小説 | ナノ









(藤木悠斗)



すずと付き合って9ヶ月経つが、ここまで口を聞かないことが今までなかった。9月の終わりごろに喧嘩をしてから、二週間を経とうとしている。

さすがに、俺もここまで来たらどうすればいいのかわからない。思い出したら不安で涙出てくるし、だからといってどう話を切り出せばいいのか分からない。俺もこんなことは初めてで、すっと戸惑っている。



事の発端は9月末の話。まあ、俺も向こうも悪いところはお互いある。

9月の途中、すずが元彼と連絡しているという情報があった。それが兄ちゃんの知り合いで、とてもヤバい人らしいから、と俺に忠告されたのだ。それで、断ってもしつこいからと、直接言いに会いに行ったらしい。その時に、色々触られていた。

一方俺は、中学の時にテニス部だった一つ下の女の子にたまたま会った。その子は俺から見たら元カノみたいな奴だ。数ヶ月付き合ってた。その時に、昔の思い出話とか話し込んだ後に、告白……ではなく、家に誘われたんだ。まあ、意味的にはそういう意味だろう。俺はちゃんと断ったけど、その時に、べったりくっつかれていた。

お互いこんな状態でたまたま出会したんだ。その時は無視するしかなかったが、その夜に電話するとお互い言い放題になり大喧嘩。それから口聞いてない状態だ。





クラスでも気分が浮かない日が続いた。体育も気分が乗らないし、休み時間もぼーっとしてるか寝ることが増えた。

同じクラスの明人には
「最近の悠斗ほんとつまんねえ、なんかあった?」
と聞かれた。
「やー、何も無かったわけじゃないけど…」
「そんなしょげてるんだから何かあった以外の何もないだろ、」
こいつにしては珍しく心配してくる。本当に珍しい光景だなと思いながら一通りのことを話した。

っていうぐらい、最近の自分は元気とは真逆。常にぼーっとしていて、しまいにはなぜか急に泣き出す。病んでるのかな、俺。って言いたいくらいだ。






学校で、進路の居残り終わりの放課後、1人で歩いて帰ろうとしたら、知ってる人が自転車でやってきた。

「あれ、悠斗じゃん?」
「お、ほんとだー。」

それが、星夜と蒼佑だったわけ。
幼稚園からの幼馴染とも言えるこの2人。星夜は途中で引っ越したけど、それからも3人で遊ぶことが多かった。星夜はバスケ部で西星にたくさん知り合いいるし、蒼佑はテニス部だからそれこそ繋がりあるし、その2人は同じ学校だし、と未だに仲の良い。

「どしたの2人でこんなとこにいて」
と俺は言う。
「これから蒼佑ん家行ってくるからさ」
と、星夜が言う。そこで蒼佑が
「良かったら悠斗も来る?」
と俺のことを誘ってきた。
どうせ暇だし、と思って誘いには乗った。





「なるほどね、そんなことあったんだねいつの間に」
2人には一通り話した。俺も説明しながら泣いちゃったよ。


「悠斗がここまで感情的になるのも中々ないよね。特に家のこと色々あった時からは」
と、蒼佑に言われる。昔からずっと一緒にいる奴って、こういう、俺でも気づかない俺のことを言ってくれる、本当に、有難い人たちだ。

…まあ、たしかにそうだ。


「でもまあ、話聞いてたら悠斗も色々成長したなって思うよ」
蒼佑が語るように言う。
「どういうところが?」
「相手のことをちゃんと分かってるところ。自分の悪い所も見つけられてるところ、かな」

こいつって本当に俺でも知らない俺のことを知ってる1番の友人だな。まさに、その通りなのではないか。


「でもちゃんと話すしか解決策はないと思うし、あとは悠斗たち2人次第なんじゃない?」
と星夜にも言われる。


なんか、また泣けてきた。
自分の不甲斐なさと、二人の言葉から。

「おーい、泣くな?」
「ここは悠斗らしく行けよ??」








次の日の夜、早速会うことにした。話し合おうって。すずの部活終わりの時間に合わせて、すずの家に向かった。


「とりあえず、入っていいよ」
と言われ、すずの家に入る。

すずの家はアパートで、母親と二人で暮らしている。すずが中2の春に両親が離婚している。でも、すずが幼い頃から父親はあまり家に帰ってこなかったらしい。
そういや、こいつが男関係結ぶようになったのも中2のこの時期からだ。



「やっぱり私、悠斗しか無理。」
と、すずに泣きながら抱きつかれる。

「半月も口聞かなかったじゃん。本当に耐えられなかった。だから今日呼んだの。」
俺も思わず涙が出てくる。

「俺も。本当にどうしたらいいのかわからなかった。ずっと悩んでた。」

テンションが上がらなかった、何しても。


「お互いに、お互いじゃないとダメなんだね。って、やっと分かったよ。」
涙が止まらない。これは、何の涙だろう。安心感のある涙なのかもしれない。


「やっぱり悠斗好きだーーー」
「そんな可愛いことはじめて言われたかも」
「あんまり言わないかもね」
「これからはもっと言ってよ?」
「えーー?」

心のモヤモヤがやっと消えた。俺の隣に君がいないと、俺はダメなのかもしれない。彼女のことが、好きすぎて。

最初こいつと関わった時、好きになるなんて思わなかったし、付き合ったのだって、半分ノリだったけど、今ではこんなに大好きだ、こいつのこと。




今までの俺は、恋愛をちゃんとしてこなかったとつくづく思う。全てがノリだったように見える。昔なんて、何かあればすぐ別れようとしていた。だから続かなかったのかな、とは思う。俺も散々透輝のこと言ってきたけど、結局それは自分も変わらなかった気がする。「恋をしたらクズになる」ってところ。


自分の成長を色々と感じたなぁ。
もっといい彼氏にならなきゃね。




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