私の霊力は尽きないから、封印が弱まったりしないよ。
封印すれば、おそらくは植物状態と同じ。
その時点で思考も動きも止まるけど、心臓が動いていれば大丈夫。
術をかけるくらい、ババ様ならたやすいでしょ?



やがて苦々しい表情で頷いたババ様は、少しだけ元の彼女に戻っている気がした。
口だけを動かして謝る彼女に首を振って部屋に戻る。
一人の空間になれば、冷めた熱が戻ってくるみたいだった。


やっと、やっと役に立てる。
恐怖にも勝る満たされた感覚。
不安もないわけじゃない。
けれど純粋に嬉しいのだ。
見てるだけだった私が、やっと、





「祈莉!」




役に、立てる。





「真弘先輩?」
「…お、まえ…っ」




息を切らした先輩は襖に手を掛けたまま私を睨む。
襖が軋む音が聞こえた。先輩の爪は白くなっている。




「何平気そうな顔してんだよ!」
「? だって、」




私は平気だから。
普通に、笑って言って見せた。私の、本音。
だけど少しだけ、自嘲も含んでいたかもしれない。
先輩が言っていた生き急ぐ行為とは、こういうことか。





「……先輩、私、ずっと苦しかったんだ」




みんな力を持っている。
持て余すだけじゃない、守るための力を。
それがない私には分からないかもしれない。
だけど、私は力を持っているのにそれを否定するみんなが羨ましかった。


守れないことは、自分の無力をひしひしと感じて嫌になる。
守られることは、自分が弱いと言われているようで泣きたくなる。
でも、でもね。





「真弘先輩が言ってくれた守るって言葉は、うれしかった」
「それは、」
「でも、嘘だったんだよね」
「っ」
「全部全部、うそ」





ごめんね真弘先輩。
今までのこと、先輩の優しさだってやっと分かったよ。
だけど引き返せないの。
みんながみんなを思うように、私だってみんなを思ってる。


深く息を吸った。
壊れないように、気を抜いて泣いてしまわないように。
私が封印されたら、きっと悲しんでくれる。
そんなのは嫌だ。せっかく役に立てるのだから。
みんなが、先輩が傷付かないためには、





「真弘先輩なんか大嫌い」




いっそのこと一思いに、私を嫌って。





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -