小説 | ナノ








(「僕は再び恋をする」より3か月後)


(森島透輝)




結局恋愛になると何がしたいんだろうか、自分でも分からなくなってくる。

でもこれだけはハッキリ言える。
今の自分、彼女のことは、好きだ。

かつて付き合っていた女の子、菊永さくら。高1の頃に8ヶ月付き合って、別れたんだ。
でも俺がこんな奴だ。自分がクズになる。そんな自分が嫌だった。だから。でも、これからも仲良くしようって言ってくれたのがさくらだった。

最初は向こうから告白されたし、さくらが中学の時ずっと俺のこと好きだったのも本人から聞いた。別れて2年近く経つ今でも、俺のことは好きだと言ってくれた。

俺を選ぶとは勿体無さすぎる。もっといい男はいないのか、と言いたくなる。さくらは昔から変わらずモテるのにさ。
逆に、もし俺がこいつを捨てたとしたら、俺はもう恋愛なんてもんはできない気がする。さくらよりいい奴なんて、他にいないんじゃないか。


「透輝は恋愛するとクズになる」、友達にはそう言われ続けた。特に悠斗には何度言われただろうね。

また関わるようになった当初は復縁する気なんてなかったけど、今では復縁したいという気持ちのほうが強い。





話は夏休みも終わり頃のこと。陸が買いたいものがあると言い、講習帰りに駅前に来た。俺は特に用がないんだが、夏休み全然遊びに出かけてないなと思い、丁度誘われたから同行した。

その、帰りの話だ。

陸は自転車で来たからここでお別れ。バス停へ向かうと、そこにいたのは春日高校の制服の女の子。

俺は一瞬その場で止まってしまった。そう、そこにいるのはさくらだ。


「どうしたの、挙動不審になって」
と、さくらには笑われる。
「いや。普通にびっくりしたからさ」
と俺は答える。

「透輝も夏休み中学校行ってるの?」
「夏期講習とかあるからね」
「あ〜特進科なんだっけ。私は今日進路のことで学校に呼ばれたから行った帰りに買い物してきたのさ。」
もう進路の時期だからなぁ…。特進以外の人も学校で見かけるし。この前は工業科の藤松と篤志に会ったわ。


「…さくら何番のバスだっけ?」
「星華7の1行きだから16番のバスかな」
「俺ん家…来れる?今から」
「…え?」

俺は考えていたことがあった。次さくらに会ったとき、俺は自分の思いを伝えようと思った。
でもそれがこんな街中な訳だし、俺も落ち着けないのさ。心が。

「無理ならいいんだけどさ」
「や、全然大丈夫だけど…バス何番だっけ?」
「星華2の1行きの15番」
「ん〜バスカードに入ってるの280円なんだけど足りる?」
「220円だから大丈夫」

ってな訳で、俺の家に行くことになった。心臓はバクバクしてるしで、もう自分が訳分からん。





家に着くと幸い誰もいなく、そのまま自分の部屋へと案内する。

「透輝の部屋久しぶりだ〜」
と、辺りを見回すさくら。

「あ、この写真、透輝と滉希が全国行った時のやつだっけ!」
「そうそう。丁度3年前の今頃のかな」

中3の8月に個人戦で全中出場してから早3年。星華中の森島新堂ペアは2回戦敗退だったけども、試合した相手が今では強豪校のレギュラーだったりするから今思えばすごいなぁと。




「…で、透輝は何があって私を家に呼んだの?透輝のことだから何か理由あると思ったの。」

やっぱり見透かされてたか。さすが女友達ってだけある。

「前会ったときに俺が、復縁する気は無いって言ったの覚えてる?」
前とは、5月の話。突然さくらの家に呼ばれて行った時の話だ。

「覚えてるよ。」
「でもあれからの俺、ずっとさくらのことしか考えられなかった。たしかに俺も最初はすぐに復縁だけはしたくなかった。でも、周りに支えられて決意することができたのさ。」

得に元星華のメンツとこの話してるとよく言われてた。晃星にも言われたし、テニス部の奴ら…特に悠斗にも、「まずは付き合ってみて」と言われ続けていた。

「つまりは、こんな俺で良ければもう1度、俺と付き合って下さい。」

俺はさくらの目を見て言った。自分からここまでちゃんと告白するの、人生で初めてかもしれない。

「…私もね、透輝のペースに合わせるとか自分で言ったくせに、早く透輝と付き合いたいってずっと思ってた。」
「すまん、なんか」
「全然いいのよ。それが透輝だからさ。」

思わず涙が出てきた。こんなクズ野郎なのに、ここまで俺のこと分かってくれてるの、本当にこいつしかいないと思う。

「でも、透輝がいくら自分が彼氏として最低なことした、とか思い込んでても、2年前みたいな別れは本当にしないでほしい。別に気にしないし、私もちゃんと透輝のこと支えたいから。また付き合うなら、そういうところも分かった上でもう1度付き合いたい。」

さくらまで泣いている。まあつまり、お互い泣きじゃくってる。

「さくら、ありがとう」

俺は精一杯、彼女のことを抱きしめた。










元星華中テニス部の同期たちには当日にこの話をしたし、他の人にもちらほらとこの話をして2学期が始まった。

家もわりと近い工業科の晃星には「ちょっと話聞きたいから久しぶりに一緒に学校行こ」とか言われ、入学式ぶりに一緒に登校してさくらとの話をしたし、
教室行けばすぐに「透輝おめでとー!」ってクラスの女子には言われ、男子には話を迫られ、

廊下で会うソフトテニス部の後輩にも「先輩彼女できたんですね!!!」とか言われたし、
その日の放課後には薫と2人で恋バナすることになったし。いや女子かって。





「って感じで、本当に大変だったよ2学期初日」
2学期初日の出来事をさくらに話した。

「私もだよー。菜々子と羽田なんてクラスも違うのにD組に入り込んで来たし、クラスでも席が隣の太一からは質問攻め」
「テニス部は俺らの件みんな知ってるから、みんなびっくりしたんだろうね…」

意外と俺とさくらの2年前の話は星華の奴らや西星か春日のソフトテニス部には広まってて、俺らの最近の話もなぜか皆に知られていた。いや絶対西星の奴らのせい。まあ話したのは俺だけども。


「でも付き合ったらずっとくっつけるから良いわ」
俺はさっきからずっと座りながら、俺の上に乗ってるさくらのことを抱きしめてる体勢だ。いい匂いがするなぁ。

「今の発言すごい突っ込みたいけど、私もこっちのほうが落ち着くから何も言えないや」
「素直でよろしい」



「いい笑顔じゃん、」
突然さくらにスマホのカメラを向けられ、そのまま2人で写真も撮った。ちなみに今時の若者の流行りの詐欺アプリでね。





本当に、人生って何が起こるか分からない。
気持ちの変化だってそう簡単に訪れる訳だし。

でも、もう空回りはしたくない。自分を責めすぎないように、自分も相手も大切に。


幸せの1ページ目。僕らは再びめくることができた。





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