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「戦士……一緒に寝よう」

「……は?」


真夜中、つい先ほどまで別で部屋をとってあるルキのところへ遊びに行っていた勇者さんは、帰ってきたとたん真顔でそう俺に告げてきた。
すでに寝の体制に入っていた自分は、その言葉を瞬時に理解することはできなくて。枕片手に俺のベッドへ潜り込んでくる勇者さんをしばらく呆然と見つめてから、正気に戻った俺はベッドからその人を蹴り飛ばした。
痛い!という叫び声が聞こえてきたが無視して大丈夫だろう。そう決め込んでもう一度自分の体に布団をかけ寝ようとした、のだが。


「戦士ー」

「…………」

「せーんーしー」

「…………」


うるさい。果てしなく煩い。いったいこの人は何がしたいんだ。
無視を決め込んでいたがさすがにそれにも限界で、体を横にしている俺の隣で未だ騒ぎ続けるその人へ顔を向ける。目があった途端に勇者さんは顔を明るくさせた。


「戦士っ」

「嫌です」

「なんで!今晩だけだよ!?」


ふざけるな、たった一晩されど一晩だ。自分の好きな人と同じ布団で寝て手を出さない自信などあるわけがない。
ただでさえ同じ部屋と言うだけであれなのに、お前襲われたいのか。
……あれ、もしかしてこの人。


「そうか、そうだったんですね」

「え?なにが?」


ポカンと口を開けている勇者さんに向かい手を伸ばす。わしゃわしゃと円を描くようにその人の頭を撫でて、俺は小さく笑ってみせた。


「いやぁ、そんなに俺に襲って欲しかったのなら回りくどい事しないでハッキリ言えば良かったのに」

「なにその解釈なんでそんなことになったの」

「え、違うんですか?」

「違うよ!僕はただお化けがっ……」

「は?お化け?」

「あ、」


しまった、という顔をした勇者さん。それを見ながら少し考えて俺はある結論にいたった。
……あぁなるほどな。
大方さっきまで遊びに行っていたルキのところで怪談話でもしてきたのだろう。それで怖くなり一人では眠れなくなってしまったと。
タネ明かしが済まされればなんとも単純な話しだ。思わず緩んでしまった口元を隠すことなく言葉を続ける。


「勇者さん……あなたお化けが怖いんですか」

「べ、別にいいだろ怖いものは怖いんだから!」

「そうですか。さすが15歳までぬいぐるみがなきゃ眠れなかった人は違いますね」

「今それ関係ないだろ、クマッチを馬鹿にすんな!」

「俺が馬鹿にしているのはクマッチではなくあなたですが」


もういいよっ、と顔を背けた勇者さんは俺の隣にあるもう一つのベッドへ飛び込んでしまう。この人の本来の眠るべき場所。そこへみの虫のようにくるまってそっぽを向くその人を見て、俺は少し笑ってしまった。


「勇者さん勇者さん、」

「…………」

「聞こえてますー?」

「…………なに」

「ほら、」


そう言って両腕を広げてみせた俺を、勇者さんは毛布の隙間から覗き見る。数回まばたきをしたその人は、そんな俺の行動にどういった反応を示せばいいのか決めかねているようだった。
まったく仕方のない人だな。


「怖いんでしょう?俺も早く寝たいんでさっさと来てください」

「…………」


その言葉を聞いた瞬間に、勢いよく腕の中へ飛び込んできた人物。自分より一回りくらい小さなその人をしっかりと抱きしめてから、ため息をひとつついた。


「もうどうにでもなれ……」


きっと今晩は眠れないだろう。










襲って欲しいのかのくだりはロスさんの冗談でした……。
な、なんか2人とも性格が違うような気が……ほ、本当にすいません。


130405


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