小説 | ナノ









(藤木悠斗)





時ってあっという間。

気づけばもう高校3年生。進路活動も始まり、部活も集大成にかかっている。全ての学校行事が最後だし、本当にあっという間。


部活推薦で西星に入って、部活やクラスの友達とも騒げて、特に恋バナなんて大いに盛り上がる。
今の彼女とは最初は色々あったけど、今ではかけがえのない、大好きな存在。

自分の思ったよりもずっと、高校生活を満喫できているのかもな。
だから、あっという間に感じるのかな。


その分、焦りも感じる。
時間が、ない、って。

勉強だって、テストで悪い点取った時も、次のテストで挽回しようって思う。部活も、大会であまり納得いく結果じゃなかったとしても、次の大会はもっと頑張ろうって思う。

でもその「次」のチャンスが少なくなってきている。成績だって、次の試験で全てが決まる。次の試験の成績で、進路活動に励むことになる。
部活も、大きな大会が近づいている。昨年は県大会に進んだからといって今年も進めるとは限らない。努力と結果次第。

勉強も部活も、それまでの積み重ねが大事。
その積み重ねの時間が、足りないと感じる今日この頃。




部活を終えて家に着くと夕方。この春社会人になった兄の宗真が、珍しく飯を作ってくれていた。
俺の家は色々複雑すぎて、父親は女の家に半同棲状態だし、母親はもう家に帰って来ることはないだろうしで、ほぼ兄と弟と3人で暮らしてるようなもんだ。この状態になったのも中3の時の話だから、もうこの環境に慣れてはいるんだけど。ちなみに今現在弟は友達と遊んでいるからまだ家には帰ってきていない。

「悠斗、なんか浮かない顔してる」
兄ちゃんに言われる。

「ちょっと、最近考え事するようになって」
「何のことで?」
「学校生活…というか部活のことで。本当にあと少しなんだなーって」
「珍しいね、部活のことで考え事って」

そりゃいつも俺の考え事って大体恋愛のことばっかだもんな。

「部活かー。中学ん時懐かしいなー。」
「兄ちゃんもテニスやってたもんね」
「俺もそんな時期があった」

兄ちゃんは高校では部活を続けていなかった。元々続ける気なかったって言ってたし。

「意外と時間がなさすぎるんだよなーって。気づいたら高体連まで半月切ってるし」
「まあ、どこの誰もが思うことだよね。最後だ、って思うと余計に」
「そっか俺、中学ん時は高校でも続ける気でいたから、こんなこと思わなかったんだろうな…」

きっと卒業してからも暇だったら打つと思うんだけど、部活、としてやっていくのは高校が最後。それを実感してきてるから、そう思うのかな。







俺ら3年生は、特に色々問題あった代だと思う。
辞めた人数もダントツで多い代だし、喧嘩も特に多かっただろう。やっと俺らの代皆が団結したのも去年の先輩引退前くらいだし、特に先輩には沢山迷惑かけただろうな。結果的に皆仲良くなって、今では喧嘩は少なくなった。あったとしてもそこまで大きいものじゃないし言い合い程度だ。




世間はゴールデンウィークだが、俺らは部活に大会にと、ゴールデンウィークなんてものはほぼ存在しない、というか、最後の日曜日しか休みがない。

彼女のすずも、ずっと部活の合宿だと言うくらいだし、ゴールデンウィークって、ゴールデン部活ウィークって言っても良いんじゃないか、とか考えてしまう。

そのたった1日の休み、ソフトテニス部の3年数人集まって夕方からご飯を食べに行くことになった。
メンバーは、俺と貴斗に俊也と汰斗、雄平に篤志、そして途中参加の翔真。1年の頃によく一緒にいたメンツだ。意外とこのメンバーが集まるのは久しぶりかもしれない。


「てか他の運動部はさ、やっと今月で引退〜とか言ってるよね」
と、雄平が話を切り出す。

「俺ら、一応高体連が一区切りだけど、大会は8月まであるもんねー。早く引退したい」
と、翔真が言う。
「でも数えればあと3ヶ月だよ、早いよね」
俊也は切なげに言うけど。

たしかに考えてみれば、ほとんどの運動部は高体連で引退なんだ。その中でも俺らは早いほうだけど。

「なんか本当に、あっという間…」
俺は呟く。

「部活引退は早くしたい気もするけど、こうやって集まるのも難しくなるのかなーって思うと寂しい」
貴斗が言うと、汰斗も続けて言う。
「意外と忙しいもんね。引退すれば就職試験も待ってるし、今年は受験生も多いし」
「先輩達は就職多かったし進学の人推薦しかいなかったから年内中に皆決まってたよね」
確かに篤志の言う通りだ。先輩たちは年内中に進路全員決まってたから、暇な日に全員集まったりとかすることが多かったらしい。


「…なんか、俺らでこういった部活のまともな話するの久しぶりな気がする」
俊也が言い出した。

たしかに。恋バナとかふざけた話などの世間話はよくしてるし、ついさっきまで恋バナ盛り上がったしなんだけど、真面目に部活の話をこうやってするのは久しぶりかな。

「それこそ、貴斗と透輝の時以来?」
俺が言うとみんな「あーたしかに」と納得する。

何が悪いかって、俺らの代って人間関係をうまくまとめれる人がいなかったことだ。喧嘩っ早いのとそれを見てるだけの奴しかいない。これはこの前、同じクラスでマネージャーの伊吹に言われたことなんだけど。

「色々あったからこそあっという間に感じるのかもなー」
貴斗が言う。

「早く引退はしたいけどしたらしたで名残惜しくなりそう」
汰斗が笑いながら言う。

「1週間に数回しか部活行かない奴も一時期俺らの代にはいたしな?」
雄平が言うと、「うるせーなー」と翔真と貴斗が反応する。まあ、そんな時期もあったわな。



「悠斗と雄平と俊也は団体も頑張れよ〜」
篤志に言われる。

「今年こそ全国大会出場したい」
「頑張ろう!」

西星高校のソフトテニス部の大きな目標は、「団体全国出場」。いつも団体戦はギリギリなところで敗退することが多い。同じ県内の緑市にある2つの強豪校が大きな壁。個人戦で全国大会出場は近年でも数回あるけど、全国大会出場は西星高校の悲願なのだ。


夢を、実現させる。

これが今の、目標。

今年こそ、叶えてみせる。








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