「俺、自分の間違いに気付いたんだけど」
 髪型か? 服装か? それともこの世に生を受けたことか? 当てはまる節が有りすぎてむしろ興味が沸いたので俺は話を聴いてみることにした。キリストこと柏原も、たまに自分を見直すことがあるらしい。
「で、何じゃ?」
「ブッダの髪型は坊主じゃなくてパンチパーマだぞ」

神の驚愕

 話を盗み聞きしていたらしい風間がゲラゲラと笑い出した。黙ってろピザ、と肉肉しい背中を殴ってから柏原を見る。長ったらしい前髪から曇りない眼が見えてウザい。なんでかって、この柏原のせいで、坊主の俺は「ブッダ」なんてふざけたあだ名をつけられたというのに。

 こいつとの腐れ縁はやっぱりなかなか消えてくれない。こんなくだらない話をしながら、もう十二年の時が経ってしまった。

「ほら、頭見て! なんかくるくるしたのついてんの!」
 と興奮しながら買ったばかりのスマートフォンの画面をかざしてくる柏原。なんだ見せびらかしたいだけか、と呆れた視線を向けてみると、柏原の背後に小さい大仏がいた。

「何じゃこれ、小さあてパーマ見えんし。てか、奈良行ったん?」
「おう!」
「こないだの日曜?」
「おう!」
「誰と?」
「えっ」
「えっ」

 突然柏原のテンションが止まったのでこちらもキョトンとしてしまった。しかし、みるみるうちに柏原の顔が「マズい」という顔になるので、これは何かあると賢い俺は確信する。

「誰、と、行ったんじゃ?」
「えーと……」

 昔からそうだ。こいつはわかりやすかった。小学校の時、女子のパンツを見ようと必死だったこととか、バレンタインデーにそわそわしてしまうこととか、最近だって後輩に遊びで告白された時もニヤニヤが止まらないらしかった。
 だから、柏原がこんなに動揺してるってことは、何か隠してるってワケで。

「えーと」
「はよ言え」
 痺れを切らした俺は、ずいっと柏原に近付く。目をぐるぐる回しながら口を開いた。

「み、みくしー……で知り合った子と……」

 もじもじ。

「何照れてんじゃキショい」

 反論出来ない柏原は苦々しい顔をする。俺ははーっと溜め息ついて、
「正直ヒクわ」
「おう……」
「まあ別にとめはしねーけど」
 他人がとやかく言うことじゃないだろう。ただ、こいつが今日も元気に学校来てるってことが事実なんだし。

「でももう会わない」
「なんで?」
「全っ然可愛くなかった。プリクラと実物違いすぎてもう女の子信じられない」

 また風間が笑ってる。俺も思わず噴き出した。だって柏原はやっぱりわかりやすく意気消沈し過ぎ。

「それがいいと思う」
「おう」
「てか俺彼女出来たんじゃ」
「えっ」

「くるくる」
to 微糖

久々の仏神ネタ。そろそろ単独で読むには難しいなと思いながら結局書ききりました。一応、急展開、ですよね。

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