小説 | ナノ








(寺西晃星)



自分が生きていくのに欠かせないもの、それは「音楽」だ。どんなに嫌なことがあっても、音楽を聴く、もしくは楽器を弾く。この2つさえできれば俺は生きていける。

小学生の時に友人の勧めでスクールバンドに入った。ユーフォニアムを吹いてた時期もあった。

中学生になり、自分は部活には入らなかった。吹奏楽部に入ろうか一瞬迷ったが、なんとなく入らなかった。



ベースを始めるきっかけとなったのは、中学2年の頃の話だった。

スクールバンドに入っていた頃に何度か行ったことのある楽器店。たまたま気が向いたから行ってみることにした。
奥の方に、ギターやドラム、そしてベースなどの楽器が沢山あったのだ。
ベースの前に立っていると、

「晃星、ベースって、どう?」
と突然話しかけられた。
それが兄の友達だったんだ。

高校生の兄が同級生とバンドを組んでて、ドラムを叩いているのは知っている。その、ベースを担当している人だったのだ。

「とても、かっこいいなぁと…」
「…俺の古いので良ければ、譲ってあげるか?」
「え、そんな…」

突然のことだったから、当然戸惑う。でも、こんな機会は滅多にない。新しいことに挑戦してみよう、という気持ちのほうが強かった。


そうして、毎日学校から帰ると、家でずっと練習をしていた。そんな日々があったから、今の自分に至るんだ。


高校生となった今では軽音部に所属し、毎週土曜日の部活には積極的に参加。その中でも部活のメンバーとバンドを組んで、市内の様々な所でライブ活動を行っていた。

その中でも主としたのが、同級生数人と組んでいるバンドだ。7月の西星祭で活動休止という形にはなったものの、俺の高校生活の充実した理由の一つになったに違いない。



そういえば、かなり前の話だが、「楽器を始めたい」と相談してきた友人がいた。それが、滉希だ。

「今からでも遅くない?」
なんて相談されたもんだから
「楽器始めるのに期間は関係ねえよ」
と言っておいた。

彼はテニス部とはいえ音楽好きの昔からの友人の1人で、俺の好きなアーティストってマイナーなほうだから知らない人のほうが多いんだけど、滉希となら話が弾む。滉希は邦楽アーティストは基本好きだからな。

その中でも滉希は シンガーソングライター と呼ばれる人が作って歌っている曲が好きだ。そういう人って、ギター等の楽器を持っていることが多いから、それに影響されたのかなぁ、とは思う。




そんな滉希とは家も徒歩5分もしないくらい近いしで、幼稚園からの昔なじみみたいなもん。夏休みにカラオケ行く約束をしてたんだけど、そのカラオケに行った帰りの話だった。

「晃星って進路どうするんだっけ?」
と、突然聞かれた。
「就職だよー。どうしたの突然」
「いやー。暇だったら晃星とセッションとかしたいなーって思ってさ」

確かに、俺らではセッションしたことないと思う。

「…やるか?」
「やろ!」

と、いうわけで決定したんだ。

でも互いに高校3年生、夏休みに学校呼ばれたりと進路で忙しい時期だけど、だからといって趣味を続けないわけがない。曲を決めたら、夏休み中は数回ほどどちらかの家に行き、練習していた。


「いい感じじゃん!」
思わず滉希とハイタッチ。練習を重ねていく度に、中々いい出来に仕上がるからとても楽しい。








夏休みが明けてしばらくたった時、久々に学校まで楽器を持っていくと、同じ2組の友達がつっかかってきた。今日は学校終わってから直で滉希の家に行くことになったからだ。

「晃星ってこのクソ忙しい時期でも楽器弾いてんの?」
と、快人に聞かれる。快人は吹奏楽部でサックスを吹いていて、これがまた素晴らしいサックスプレイヤーだ。

「今さ、中学まで一緒だった友達と練習してるんだ。ギターとベースのセッションで」
「へ〜。また新しいこと見つけたんだね」
「その友達の案でね。おかげで夏休み楽しかったし、今日学校終わってからもそいつの家行くんだ」
とても嬉しそうにして言う俺を見た快人が、

「…晃星、やっぱ音楽好きだね。楽器や音楽の話してる晃星って生き生きしてて、見てたら俺も頑張らなきゃーって思うんだよね」
と言ってきた。

「そう?でもなんか、音楽があるから日々楽しく過ごせているなーとは思う」
「一言で言うと、音楽って素晴らしい、だね」
「ほんとさ」

快人は普段のノリは本当にバカで子供っぽいところがあるけど、こうやって音楽のことになるととても大人っぽい雰囲気を出してくるんだよな。特にサックスを吹いてる時。演奏会とかでこいつはソロが多いし俺もよく聴きに行ってるけど、音も大人っぽいんだよな。

「…今度は快人と一緒にやりたいな。サックスと合わせてみたいんだよね、俺」
「じゃあドラムに泰輝も誘って今度一緒にやるか」
「いいねそれ、」



音楽の世界なんて、入り込むのは簡単だ。聴いているだけの音楽も好きな人はいるし、俺達のように演奏するのも好きな人もいる。「音楽」には様々なジャンルがある。クラシックに邦楽に、ロックやジャズ等沢山ある。

でも、音楽は音楽だ。俺と快人の場合も、楽器が違くてもジャンルが違くても、楽器を演奏しているのには変わりないし、こうやって話せてる位なんだしさ。











「俺、何があっても、将来どんな職業についても、ずっとギターを趣味に生きていきたいなーって思う」
と、滉希に言われる。

「あったりまえよ。俺も一生、趣味で音楽やってたい。好きな時に、好きなようにやっていたい。」
「進路シーズン真っ最中だからよりそう思っちゃうよね〜」
「わかる。」
「大人になっても晃星と一緒に楽器弾きたい」
「もしやってたらどうなってんだろうな俺ら」



夢中になれるものがあるって素晴らしい。それがあるから楽しく生きていける。

今後、何年経っても、音楽は続けていたい。
楽器を続けていたい。

そして、新しいことにもチャレンジしてみたい。


俺の生きがいは 「音楽」 ただ一つだ。





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