「これでおわりにしましょう。デンリュウ、かみなり!」


ヒビキの声とともに空からおちてきた雷はアーケオスに直撃をして。効果抜群、あぁ負けたんだなってボロボロになって動かない自分のポケモンを見て他人ごとのように思った。
その場から動けずに立ちつくす俺に微笑むヒビキの声がかかる。


「拍子抜けです。もっと強いと思ってました」

「…………」


オロオロと、Nが何か言いたげに口を開けたり閉じたりしているのが分かった。
こいつでも一応人に気を使うことはできるのか。いやでもお前確か俺に負ける言ってたよな?


「……トウヤ……」

「……なんだよその顔。
あいつが強くて俺が弱かった、ただそれだけのことだろ」


ただ、それだけ。
俺は目を閉じ息を吐いた。
あーなんか幼少期から大切にしてきた何かをぐちゃぐちゃに壊された気分。最悪。
目を開くとヒビキがジッとこちらを見ていることに気づく。少し文句を言ってやろう、そう考え言葉を発しようとした……が、その前に冷めた声でヒビキが小さく呟いた。


「…………けよ、」

「はぁ?」

「……いえ、なんでもありません。」

「ふうん。ま、じゃあこれでお前も満足しただろ」


もう俺たちに関わるな、そう付け加えて踵をかえした。歩き出した俺に慌ててNが地面を蹴る音が聞こえる。それに混じってなんらかを呟くヒビキの声も。
パタパタと慌ただしく隣に並んだNに俺は前を向いたまま口を開く。


「……負けた」

「……うん、そうだね」

「……って事で俺は今ものすごく傷ついているから少し一人にしてくれ」

「え、全然そんな風に見えないんだけど」

「そりゃ分からねえようにしてるしな」

「……分かった。じゃあしばらくは別行動だね」


ふわりと笑うN。
ぎゅ、とイーブイを抱きかかえている腕の力が少しだけ強くなった気がする。


「タマムシの噴水前集合な」

「何時?」

「俺の気がすむまで」

「…………」


一瞬え、というような顔をしたがすぐにコクリと頷く。
俺はそれを確認してNから離れた。