クソいとこ
俺の従兄弟は本当にクソだ。クソの中のクソ。ナンバーワンクソ。まあ、それだけだったらいいのだが、こいつとの腐れ縁は切っても切れない。
もともと極貧生活で借金を苦に蒸発した両親はまあいい。会社に失敗して夜逃げしたこの従兄弟の両親もまあ別に関係ない。だが、この男だけは俺に迷惑しかかけない厄介者だった。
高校卒業と同時に朝から晩まで働きづくめの毎日。両親が残した借金を少しずつ返済する毎日。かなりの節約生活も功をそうして、だんだんと借金は減り、ようやく完済…というところでこいつが俺の家に転がり込んできた。家と言っても、六畳一間のボロアパート。置いてやるところなどないのだが、この時初めてこいつにもかなりの借金が残されてしまっていたことを知った。
境遇が全く同じだけに、俺も無下にはできなかった。それに、唯一の肉親が蒸発した以上、孤独感に打ちのめされる時もあったため、幼少期以降ほぼ会っていなかったと言っても、やはり情が湧いてしまうものであった。
それからはこいつの借金を返して行く日々。その間、こいつは俺の稼いだ金をパチンコやら競馬やらクズのような暮らしによってドブに捨てて行った。さすがに、今までの新聞配達やコンビニ、土木作業などでは賄いきれず、とうとう俺も水商売デビューを果たすことになった。
顔だけで言えば、俺なんかよりもこのクソ従兄弟の方がよっぽど整っているのだが、流石に水商売に首を突っ込めとは言えない。いや、たまに勝手に部屋に女を連れ込んでいることもあるので、女を引っ掛けるのは得意であるようだし、天職かもしれないが、そんなことをさせたらクソがまたさらにクソになってしまう気がする。一応ふたつ年上の俺としても、いつかはこのクソにも真面目な暮らしをして欲しいし、今はニートでも構わない。俺がとりあえず、借金さえ返済してしまえばいいんだ。
そうして、歌舞伎町でもかなり競争率が激しいが、稼げると評判のホストクラブに面接に向かうこととなった。
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