3700年振りのニキビの出現にため息を大きくついた。最近は蒸し暑くてなかなか寝付けなくて寝不足だし、そのせいか食欲もなくてあんまり食べていない。完全なる不摂生だ。今までライン使いしてた化粧品も、このストーンワールドに存在するわけがない。保湿すら出来なかった結果がこれだ。これは潰れるまで放っとかないとなあ。ちょうど額の真ん中に赤くぷっくり膨らんだニキビを隠すように前髪を整える。髪に擦れて痛いけどニキビをバレるのが恥ずかしかった。みんな何もしなくても肌がきれいで羨ましいな、またため息一つ。クロムが持ってる何かの草?をすり潰した液体が結構肌に良かったって杠が言ってたことを思い出す。かぶれないか不安だけど背に腹は代えられない、もらいに行こうと強く決意した。


「クロム、後でちょっといい?」
「おー分かった!」

こっそりクロムに言いに行ったのに何故か銀狼が見ていたみたいで後ろの方で茶化してくる。折角クロムが深入りせずに頷いてくれたのに、みんなが何だ何だと騒ぎ立てるじゃないか。やましいことじゃないのにルリにも申し訳ない。またため息一つ、今日はため息ばかりついて嫌になる。

「やっぱりいいや!ごめんね仕事の邪魔して。」
「俺は全然いいけどよぉ…どうかしたのか?あ、俺じゃなくてせーーーんくうーーーー!」

ええええ、大樹ばりに大きな声で千空を呼び出したクロムを必死に止める。絶対千空に相談したくなかったのに、変に気を使われてしまった。来なくていいよと千空にバッテンのジェスチャーを送るが無視される。クロムはやりきったと笑顔で離れていくし、ああ今日はツイてない日だと悟った。

「ナニモ、ナイデスヨ。」
「あ゛?そんな白々しい嘘が通ると思ってんのか、何を隠してやがる。」

ここは取調室ですか?と聞いてしまいそうなほど千空はわっるい顔で私に詰め寄る。目を合わせると白状してしまいそうで明後日の方向に顔を向けた。好きな人に自分のニキビ事情を話すなんて嫌に決まってる。千空と押し問答を繰り返しているとき突風が吹いた。なんでよりにも今なんだ、とことんツイてない。突風のせいで額があらわになり、千空の目線が少し上に上がった。

「ククク…そういうことか。」

納得、といった表情で千空はラボに戻っていった。恥ずかしすぎる、見られたくなかったと羞恥心で顔が熱くなる。




数十分後に千空が持ってきてくれたお手製ニキビ薬がわたしの必需品になるのはまた後日の話だ。


20200819
title by 溺れる覚悟


「#オメガバース」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -