3年後

見事暴力団に入団することになってしまった俺は、持ち前の適応能力からすぐに馴染んでしまった。
当時1番下っ端として入ったにもかかわらず、冷静で的確な話し方が幹部の田嶋さんに気に入られ、着々と出世していった。
最初こそ柄の悪い構成員たちに毛嫌いされ、裏で殴られたりもしたが、そのうちの3人が、1度敵対する組の組員に待ち伏せされ拘束された時に、たまたま居合わせた俺が救出したことにより、認められたようだった。
今ではこの事務所のトップである田嶋さんの側近として、俺は組員の信頼と忠誠を得ていた。

「御園さんって、田嶋さんと2人のときどんな話するんですか?女の話とかするんですか?」
興味津々で俺に敬語で問いかけてくるのは10も歳上の構成員、二宮だった。ガタイのいい年上の彼に敬語で話しかけられるのには、違和感こそあれ、もう突っ込むことはない。
「そんなプライベートな話は全くないですよ。本当に組に関わることばかりで、たまに女性の送迎を任されることはありますけど、俺は彼女たちの名前も知りませんよ。」
部下に対して敬語はやめてくださいと言われるが、やはり俺はこのスタンスを変えることはできない。
「御園さんでもそうなんですか。あんなに信頼されてるのに。」

それはよく言われることだった。田嶋さんは今まで俺ほど近くに誰かを置いたことはないらしい。
だが、俺は信頼されていると感じたことはなかった。彼は、俺に利用価値があるから利用しているだけで、俺に対して全く情などない。俺は、人一倍冷静で客観的だと自負しているから断言できる。
彼は、いつでも俺を捨て駒にする。むしろ、その機会を伺っているようだった。1番効果のあるタイミングで、俺を使い捨てるつもりなのだ。

俺はせいぜい、突然の襲撃の弾除けにでもされるのだろうと思っていた。ヤクザの考えることなど、3年居ようと全くわからないが、俺の使い道などそのぐらいだろう。
俺は、その時が来たらいつでも身を投げ捨てるつもりだった。あの日死んでいても文句の言える立場ではなかったが、3年も生きながらえ、その間は今まででは考えられないほど贅沢な暮らしであった。構成員たちには慕われ、それなりに楽しかった。
泥水を舐めるような幼少期を考えれば、ここは天国だった。だから、後悔などなかったのだ。


まあまさか、田嶋さんがあんな風に俺を捨てるとは全く想像もつかなかったわけではあるが。



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