すずめさまリクエスト

ゴンクラ+キルア
小悪魔ゴンちゃんです^^







(無邪気でいられるっていいなぁ)


頬杖をついて小さく口を尖らせながら
キルアはぼんやりと考えた。


むくれた視線の先には、
地べたに座って本を読んでいるクラピカと、背後からクラピカの首に腕を回して飛びついているゴンがいる。


「ねぇねぇクラピカ、クラピカっていい匂いがするね!」


「そ、そうなのか?…」


「うん!なんか落ち着く」


えへへーと。
ゴンは幸せそうにクラピカの頭に顔をすり寄せていた。


戸惑いながらもクラピカは、
嫌な顔ひとつせずにゴンを受け入れている。


にこにこと
優しい微笑みを浮かべていた。


……むかつく。



俺やおっさんには
そんな顔、絶対に見せやしないのに…



(ゴンにはなんの悪意もないんだよなー)


素直で無邪気なゴンに
クラピカは完全に心を許しているらしかった。


「クラピカの髪ってさらさらだね。いいなー」


「そうか?特になにもしていないのだが」


「生まれつき綺麗な金色なんだね!」


「ふふっ」


(ああもう、ちゃっかり髪を触るなよ!)


クラピカの滑らかな髪をさらさらと自然に撫でるゴンを見て、イライラが募る。

クラピカは拒むことをせずに
笑顔のままゴンと会話をしていた。


その光景が自分の心をちくりと刺す。


ゴンには悪意がないって分かっているのに

楽しそうに笑顔を見せるクラピカを見るとどうしてもムカついてしまうのだ。


(俺もああやって素直に甘えることができたらなぁ…)


俺にもその笑顔を見せてくれるといいのに。


でも俺が猫を被って無邪気に甘えたところで

警戒心の強いクラピカはあの笑顔を絶対に向けてはくれないだろう。


ゴンだからこそ向ける笑顔…。


ゴンが図らずとも自分の一歩上を進んでいるような気がして

物凄く悔しくなる。



「なぁゴン、おっさんのとこ行かなくていいの?」


キルアはぶすりとしたまま
未だにクラピカの背中に張り付いているゴンに話しかけた。


「あ、そうだ。レオリオがこの前壊れちゃった携帯を修理してくれてるんだった」


ゴンは名残惜しそうに
クラピカから手を離した。


クラピカはゴンを振り返る。


「ねぇクラピカ。クラピカが読んでる本、読み終わったら俺に貸してよ。頭のいいクラピカがいつもどんなやつを読んでいるのかすっごく知りたいんだ。」


「ああ、別に構わないが」


「やったー!」


ゴンは満面の笑顔を浮かべると
不機嫌な顔をしたキルアにそれを向けた。


「キルア、ありがとう」


「は?なにが?」


「キルアが教えてくれなかったら忘れたままだったよ」


えへへー。

ゴンは頭を掻きながら
屈託のない笑顔を自分にも向けてくる。


キルアはわずかにたじろいた。


「いいから行けよ!おっさんが待ちくたびれちゃうぜ?」


「うん、じゃあ後でね!」


ゴンは手を振りながら
走って行ってしまった。


「はぁ」


キルアは大きな溜息をついてがっくりとうなだれる。


悪気のない純粋無垢なゴンに笑顔を向けられたとたん

抱いていたイライラやヤキモチは一瞬で消えてしまい、悪態をつく気すら起きなくなる。


「…厄介なやつ…」


つくづくそう思う。


しばらくぼーっとしてから
何気なくクラピカの方へ視線を移した。


クラピカは何事もなかったかのように
本を読みふけっていた。


「………」


キルアはクラピカの側に寄る。

本に夢中のクラピカは気づいていないようだった。


「ねぇ」


不意に話しかけられ、
驚いたクラピカの肩が一瞬びくっと跳ねた。


活字に向けられていた顔が横を向き
色素の薄い茶色の瞳がキルアを捉える。


「何だ?」


キルアはクラピカの横に座り
膝を抱えてクラピカと同じような格好になる。


「あんた、ゴンのこと好きでしょ」


「え?」


クラピカは目を丸くしたが、
やがて普段通りの口調で答えた。


「ゴンは大事な仲間だ。まっすぐで誰ともわけ隔たりなく接することができる。嫌いな訳がないだろう」


「それって好きってことだよね?」


「ああ、そうだが」


「ふーん…」


なんの躊躇もなくそんな言葉を口にだせるだなんて…


「大事な仲間」
それ以上でもそれ以下でもない。


そんな意味で「好き」って言っているって分かっているのに


どうしても気持ちが沈んでしまう。


腑に落ちない様子のキルアを見て
クラピカは心底不思議そうにしていた。


「お前は、ゴンが好きではないのか?」


「そういうわけじゃないよ。ただ」


「ただ?」




「どうしたら俺もゴンみたいにあんたに好きになってもらえるかなって思っただけ」




遠い目をしたキルアから出たその言葉に

クラピカは再び目を丸くした。


ほんの一瞬の間が流れ

やがてクラピカがぷっと吹き出した。


クスクスと肩を揺らすクラピカを横目に
キルアが怪訝な顔をした。


「……なんで笑うんだよ」


「すまないな、まさかお前がそんなことを考えていたとは思わなかった。」


笑をこらえきれないクラピカは
口に手を当てて必死に笑い声を噛み殺そうとしている。


何となく悔しくなって
ぎゅうっと硬く膝を抱えた。


「そんなにおかしいことなの?」


頬を膨らませてクラピカを軽く睨む。


ようやく笑いがおさまり、顔をあげたクラピカは
わずかに口元を緩めてキルアを見ていた。


「え…」


その優しい眼差しはゴンに向けるそれと全く一緒で。


微塵の警戒心も感じられない。



完全に心を許した仲間にだけ見せる表情を初めて自分にだけ向けられたような気がして


キルアの心臓がどきりと音を立てた。


クラピカは静かに口を開く。


「お前がなにを勘違いしているのかは知らないが、私はお前のことが好きだぞ。」



思いもしなかった言葉に
今度はキルアが目を丸くした。


頬がだんだんと火照りだす。


「それ…本当?」


「ああ、お前だって大事な仲間だからな。ゴンとなんら変わりはないぞ?」


キルアの口元がだんだんと緩み、
それを隠す様に顔を両腕に埋めた。



嬉しかった。


自分は相手にされてないって思ってたから…

クラピカが無警戒な優しい笑顔を自分にも向けてくれたこと、
「好き」って言ってもらえたこと。


本当に嬉しい。


しかしクラピカの「好き」は
あくまで仲間としての「好き」って意味で…


そう考えると
やっぱり切なかった。



「ねぇ、俺がもっと頑張れば、もっと好きになってくれる?」


「ん?」


クラピカは不思議そうに首を傾げている。


ああもう…鈍感なんだから。



「大好きになってくれる?って言ってんの!」



思いのほか大きな声をだしてしまった。


クラピカは一瞬きょとんとした表情を浮かべたが、やがて穏やかな表情へと変わる。


「ふふ、お前は不思議なことを言うのだな。」


「どこが不思議なんだよ。本当天然だよな」


「天然?私がか?」


「うん。他に誰がいるんだよ」


「何を言うのだ、私はボケてなどいないぞ!!」


やっぱり自覚してないのかよ…


そんなとこが魅力だとは思うけど。


まぁいいや、
あんたの笑顔が見れたしゴンと俺は同じ立場だって確認できたし。


キルアは口元を緩めたまま
ゆっくりと立ち上がった。


「肩、揉んでやるよ。ずっと同じ体勢だろ?」


「いいのか?実はずっと凝っていたのだよ」


「任せときなって」


クラピカは肩の力をふわりと抜いた。


キルアがクラピカの肩に触れようとした時だった。





「クラピカ!!」




ドタバタと誰かが走ってくる音が
聞こえたと思ったら


帰ってきたゴンがキルアの腕を遮って、
勢いよくクラピカの背中にしがみついた。


素早くクラピカの首に腕を回し
先ほどまでのようにぎゅうっと後ろから顔を寄せる。


いきなりのことに驚いたクラピカの手から
読んでいた本がドサリと落ちた。


「ゴ、ゴン??びっくりするじゃないか」


「うへへー、ごめんごめん。レオリオがね、携帯なおしてくれたんだ!!レオリオって人だけじゃなくて機械まで治せるんだね!!すごいや」


「う、うん…人の治療とはあまり関係がないような気がするのだが……」


「うふふ、それでねそれでねー」


本当に嬉しそうに
嬉々としてクラピカに話しかけるゴンを見て


キルアは伸ばしかけた腕をゆっくりと引いた。


内心かなりムカついたし
本当は今すぐ引き剥がしてやりたいけれど
あんなに嬉しそうにしているゴンに手を出すなんてやっぱりできないな…


そんなことをしたら
クラピカにも嫌われちゃうかもしれないし…


「はぁ」


二人に聞こえない様に小さく溜息をつくと

一歩一歩クラピカから後ずさった。


「ん?」


ふと、クラピカにしがみついたままのゴンの顔が
こちらを見ていることに気がついた。


キルアとゴンが互いに目を合わせた瞬間








悪戯な笑みを浮かべたゴンがウインクをしたと思ったら



んべっと、
小さく舌をだした。











「え…」


キルアの思考が瞬時に固まる。


ゴンの勝ち誇った様なその悪戯な微笑みは


今までの行いが「純粋」とか「無邪気」ゆえの気持ちで行動していたというわけではなく



すべてを「計算」しつくしていたものだったということを表していて……




明らかにキルアを挑発していた。




「ゴン……お前……」


それを理解したキルアは下を向いて
プルプルと肩を震わせる。


怒りに似た感情がこみ上げてきて
だんだんと体が熱くなる。


ゴンがその気と知ったのならば
もう遠慮するつもりはない。


「ゴンっっっ!!そこから離れろ!!!」


瞬時に駆け寄り
渾身の力でゴンの体をクラピカから引き剥がそうとする。


ゴンはクラピカの首に両腕を巻きつけたまま

断固として動かない。


「離せ!!!そこ変われっ!!」


「やーだよーだ。絶対に動かないもんねっ♪」


「ちょ、ちょっとゴン…!
首が…息が苦しいのだが…」


クラピカはパタパタとゴンの両腕を叩くが
後ろの二人には全面的に無視された。


ゴンとキルアは
互いに一歩も譲らない。


(お前……絶対負けないからなっ)


(ふふふ。キルアなんかには絶対絶対渡さないもんねーだ)


自分の背後で繰り広げられる、
殺気立ってゴンを引き剥がそうとするキルアと
余裕しゃくしゃくで動こうとしないゴンによる二人の凄まじい喧嘩(?)に



クラピカはただただどうしようもなく戸惑うばかりだった。




ーENDー


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