※少し下品なので注意


ブラジャーを着けて寝ると谷間とか下乳に熱がこもって蒸れるから、お風呂上がりはノーブラで過ごすことにしている。初めは少し抵抗があったけど、慣れてくると胸囲の開放感がクセになって今では年中ノーブラで過ごしたくて堪らないくらいだ。ノーブラ、マジ最高。もはやパンツもはきたくない。さすがに外でそれはやばいと思うけど、家の中だけなら良いかと自己解決して早速実践してみることにした。お風呂から上がって体を拭いてからそのままネグリジェを着てみるとその開放感が超やばかった。これだよこれ!人間は本来下着なんて身に付けるべきではない!スキップしながら自分の部屋に向かって、扉を開けてすぐベッドに俯けで飛び込んだ。

「は〜下着付けないって最っ高」
「………お前、今、何て」

…まさか飛雄がいるなんて思わなかったよね。だって、こんな時間に部屋に彼氏がいるだなんて思わないじゃん普通。

「…飛雄、何でいるの」
「…借りてた参考書返しに行くって、さっきメールしただろ」
「いつのメールそれ」
「30分前」
「見てない」
「見ろよ。…まあ、風呂入ってたんだろうけど」
「何で私の部屋にいるの」
「おばさんが入れてくれた」
「…飛雄」
「何だよ」
「…」
「…」
「…ごめん、何も言わずに帰って」
「…」

恥ずかしくて今なら死ねる。本当に、馬鹿としか言えない。馬鹿、マジで馬鹿私。何がノーブラ最高だよ。何がノーパン最高だよ。彼氏にこんな痴女紛れの台詞聞かれてこれからどうやって生きて行けばいいの。ノーブラで止めておけば良かった。ノーパンって、ノーパンって何だよ。どう弁解しても飛雄がドン引きした事実だけは変わらない。彼女の私がこんな痴女だとは思いもしなかっただろう。ドンマイ飛雄。ドンマイ私。

「…」
「…」

沈黙が長い。普段は気にならない時計の針の音がものすごく耳障りだ。何も言わずに出ろと言ったのに、飛雄が部屋を出て行く気配がまるでしない。ベッドに寄りかかったままジッとこちらを見上げているらしく、そんな視線を感じる。耐えきれなくて枕を抱きかかえて飛雄に背中を向けた。

「なまえ」

追うように飛雄が立ち上がる。ベッドの端に手をかけたのか、ギシッとスプリングの音が鳴って、私の心臓が跳ねた。真後ろに感じる飛雄の気配に肌が粟立つ。私の首のすぐ後ろに片手を置いて、もう片方の手で私の前髪をサラリと梳きながら、顔を覗き込んでいるようだ。飛雄の息吹が耳にかかる。私の頭の中はもうぐっちゃぐちゃだ。飛雄に何を言われるか怖くて仕方ない。変態、とかその類の言葉だったらほぼ間違いなく私は自室から飛び降り自殺を図る。
飛雄が息を吸った。反射的に私は目を強く閉じる。

「別に引いたりとか、軽蔑とかもしてねーから、こっち向けよ」

ピタ、と飛雄のひんやりとした手が額に当てられた。至って落ち着いた声音だったから、私はハッとして目を開く。顔に集中した熱を吸い取るような冷たい手が気持ち良い。恐る恐る顔を上げると、少しだけ頬を染めた飛雄と目が合った。

「…引かないの?」
「何で」
「だって、ノーブラにノーパンだよ?変態って思わない?」
「外でもそうだったら問題かもしれねーけど、家の中なら良いんじゃねーの、別に」
「嘘。無理にフォローしなくていいよ…どうせ変態だもん。痴女だもん」
「はあ?何お前そんなに恥ずかしいのかよ。お前の裸なんて何度も見たっつの」
「そ、そういうことじゃなくて!ああ、もう!なんて言ったら良いのかなぁ」
「…別に気にしないって言ってんだろ。下着身に付けてないからって何か問題でもあんのかよ」
「大アリだと思うんだけど」
「俺は気にしてねーよ…つか、むしろ」

ゴニョゴニョと口ごもりながら口元に手の甲を当てて飛雄は顔を逸らした。チラチラとたまに私を見るのは一体何なのか。言いたいことがあるならいつもみたいにズバッと言えばいいのに。もういっそのこと拒否の言葉を投げられた方が、気が楽かもしれない。

「なん、っつーか…あー!もう!」
「わっ!?」

ぐるりと体を回されて仰向けになった私の上に飛雄がすかさず覆いかぶさる。顔が近い。込み上げる羞恥に顔から湯気が出そうで、思わず逸らした視線を飛雄は逃さなかった。逃げるなと言わんばかりに両頬を片手で掴まれて、無理矢理目を合わせられる。
飛雄は顔を赤らめてはいるものの、表情から読み取っても確かに引いているようには見えなかった。飛雄の言っていることは本当なのだろうか。信じたいけど疑わずにはいられない。

「本当、本当に?嫌いになってない?」
「はぁ?何で嫌いとかそういう方に行くんだよ…」
「だって飛雄、だらしない女の子嫌いそうじゃん…」
「他の女がやってたら引くかもな。でもお前だから許す」
「ぅえっ!?」
「つか、むしろ…好都合」
「えっ」
「彼女がそんな格好してたら、興奮すんだろ。普通」

更に顔を真っ赤にして唇を尖らせながら、飛雄が言う。
予想外だった。飛雄はエロ本とか読まないタイプだと思ってたのに。性欲とか無い方だと思ってたのに。…興奮とか、覚えないタイプだと思ってたのに。想像とは正反対に、彼はどうやら健全な男子高校生の思考をお持ちのようで、ノーブラノーパンでも彼女の私なら逆に歓迎してくれる、らしい。…マジか。
正直言って嬉しくないカミングアウトだった。その上この怪しい雰囲気に戸惑っている。いや、ノーブラノーパンで開放感を味わう私も充分に変態だけど、それで興奮する飛雄は上を行く変態だと思う。苦笑いする私が気に食わなかったのか、眉を顰めた飛雄が思いっきり私の頬を摘まむ。

「お前ぇええ!何だよそのドン引きしてる顔は!」
「いひゃいいひゃいよとひお!」
「好きな女の裸で興奮するのは当たり前だろ!男はそういうもんなんだよこのボゲ!」
「ひぎれる!ほっへひぎれる!」
「…あ、悪い」
「手加減してよ!」
「人に引くなっつった割にお前が引いてるからだ!」
「いや…だって予想外だったから…影山サン、ノーブラとノーパンがご趣味だったのですネ」
「顔と言い方が腹立つから犯す」
「ちょ、待って親!下にお母さんいるから!」
「おばさんならさっき買い物に出た」
「わああ」

怒った飛雄を止めることはできない。ジタバタ暴れてみても体格差的に無意味だった。利き手で手首を固定され、反対の手でネグリジェの裾をたくし上げられてしまい、ノーブラにノーパンだった私はあっさりと彼の望む展開に追い込まれてしまったのであった。

これからは家であろうとしっかりと下着を身に付けようと思います。



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