※後味悪め




あさぎりゲンの熱愛報道が明日の週刊誌にのるらしい。飽きずに不倫ネタで盛り上がっていたワイドショーも明日からはこのゴシップで溢れるだろう。ツイッターで早バレした情報を流し見る。確かにゲンくんが好きそうな女。切れ長で大きな瞳、さらりとした艶のある黒髪。偏差値の高い有名な大学に籍をおきながら読者モデルでも活動中。妬ましい、なんだよこの女。
ずっと追いかけていた。ずっと隣に並ぶことのない背中を追いかけていた。いつも私の遠くへ行く彼の姿を必死になって追いかけ、決して交わることのないその視線が欲しかったのに。いきなり出てきた女が私が求めるゲンくんを奪っていった。絶対に許せない。腹の底から真っ黒の感情が溢れ出す。写真の中のゲンくんは甘い笑顔で、王子様みたいだった。そんな顔、わたし、知らないのに。

ゲンくんの下積み時代から応援してきた私を裏切ったの?サイン会じゃ私の名前聞かずに書いてくれて、ゲンくん公認のナンバーワンだったよね?地方や海外でショーがあると聞いたら絶対に駆け付けたし、本を出すと言ったら何百冊も積んだ。昔は私が私服にと送ったブランドの服をよく着てくれたよね、最近服の趣味変わったのはこの女のせいなの?かゆい、かゆいかゆい!全身に虫が這うような感覚が私を襲い、血が出ようと無視して掻きむしる。嫌だ、絶対に嫌だ許せない。
部屋中に貼られたゲンくんのポスターが私のことを笑ってるように見える。「いつもありがとね。」そう言われたのが一昨日、マジックショーのプレミアム席特典のふれあいイベントで。ゲンくんも内心馬鹿にしてたのかな。たかだか数秒のために高い服で小綺麗にして、時間をかけて化粧してもパッとしない顔。この女との格差に笑ってしまう。もしかしたら今二人で週刊誌の話してるのかな。自分の想像で吐きそうになる。


結び目の戯れ


真っ暗になった携帯の画面に映る自分の顔があまりにも醜くて、涙が止まらなかった。


20200820
title by 溺れる覚悟


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