過保護

組長との甘い生活ももう2ヶ月が経とうとしていた。
相変わらず組長は俺のことをでろでろに甘やかしている。
生まれてこの方こんなに甘やかされ愛された経験がない俺は、この居心地の良さにすっかり浸っていた。
幸福な気持ちとは、こういうものなのか、と実感していた。

田嶋さんのような利用するためにそばに置かれるのとは全く違う、組長の俺への接し方が、なんともむず痒く、でも心地よかった。

できればこの時間が長く続いて欲しいとは思っていたが、俺は忘れたわけではなかった。
ここが、ヤクザの本家の中心で、抗争の標的になるような場所であるということ。
いつどんな時でも、命の危険があるということは承知で行動していた。
組長の信頼のおけるボディーガードにいつでも守られてはいたが、組長はそれでも心配なようで、俺をずっと目の届くところに置いていた。


「おい、少し出るからお前もついてこい」
「駄目ですよ、あの会合は関東連合の頭と若頭だけの特別なものですから、御園さんは連れて行けません。」
「ボディーガードとしてならいいだろう」
「組長、これはしきたりですから、お願いしますよ〜」
トイレに行く途中、組長と下っ端の構成員の話し声が聞こえてきたが、どうやら俺の話がでていたらしい。
下っ端はかなり困っているようで、素通りすることもできず、話の仲裁に向かった。
「組長、俺なら大丈夫ですよ。そんなに大事な会合なら出ても俺萎縮しちゃいますし。どうぞ行ってきてください。」
「み、御園さ〜ん」
天の助けとばかりに泣きそうな声で縋ってくる下っ端に微笑む。
「御園…。俺はお前のことが心配なんだよ。目の届くところにいないと不安でいても立ってもいられなくなるんだ。」
組長も懇願したような顔で見つめてくる。
「組長、これからこんなことは何度もありますよ。大丈夫です、俺は今までいろんな修羅場をくぐり抜けてきましたし、そう簡単には死にませんよ。」

「それはもちろんだが、俺はお前が他の男に……。わかった、そうだな。今日は一人で行ってくる。その代わりに、向野を置いていくから、やつから離れるなよ。」

組長は何やら俺の命より別のものが心配だったようだがあえて突っ込みはしない。誰が俺のケツを狙うって言うんだ。

向野というのは、組長が最も信頼を置くボディーガードで、無口で強面ではあるが、優しい紳士だ。俺も彼には安心感がもてた。
打算がうずまくこの世界で、彼のようなあったかい人間の存在は心強かった。




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