あの熱を孕んだ瞳に触れてみたい..01

「おい、佐々木バカ。ポカリ」
「……え?」
「ポカリ持って来いっつってんだよ。さっさとしろ、ノロマ!」
「う、はい……」

 バカだって恋くらいする。
 我ながらどうしてこんな自己中で傍若無人な男がいいのかわからないと思いながら、それでも想いだけが募っていく。

 始めは羨ましさと少しの嫉妬だった。けれど、彼を嫌いだったわけではない。どちらかと言えば苦手で、嫌いだと言うのならば寧ろ相手のほうがこちらを、だろう。
 それがいつの間に恋になったのか、瑠偉にはわからない。きっかけはあるが、本当に男相手に恋をしているのかも怪しいのだ。
 しかし、彼の瞼に唇を寄せてみたいなど、尋常な想いではない。やはり恋なのだろう。

 夏のある日だった。じりじりと空気すら焼けつきそうな日で、むっとした風が汗の滲んだ頬を撫でたのを覚えている。
 部活の休憩時間、木陰に座り込んですぐに強い視線の気配を肌で感じた。炎天下のコートを全力で駆けた後だったからか、身体の全神経が研ぎ澄まされていたのだ。痛いほどの視線。気配の先にいたのは彼だった。
 近いわけではない距離。彼の薄い色の瞳に、まるで太陽の炎が入り込んだように揺れていた。
 十六歳の瑠偉には、鮮烈な光景だった――。

 まるで太陽を孕み、焦がれているような瞳に心臓が締め付けられた。
 それから、だ。彼を想って意味もなく泣きたくなったり、あの薄い色の瞳に口付けたいなどと邪な想いを抱くようになったのは。

(ああ、オレってほんとにどうしようもなくバカだ)


***

 どうして瑠偉はそうバカなの。
 ほとほと呆れた様子で言ったのは確か姉だった。ような気がする。



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