「……って言う事があったんだけど」

「そうですか。あなたはそのトウコから逃げて来た臆病者と言うわけですね」

「嫌な言い方すんな」



今俺はバトルサブウェイに居た。あの後泣いてるトウコに困り果てた俺は、何事かとのぞき込んできた母にトウコを押し付けそのまま駆け出したのだ。
まぁ自宅以外に俺の行ける場所なんてここしか無かったから、ウォーグルの空を飛ぶで迷うことなくこの場所まで来たけど。

ガリガリと書類へ向かってペンを走らせるクダリに向かって一言。


「……なんか機嫌悪くね?」

「……3日連続、このバトルサブウェイで妨害行為があったんですよ。犯人は逃走、利用者からは苦情殺到。お陰で全然眠れません」

「へぇー、ご愁傷様ご愁傷様」

「絶対思ってないでしょう、あなた」


書類から目を話したクダリはこっちを見て気楽な方はいいですね、と呟く。
いや気楽じゃねぇよ。俺だって努力値の割り振りとかで忙しいからな。


「……なぁ、クダリ」

「なんです?」

「今日ここに泊まっ「帰れ」」








――――








「信じらんねぇ、本気で追い出しやがった」


バトルサブウェイ常連客の俺を、BPも対戦成績も歴代最強の俺を。
はいそこ、廃人とか言わない。
ライモンの遊園地のベンチに座り呟く。
帰れるわけねぇだろあんなとこに。今日はもうここで寝てしまおうか。

もう真夜中近いので、昼間は人で賑わうここも今は誰も居ない。まぁとりあえずの確認として、辺りを見渡して人が居ないことを確かめると俺はベンチに寝転がった。


「……あぁ……うん…………え……」


……誰かの声がする。
あれ、人がいたのだろうか。確かにさっきは居なかったのだけど。
俺は慌てて寝そべっていたベンチから起き上がると、その声の主であろう人物と目が合った。

萌黄色の長い髪に細身の長身。その腕にはオタマロが嬉しそうに抱かれていた。
……ん、なんだこの特長。俺こいつとどっかで会ったような……。


「…………」

「…………」


お互いに見つめ合いしばしの沈黙。
つかなんで腕の中に居るのがオタマロなんだ。
俺あいつ見るだけではっ倒したくなるんだよな。
抱くにしてももっとかわいい奴いるだろ、チラーミィとか。……いや、アイツもダメだ、よく綺麗な女性のことチラ見しまくってるからな。


「……え、と……髪、切った?」

「は?」