「ねー主」
「ん〜??」
「普通さぁ、逆だと思うんだけど」
「何が〜??」
「だからさぁ、普通は主がおれに膝枕してくれるってもんじゃない?何で男の俺が主に膝枕してあげてるのさ」
「可愛い清光の顔を下からじっくり眺めたいから」
「えっ!ほ、本当?今のもう一度言って!主っ」
「世界で一番可愛い清光を独り占めしたいなぁ〜」
「も、もう…!主ってば!俺以外の膝枕で寝たらダメだからね?」
「わかってるわかってる〜。清光だぁ〜い好き」
「うう…幸せ過ぎて苦しい…っ!」

 かーー極楽極楽。最近仕事漬けで可愛い刀剣たちと戯れることができなかったからストレスが溜まっていたけど、たまたま部屋に訪れた清光をこうして捕まえることができてラッキーだ。それにしても地獄のような日々だった。苦痛な時間が長かったからこそこうして清光に膝枕してもらえる幸せを強く実感することができる。今日一日は存分に羽を伸ばそう。さぁて、良い感じで眠くなってきたし、清光の良い香りを嗅ぎながら一眠りしようかな。清光のお腹の方に顔を向けるように寝返りを打つと、上からクスクスと笑う声が聞こえた。

「主、可愛い」
「清光の方が可愛いよ」
「主には負けるよ。今の主、子猫みたい。ね、頭撫でて良い?」
「うん〜撫でて〜」
「本当に可愛いね。主は」

 さらさらと優しく髪を梳くように撫でてくれる清光の手が心地よくて余計に瞼が重くなった。気持ち良い。ここんとこまともに寝てなかったから、こんな心地良い状態で爆睡したらイビキかいちゃうなぁ。清光にドン引きされちゃう。でも睡眠欲には勝てない。

「寝たら?疲れてるでしょ」
「うん……でも」
「ん?」
「清光の顔、もう少し見てたい気もする」

 すると清光はきょとんと目を丸くした。そしてみるみる顔が赤くなっていき、目を潤ませて「み、見ないで」と手で私の視界を塞いだ。あ、照れたな。可愛い奴め。

「清光可愛い。綺麗。大好き」
「!あ、主…っ!」

 ギュウ、と清光の腰に腕を回して力いっぱい抱きしめる。思い切り息を吸い込めば、微かに香る白粉の良い匂いが鼻を擽った。男の子なのに何でこんなに良い匂いがするんだろう。女の私より女子力が高いのは前から知ってたけど、良い匂いまでするのは知らなかったなぁ。当然か。こんなに密着したことないもん。

「あのさ、主」
「ん?」
「そんな可愛いことされたら、さすがに我慢できなくなる」
「 ( ん…? ) 我慢って?」
「…わかってる?俺、男だよ」
「おう、知ってる」
「大好きな女の子にこんなに密着されて平然としていられる男なんていないと思うよ」

 眠くてイマイチ意味がよくわからなかったけど、とりあえず清光が困ってるみたいだったから腕を緩めて顔を上げる。そしたら顔を真っ赤にした清光の顔がすぐ近くにあって、私はギョッとした。清光の腕が肩に回り、軽く上体を起こされて互いの額が合わさる。これまでに無い近い距離に私は目をパチクリさせることしかできなかった。

「ち、近いよ清光」
「主ってさぁ」
「うん…」
「魔性の女、だよねぇ」
「え…?」
「自分が可愛い女の子って自覚ある?主にこんな風に擦り寄られて変な気を起こさない男なんていないよ?」
「あ、あの、清光」
「もっと警戒した方が良いよ?刀とはいっても人間と同様に暮らしてるわけだから、当然性欲だってあるんだからね」
「せ…性欲……!?」
「何そのビックリしたような顔。当然でしょ?食欲も睡眠欲もあるんだから性欲だってあるよ。主以外みんな男なんだから気をつけてよね」
「清光なんか怒ってる…?」
「怒ってはいない。でも他の男に今みたいなことしたらすごく怒る」
「清光にしかしないよ…」
「…それは俺が近侍だから?」
「え?うん、そうだね。清光なら気を許せるから、かな」
「…」
「…??」
「……はぁ」

 清光は思いっきり眉を寄せて超不満げにため息をつくと、私の肩を支えていた手をパッと離した。

「え!?ちょ!ふぐっ!」

 ゴンッと思い切り清光の太腿に首筋を打ち付け、あまりの痛さに星が飛んだ。何でいきなり離すんだこの子…。照れたかと思えば急に怒り出すし、不満そうにするし、わからない子だなぁ。ぶつけた箇所を摩りながら見上げると、唇を尖らせて拗ねた様子の清光がそっぽを向いていた。

「清光」
「…」
「おーい清光ってば〜」
「…」
「可愛い子ちゃんこっち向いて」
「やだ」
「ええ〜〜…や、やなの…?」
「主にとって俺はただの近侍なんでしょ?近侍だから膝枕を命じたんでしょ?近侍が俺じゃなくて違う男でも簡単に擦り寄って甘えるんでしょ?主性格悪い」
「えーーそんなことないよ…」
「だってさっき自分でそう言ったじゃん。近侍だから俺には気を許せるって」
「言ったけど………あ、」

 ああ。もしかしてこの子…。はっは〜んそうかそうか。そういうことか。突然怒り出した時はどうしようかと思ったけど、ちゃんとわかりやすい態度で教えてくれるのが清光の可愛いところだよなぁ。よいしょと上体を起こして清光の隣に座り、ぽすんと肩に頭を預けた。

「清光は特別だよ」
「…っ」
「そりゃ、みんな同じくらい可愛いけどさー。でも他の子の前ではかっこいい審神者でいたいのに、どうしてか清光には素の自分を見せちゃうんだよね。だからこうして甘えるのは清光にだけだよ」
「…それ、本当?」
「本当」
「他のやつにあんな可愛いことしない?」
「 ( 可愛いことって何だ…? ) 清光は特別だからこそ気を許せるんだよ」
「…ふふ、ならいーや」

 寄りかかる私に清光はふにゃりと笑って体を傾けた。コツンと頭がぶつかり、私たちは互いの体を支え合う。少し重いけど、清光がこうしたいならしばらくはこのままでいよう。それにしても他の子たちにヤキモチを妬くなんて清光はまだまだ子供だなぁ。そういうところが可愛いんだけどね。

「さっきも言ったけど、ムラムラするからあんまり可愛いことしないでね。次やったら同意の上と見込んで襲うから」
「!?!?!?」



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -