其ノ壱──いつだって俺はそうだった。時が過ぎるのを、無難なフリしてじっと待つ。無様なフェイクで背を向けて、放蕩息子はいつだってそれなりのポジションだ。
脚が向かう灯籠の下には、大抵似たような仲間が寄り集まっちゃあ背中叩いて大口叩き、乾いた傷を舐め合った。羽は飛ばずとも金は飛ぶ。月に酔っちゃぁ女に酔って、不幸な俺のそんな日々が、つまらないまま巡るんだろうと思ってたんだよ──立ち塞がるお前の背を見るまでは──。
血の臭い、叫び声。何も出来ない。何もしない。
護られた俺に出来ること。何も言えねぇ、何もしねぇ。
ただ、ことごとく非日常めいたその背中に、惚れるぐらいしか出来ねぇんだ。
なぁ、馬鹿だって言って笑ってくんねぇか。それだけで、廻りめぐったって、時の流れを前にして、何も出来ない俺だけど。
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