暗闇の中を走る。
右に曲がって、左に曲がって。
頭の中は、ぐちゃぐちゃだった。
「……っ」
どうしてこうなるまで気付けなかったんだろう。
離れてから分かるなんて滑稽にも程がある。
あの日、わけも分からず呆然とする私を拾ってくれたのは誰だった?
絶えず笑顔と優しさをくれたのは誰だった?
「は、っ……ぅ」
異世界から来た私。排除されるべき存在。
けれど私は救われた。温かい人達に。
手を差し伸べてくれたあの時、まるで白い綿が降って来たみたいに幸せだった。
でも、怖くて。軽蔑の眼差しで見られるのに震えて。
何もできなかった。結末を、知っているはずなのに。
「平助……っ」
これはその罰だろうか。
聞こえてくる断末魔と金属のぶつかる音。
どの選択肢を選んでも変えられなかった道。
彼が、平助が苦しむ。
「……っへ、すけ…っ」
見たくない。それだけは。
平助が傷付く結末なんて、絶対に。
もう遅いかもしれない。でも、それでもいい。
今まで目を背けてきた償いが、今できるなら。
「──愚かだ」
低く、威厳の篭った声。
鼓膜を震わせて、聞いたことのある台詞に脳が警鐘を鳴らす。
もう力なんて残ってない。息は切れて、髪は乱れて。
だけど私は、弾かれるように地面を蹴った。
変えるために。平助の所へ。
「っ平助!」
私は君に、生きる道を歩いて欲しい。
そして世界は暗転する
…生きて、