英は以外とスキンシップが多い。学校では周りの目を気にしてあまり私に触れないけど、互いの家にいる時はベタベタと触ってくる。触ることも触られることも私は嫌じゃないから何にも問題は無いけど、まさかアキラスーパードラァアイがここまで甘えん坊だとは思わなかったから最初は少し戸惑った。今となってはもう慣れたし、むしろ甘えられるのは愛されてる証拠だから嬉しい。嬉しいけど、最近頭を抱えたくなるような悩みが多い。

「英、少し離れてくれたまえ」
「やだ」

 試験が近いから、勉強会とお家デートを兼ねて私の家に英が来ている。そして英は私を後ろから抱きしめたまま、私がノートにペンを走らせる様子をジッと観察している。 勉強しなよと声をかけても空返事しか返ってこないから私も諦めて自分の勉強に集中することにした。…それにしても、苦しい。

「英、腕の力緩めないとそろそろ吐きそう」
「やめて」
「じゃあせめて力抜いて」
「やだ」
「駄々っ子か己は!」
「やあー」

 英が赤ちゃん返りしてる。おでこを私の肩にグリグリ押し付けながら、いやいやと首を振っている。何この巨大な甘えん坊。扱い方がよくわからないよ。取説どこにやったっけ。

「なまえは頭良いんだから勉強しなくて良いじゃん。そんなことより俺に構うが良い。ほれほれ」
「アホか」
「なまえを正面から抱きしめたい」
「私は勉強したい」
「俺は抱きしめたい」
「大事なことじゃないから二回言わなくて良いよ。あと恥ずかしい」
「なまえ」
「何だよ」
「正面から抱きしめさせてくれたらしばらく黙ってるから。ね?」
「しばらくってどれくらい?」
「五分」
「短ぇ!」
「やっぱり一分」
「それもはや沈黙レベルだろ。ダメダメ、話にならん。一時間黙って待ってられるならギューしてやる。ほら、どうする」
「一時間…」
「さあ英どうする?十秒以内に答えたらチューしてあげる」
「乗った」
「即答あざーす」

 英は単純だ。こういう時は扱い易くてとても助かる。約束通り英と向き合って座り、彼の首に腕を回して力を込めると、英の腕が背中に回ってピッタリと体が密着した。向き合っても尚、英は私の肩にグリグリと額を押し付けてくる。なんか甘え方が猫に似てきたような。可愛いから良いけど。

「英」
「ん」

 首を傾げる英の頬に唇を当てると、英は不満そうにムッと眉を寄せた。誰も口にするとは言ってない。よーし、これで一時間はちゃんと勉強出来る。腕をぐるぐる回して再び英に背中を向けた。

「なまえのバカ」
「約束は守ってねー」

 気持ちを切り替えて、シャーペンでノートに文字を書き写していく。後ろで英がじーっと睨みつけてくる視線を背中に感じながら、私はノーリアクションを決め込んだ。ついに諦めたのか英は私から離れてベッドに飛び込み、枕を抱えて目を閉じる。まさか寝るつもりなのだろうか。何度も言うけど、お前も勉強しろ。

「暇」
「まだ一分も経ってねぇよ」
「独り言だから聞き流して良いよ」
「あ、そう…」
「あ、雑誌見っけ。女性雑誌だけど良いや」
「 ( ファッション雑誌読む気か… ) 」
「ふ〜ん、へ〜、なまえってこういう服が好みなんだ」
「…」
「ふ〜ん、へ〜」
「…」
「へぇ〜なまえこういうのが欲しいんだ」
「……」
「なまえ、いやらしい趣味してるね」
「さっきからお前は何を見ている!?!?」
「下着特集」
「ウオアーーーーッッ」

 額に手を当てて全力で反り返った。見事な海老反りが完成した私に英は気の抜けた拍手をしている。プルプルと震えながら私は雑誌を奪い取った。

「どこ見てんだよ!」
「だって暇だから」
「理由になってねぇ!せめて下着じゃなくて洋服とか見てろ!」
「興味ない」
「ギリィッ」
「なまえ、今は何色付けてるの?」
「…言わない」
「言えないようなデザインなの?へぇ〜。クマちゃんのアップリケでも付いてるのか。だっさ」
「幼稚園児じゃねぇよ!ざけんな白の高い良いやつだよ!ピンクのフリル付いた可愛いやつだよ!」
「それってこの雑誌に載ってるやつ?」
「え?あーそうそうそれ… ( ハッ!私乗せられてる! ) も、もう黙っててよ…勉強できないじゃん…」
「俺、爽やかな水色とか好きだよ」
「あ、そう。特に参考にしないよ?」
「とかなんとか言いながら今週末には下着を買いに行くプランを頭の中で練っているなまえであった」
「練ってねーよ!…て、アーッもう!こうやって釣られる私も悪い…!」

 全然勉強に集中できない。こんなんで教科書睨みつけてても全く意味がない。むしろ時間の無駄だ。英も静かにするつもりは無いみたいだし、もう勉強は夜にやろう。シャーペンをペンケースにしまいながらため息を吐き出した。

「始めからそうしてれば良かったんだよ」
「英が赤点取っても私は知らんぞ」
「俺は金田一と違って赤点取ったことないから」
「マジかスゲぇ…見くびってたわ」
「ところでなまえさん」
「何だね英さん」
「そんな可愛い下着を俺と二人きりの時に付けてるってことは、つまりそういう解釈で良いの?」
「良くないよ?」
「許可が下りたので早速拝見します。よっこらせ」
「何でベッドに連れてこうとするの?ちょっと待って、ねぇやめてオイコラ!やめろッッ!!」

 こうして私の悩みは日々増えていく。



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