勝てないってある意味すごいね」


ク「もう一回付き合ってもらうのだよっ!」


イ「負けず嫌いなんだね」



ーさらに10分後ー


ク「今日は2回も怒られたのだ…」どよーん


イ「店舗責任者って人、強そうだったね。念能力者かな」


結局クラピカは試供品のゲームで一度もイルミに勝利することはできず

40分近くもの間ゲームを占領していた二人は「迷惑な客」として断定され

奥から出てきた店舗責任者という恐ろしい顔をしたおじさんにさんざん怒られた挙句に、店から追い出されてしまった。


ク「しかしあのゲーム…なかなか面白かったな。キルアはまだ手にしていないのか?」


イ「うん。昨日発売だし、キルは昨日ずっと家にいたから。今日はゴンと一緒にいるはずだよ(気に入らないけど)」


ク「ゴンのところで祝ってやる予定でな。きっと私待ちだ…急いでやらねば…」


若干慌てるクラピカ


イ「あのゲームでいいんじゃない?」


ク「そう思うのだが先ほど追い出されたばかりだし、戻りづらいのだよ…」


イ「あ、なら心配いらないよ」スッ


ク「?」

どういうトリックを使ったのか
針を刺さずしてイルミの顔がみるみる変わっていく

あっという間にヒソカの姿なった。


ク「おお!針なしでも変身できるのか!そして何故ヒソカなのだ?」


イ「なんとなく」




ー数分後ー


イ「はい。買ってきたよ」


クラピカに紙袋を手渡すイルミ


ク「すまないな。恩に着るぞ」


紙袋の中身を確認し
クラピカは目を輝かせていた。


ク「うわー♪…キルアが喜んでくれるといいのだが。イルミ、礼を言うぞ!」


紙袋を大事そうに抱えて
心底嬉しそうに笑顔を浮かべているクラピカを


イルミは無表情のまま、
じっと見つめていた。



イ「ねぇ」



やがて口を開く。



ク「ん?何だ?」


クラピカは不思議そうに
イルミに顔を向けた。


二人を包んでいた和やかな空気が
一瞬にして変わったようだった。



イ「キルは君のこと、特に気に入っているようだけど。君にとってキルは?特別な存在なの?」



ク「特別?」



放たれたその言葉に
クラピカは少しの間考え込む。


自分にとってキルアとは
大事な大事な仲間であり


その大事な仲間というのは


特別という言葉では表しきれないほど
自分の中を占めている。



クラピカの口元が自然と緩んだ。



イルミはやはり、それを無表情のままに見つめていた。



ク「ああそうだな。あいつは特別だ。失いたくはないぞ」


イ「それってゴンとかサングラスの男とか。彼らと比べても特別って意味?」



イルミの疑問に
クラピカは再び考え込む。



少しの間が空いた。



ク「うーむ…」


クラピカは尚も考え込む。
イルミは黙ってクラピカの言葉を待っていた。



ゴンもキルアもレオリオも

かけがえのない大事な仲間であり、特別な存在だ。


彼らに順位をつけることなんて到底できはしない。



ク(でも…)


キルアのことをじっくりと考えてみると


クロロを見つけると容赦なく吹っ飛ばしていたり

クラピカがゴンやレオリオと長く喋っていると何故かむくれていたり


いつもなにかと自分を気にかけてくれる…

そんな姿ばかりが浮かんでくる。



ク「ふふっ…」


自然と笑い声が口から飛び出る。


まじまじと自分を見つめたままのイルミに顔を向け、しっかりと目を合わせた。


ク「特別、なのかもしれないな」



イ「………」



顎に手をあてて、今度はイルミが考え込んだ。



なんとなく
一瞬だけ、キルアが羨ましいと思った自分がいた気がした。




イ「うーん、キルが仲間を持つことを快く思えないのは変わりないんだけどさ。キルから仲間を取り上げるってことは、君からも特別な存在を取り上げるってことなんだよね」


ク「??」


イ「気が変わった。いいよ。君だけは特別に、キルの仲間だって認めてあげる」



ク「本当か?」




イ「うん。何となくだけどキルが君を気にいる理由、わかった気がするから。」




イルミの言葉に
クラピカはきょとんとして言葉を失う。


やがて顔が火照りだした。


イ「?」


ク(き、気にいるってその…いや、な、なんだいきなり…!イルミがそんなことを言うのは意外すぎるし…なんかその……よく分からないか妙に照れるではないか//)かぁぁぁ


イ「なんで赤くなってんの?」


クラピカは両頬を押さえて
赤くなったまま俯いている。

イルミは携帯を取り出した。


イ「カシャッ」


シャッター音が鳴ったにも関わらず
赤くなっているクラピカは気づいていないようだった。


イ(なかなかレアな写真。クロロ、チップくれそう)ピッ


クロロへ送るためのメール画面を開く。
送信ボタンを押そうとして


ふと、指が止まった。


イ(…なんとなく、クロロに見せるの嫌だなぁ)


しばらく指が彷徨ったあと
ボタンを押した。


中止しましたという文字が表示され


数少ない画像フォルダの中の写真に
クロロも知らないクラピカの顔が追加されていた。



ーゴン宅前にてー


ク「おおっ、やはりみんな集まっているようだぞ!」


イ「玄関前で三人してたむろしてるけど、何してるんだろうね」



キルア「クラピカ!やっと来た」


クラピカの姿を見つけたキルアが
笑顔で走って来た。


クラピカも走りだす。


イ(……嬉しそう)


キルアの元へと駆け出したクラピカを見て
イルミの表情は崩れることはなかったが


ちくりと、
わずかに心が痛んだ気がした。


感情的になることが滅多にないイルミには
これがどんな感情なのかも、この感情に一体なんの理由があるのかも



全く分からない。




ク「キルア、待たせたな」


キ「本当おっせーよ。待ちくたびれちゃったぜ?」


ク「ふふ、悪かったな。プレゼントを選ぶのに多少手間取ってしまってな」


ガサガサと音を立てながら
持っていた紙袋をキルアに差し出す。





ク「キルア、誕生日おめでとう!」にこっ




キルアの顔が
ぱあっと明るくなった。


キ「ありがとなっ!これ、見てみていい?」


ク「もちろんだぞ。気に入ってもらえるか少し不安だけどな…」


キルアは紙袋の中身を確認する。


キ「うわぁー!これって昨日発売のやつじゃん!欲しかったんだー♪超嬉しいよ!」


ク「そうか?良かった…」


ほっと胸をなでおろす。
キルアは満面の笑みを浮かべていた。


キ「ふふーん。クラピカから貰ったものは何だって嬉しいに決まってるだろ!当たり前じゃん!……あれ?」


クラピカ越しに
歩いて来たイルミを発見する。


イ「や、キル。半日ぶり」


キ「イル兄!?」


イルミは何かを取り出した。


イ「朝も言ったけど誕生日おめでとうキル。はい、毒は塗ってないから安心するんだよ」


針まみれの熊のぬいぐるみを手渡す。


キ「あ、ありがとうイル兄!…(なにこの熊超怖い)」


引きつりながらも満面の笑顔をイルミに向ける。



ク「実はイルミとばったり会ってな、プレゼントを選ぶのを手伝ってもらっていたのだよ」


キ「そうなの?何かされてない?大丈夫だった?」


本気で心配そうな表情を浮かべて
クラピカをぺたぺたと触るキルア。


ク「大丈夫だ。何もされていないぞ!強いて言えば格闘技でボコボコにされたくらいだな!」


キ「 え" 」


イ「ゲームの中でね」


キ「あ…なんだ…」ほっ


ク「それよりゴンとレオリオは先ほどから何をしているのだ?」


キ「ああ、猫がいるんだよ」


ク「猫?」


キ「うん、迷い猫でさ。見に来いよっ」ぐいっ


イ(あ、ちゃっかり手繋いでる。ま、キルだからいいや。許そう)


そう思ったのはずなのに
何故だか先ほど感じたわずかな痛みが押し寄せる。


イ(あれ?手を引いているのはキルなのに…変だな)


自分がキルアに苛立ちを覚えることなんてあり得ないことなのに。


不思議に思って、しばらく首を傾げていた。




ーゴン宅の真ん前ー


レオリオ「おお、遅かったじゃねえか」


ゴン「クラピカ!」


ク「ああ、二人とも待たせたな」


しゃがんでいるゴンの腕の中には
灰色の小さな子猫が丸くなって眠っていた。


ク「…可愛いな」ぽわぁん


キ「ねー」ぽわぁん


レ「なー」ぽわぁん


少し遅れてイルミがやって来た。


イ「あ、猫だ」


ゴ「あっ!こんにちはイルミさん」


イ「もう夕方だからもうすぐこんばんはだけどね」


ゴ「う、うん…」


キ「弱ってるんだからなっ。針刺して形変えようとか考えるなよ!」


レ「その考えはさすがにないだろ」


イ「キルがそう言うならやらないよ」


レ「あるんかい」


ク「それにしても動物は癒されるな」


クラピカはしゃがんでゴンの腕の中で眠っている猫の喉元を撫でていた。

猫はごろごろと音を鳴らして
気持ち良さそうに熟睡している。


キ「いいなーお前らは怖がられなくて」


ク「お前は触らないのか?」


キ「俺が触れようとすると怖がって震えるんだよ。多分俺が無意識に発している静電気に反応してるんだろうけど」


キルアは淋しそうに口を尖らせた。
クラピカは立ち上がる。


ク「そういう時は頭を撫でてやるといいぞ」


キ「頭?」


ク「ああ。最初は警戒していても、しきりに頭を撫でてやればどんな凶悪な動物も懐くようになるとテレビでムツゴロウさんも言っていたぞ!」


イ(頭…懐く…)


イルミは相変わらず無表情で
4人を見つめていた。


ゴ「そうだよキルア。撫でてみなよ!」


ひょいっ
ゴンは立ち上がって猫をキルアの方へと差し出した。


キルアは恐る恐る手を伸ばす。


ぽん。
控えめに猫の頭に手を乗せる。


猫は最初だけびくりとしたが
撫でてやるうちに大人しくなり


幸せそうに目を閉じていた。


レ「おお!できたじゃねぇか」


キルアの表情も次第に柔らかくなっていく。


ク「ふふ、良かったな。」


その微笑ましい光景を
イルミは黙って見つめていた。


イ「………」


やがてクラピカの後ろへと
さりげなく移動する。



そして、



ぽん。



ク「?」



いきなりクラピカの頭に手を乗せた。



キ「 」


ゴ「 」


レ「 」



イ「…」なでなで


手のひらを左右に動かして
クラピカの頭を撫でる(無表情)。



ゴンキルレオ「「「えええええええーー!!!」」」



意外すぎるイルミの行動に驚愕を隠せない。


イ(人間も頭を撫でられれば懐くのかな?懐くよね、人間だって動物なんだし)


一方のクラピカは


ク「」


ク「な…ななななな///」かぁぁぁぁあっ


顔を真っ赤にして固まっていた。


キ「はっ!」


それを見たキルアが即座にイルミの腕を掴む。


キ「イルミてめえ…離せっ!今すぐ離せー!!」


殺気を丸出しにして
渾身の力でイルミを引っ張る。


ゴ「わわ、落ち着いてよキルア。指が鋭く変形してるし火花が散ってるよっ」汗


レ「そ、そうだぞ。実の兄貴の腕を折る気かっ」汗


キ「イルミはこんくらいじゃ死なねーよ!それよりクラピカから離れろよ馬鹿兄貴(涙目)!!」


尚もイルミを引き剥がそうとするが
イルミは微動だにしない。


クラピカも赤くなって固まったまま動かない。


イ「キルも撫でて欲しいの?」



キ「………イルミてんめぇぇぇえーー(殺)!」ビリビリッ



ゴン・レオ「「キルアー…落ち着いてくれー」」涙




ー後日ー


キ「ねぇクラピカ」


ク「ん?なんだ?」


キ「俺、この前イル兄の携帯見ちゃったんだけどさ」


ク「お前が自分から見るだなんて珍しいな」


キ「いや、偶然待ち受け画面だけ見えちゃっただけだけど。カルトから聞いた話だとイルミの待ち受けって長い間俺だったらしいんだけど」


ク「うん…そうなのか…」


キ「俺が見た時はクラピカの写真だったんだよね」


ク「えっ、わ、私か?」


キ「うん。赤くなってほっぺた押さえて俯いてるやつ」


ク「はっ(まさかあの時の…イルミのやつ盗撮していたのか。あいつのことだからまた変態ストーカー(クロロ)に送ろうとしていたな。いや、待てよ…いつもは変態ストーカーから何か言われるのだが今回は何もないし………まさか送ってないのか!!)


ク「……ぼわん」


キ「 え" 」


クラピカの顔がみるみる赤くなっていく。


キルアはクラピカの両肩を掴んで
激しく揺さぶった。


キ「なんで顔が赤くなってんの!?イルミに何されたのさ!?ねぇ、説明してよクラピカ!返答次第ではマジギレしちゃうよ俺!ねぇ、ねえってば!」涙目


ク「め、目が回るー」くらくら


キ「はっ、まさか頭を撫でられた時に針でも刺された?」


キルアはクラピカの髪を引っ張りだした。


ク「痛っ、痛いぞキルアー!針は刺さってないのだよー….それより吐き気が…うおぇっ」


凄まじい早さで揺さぶられ続け、目を回したクラピカは


キルアの手が離れるや
ばったりと倒れた。


キ「く、くらぴかぁー!イルミの話をしただけで気を失うだなんてやっぱり何かされたんだなっ…イルミのやつ…絶対ぶっとばす」バチバチ(静電気)



常に冷静沈着でいられるキルアにも
やはり例外はあるようだった。




ーENDー

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