少なくなったみんなの時間を埋めるように騒いで叫んで笑った。楽しい時間はあっという間に過ぎるもので、食べ終わって暫し喋れば自然とお開きする展開に。物足りないと感じていても、少しの休暇はあと数日間だけ残ってる。といっても、二日くらいしかないのだけれど。


そして今、家までの帰路を祐一兄ちゃんと二人で歩いている。





「こうやって歩くのも懐かしいね」
「そうだな。そう長くは経っていないが、これが当たり前だったから」
「…寂しくなったなぁ」
「…まぁ、そう落ち込むことでもないだろう。会おうと思えば会える」





祐一兄ちゃんは、少ない休暇でも連続して休みの日は頻繁に帰ってくるらしい。真弘先輩は、家で受験勉強をしているそうだ。…まぁ、大好きな二人が揃って村を出なかっただけマシ、かな。





「いっそのこと、真弘先輩留年すればよかったのに」
「実は結構危なかったらしい」
「うっそ!惜しいことした!」





もっとサボり誘っとけば良かったなぁ、なんて。小さく呟けば少し口角を上げた祐一兄ちゃんが「そうだな」と頷いた。ちょっとだけ意外だったから、首を傾げる。





「真弘は大分寂しがっていた」
「ほー…真弘先輩が?」
「あぁ。お前達といるのは相当楽しかったらしい」





ちらり、私と同じ色の目がこちらに向く。楽しげな目だ。私の反応を伺っているのか黙る兄ちゃんから続く夜道に視線を戻して、心の中で呟く。真弘先輩が寂しがってくれてた、か。





「…うん、嬉しい。なんか頑張れそう」





隣の祐一兄ちゃんはふ、と息を吐くみたいに笑ったあと、「良かったな」と言って私の頭を撫でた。もうすぐ家が見えてくる。お母さんもお父さんも兄ちゃんが帰って来るから喜ぶはずだ。そして家族みんなで沢山話して、それから、





「ねぇ祐一兄ちゃん」
「どうした?」
「今日一緒に寝よ?」
「…あぁ、構わない」
「やった!」





祐一兄ちゃんと、目一杯一緒にいるんだ。普段から僅かにしか変わらない兄ちゃんの表情は、それでも優しく穏やかで。そんな祐一兄ちゃんを見ていると、やっぱり毎日顔を見たいな、と我が儘みたいな願望が湧いてくる。言っちゃ困らせるだけだから言わないけど、そうすると兄ちゃんは何も言わずにまた頭を撫でてくれた。





「大学を卒業したら村に戻ってくるつもりだ」
「うん」
「それに、来年からは梨玖も一緒だろう」
「祐一兄ちゃんだけ一個先輩だね」
「ああ。真弘は不貞腐れるだろうがな」
「先輩のことやっと呼び捨てにできる!」





相槌を打ちながら、近づく家を見つけた兄ちゃんの顔が僅かに緩むのを見て。やっぱり兄ちゃんの居場所は此処だと安心する。人が苦手なのにその容姿のせいで目立っているであろう兄ちゃんが休める場所になればいい。そう思って、ゆっくり歩く祐一兄ちゃんの腕を引っ張った。





「おかえり兄ちゃん!」
「…あぁ、ただいま」








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