クロ→クラ

シリアス/少し切な目かもしれません。









刺すような眩しさに目が眩んで
俺は目を覚ました。


隣には足枷をつけたままのクラピカがまだ寝息をたてている。


隙あらば逃げようとするこいつの足首には常に赤い傷が目立っていた。


こいつを捕まえてからというもの
俺はこいつをずっと閉じ込めてしまっている。


俗にいう監禁というものだろうか…


俺はこいつをどうしたいのだろう?



そんなことを考えながら朝日を浴びて綺麗にきらきらと輝く金の髪に指を通した。


うーん、と小さく寝返りをうち、
大きな瞳が開かれぼんやりと俺を捉えた。


「やっと目が覚めたか?」


髪を撫でる俺の手を拒むこともせずに、されるがままのクラピカは
何も言わずにぼんやりと俺を見つめ続けている。




ここ最近ずっとこの調子だ。


意図的に俺を無視してるのか
それとも俺が見えていないのか…


どっちにしろこいつは壊れかけてしまっているのかもしれない。


「朝食は?」


「逃げたい」


「何か飲むか?」


「帰りたい」


俺は何も言わずにベッドをでた。


キッチンへ立つと
お湯を沸かしてコーヒーを淹れる。


あいつはまともな食事を摂取していないはずだ。

俺が無理やり食べさせてやらなければどんどん弱ってしまうだろう


ふと、
後ろからそっと腕が回された。


「…?」


クラピカが俺の背中に抱きついていた。


「どうかしたのか?」


「帰りたいんだ…。」


「……」


「帰りたいんだ、クロロ。でも、逃げようとしても逃げようとしてもお前が許してくれないんだ。ここにいたくないのに、いちゃいけないのに、帰らなければいけないのに」


泣きそうな声で訴えかけながら
甘えるように背中に顔を押し付けてくる。


…お前は一体誰と会話をしているんだ?

お前が縋っている背中が
俺のものだと認識しているのか?


「お前を逃がしても、またここに来てくれるか?」

ふるふると首を横に振る。

「じゃあ駄目だ。お前を逃がすわけにはいかない。」

ぎゅうっと、懇願するように腕に力が込められる。


俺は身を翻し、
正面からクラピカを抱きしめる。

クラピカの頭と背中を包みこみ、
あやすように優しく撫でてやる。

クラピカは安心したように、それとも諦めたかのように俺の身体に身をうずめている。


「お前、俺のことは好きか?」


即座に首が横に振られる。


「だったら何故こんなことができる」


「ここにはお前しかいないからだ」


何かを求めるように俺の背中に腕を回す。


俺の中を支配する
欠落したようなこの感情は一体なんなのだろう。


こいつを捕まえたとき
やっと手に入れたと思った。


お前は確かに俺の手の中に収まっているはずなのに
なんでこんなにも満たされない喪失感ばかりが残ってしまうのか。



(理解はしている)


本当は分かっている。

こんなことをしたところで
いくらお前を閉じ込めたところで

俺はお前を一生手に入れることなどできやしない。


お前の心は既に誰かに奪われてしまっている。


それは誰だ?
命に変えても守ろうとした三人の中の誰かなのだろう?

ベッドで俺に抱かれていても
時折愛おしそうにそいつの影を追いかけているお前は、一体誰の姿を思い浮かべているんだ。


お前の心はどいつのものなんだ。



問い詰めても問い詰めてもお前は口を割ろうとはしない。
お前は何があってでもそいつを守りたいのか…


(理解してはいるんだ)



だけど足枷は外さない。
この部屋までしかで歩けない鎖をちぎってはやれない。


「なぁクラピカ、今日はどこにも行かないからずっと一緒にいようか」


クラピカは黙ったまま俺に身体を預けている。


分かっているんだ。

本当は分かっているんだ。


だけど無理なんだ。


俺は自分のやり方を変えることはできない。


お前を苦しめることでしか、
自分のどす黒い欲望を抑えることができない。



分かっているけど変われない。



俺は根っからの悪人なのだから。



―END―
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