縁側に吹く風は、冷たくて、寂しい。
静かな空気が心を鎮めていく。
「珠紀は拓磨が好きなんだね」
そんな静寂を破ったのは私。
驚いたような目が私を見るから、思わず息を吐いて笑った。
「な、なんで…?」
「んー?見てれば分かるよ」
「うそ…っ」
月光だけが照らす中、あからさまに赤くなった頬を隠す珠紀。
両手で覆っていても見え隠れする頬が可愛らしい。
狼狽える珠紀の揺れる目が、やがて優しい色を宿して微笑む。
ああ、拓磨は幸せ者だな、なんて。
「…うん、好き」
零れた声は幸せそうに。
いつの間にか顔を隠す手は取れていて、想いを馳せるように胸の前で緩く握られていた。
まるで目の前に拓磨がいるような、女の子の顔をしている。
違うのに、私に言われているみたいな錯角を起こすくらい、
それは綺麗で優しい微笑みだった。
「私は拓磨が、好き」
私もこんな女の子になれたらなって、ちょっと思った。
珠紀は強い。強くて、優しくて。
花を見るような目で私たちを見るから、みんなが守りたいって思える。
そんな彼女に選ばれて、こんなにも気持ちの篭った声で思われて、
何だか私まで恥ずかしくなってしまう。
「珠紀、」
「……え、あ。ご、ごめんっ」
「いいよ別に。ご馳走様でした!」
「もう、祈莉!」
叶えばいい。
珠紀の願いも、みんなの願いも。
千年の呪縛に縛られた人達の、全ての願いが。
『無理に決まってるでしょ』
頭の中に響くこの嫌な声と、巣食って消えない闇も一緒に消えて。
みんなが、笑えるように。