身を貫く異物の感触。
皮膚が破られる音と、口から溢れた赤い血。
覚えていた。私がどうなったのか。
死ぬんだなって考えて怖くなって。
でも、大きな目を丸く見開いた平助が、
傷なんて一つもなかったから、





「……ん、」




鼻から抜ける声に驚いたのは私自身。
浮上する意識とは反対に体は重くなって。
持ち上げた瞼の先には、記憶の底にあった天井が映った。





「……?」




反射的に身を起こす。
起き上がってから刺されたんだと気付いても、痛みはまるでない。
おかしい、と。私の中で何かが叫んだ。





「元の、世界……?」




なんで。
なんで、私は生きているの。





「平助は……」




…そうだ。平助は、彼はどうなったの。
天霧の手刀は私に当たったはず。
傷はあるのかと自分を見下ろした瞬間、私は息を飲む。
私は着物ではなく、制服を着ていた。




「どういうこと…」




慌てて部屋を見渡す。
ベッドにパソコン、ソファに電気。
私のもの。あっちにはない、私の、





「や、だ……」




一人だけの部屋には、呟きも儚く消えるだけ。
これじゃ、平助が助かったのかも分からないよ。
土方さんは?千鶴は?沖田さんは?
……わからない。何も、わからないよ。




「…なんで……?」




泣き崩れるよりも早く、逃げるように飛び出した部屋には
今を刻む針が、カチリカチリと動いていた。






矛盾したエゴイスト


これが罰だとするならば









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